第100話 人質束の剣
ウィズからすればまだ不可解な点は残っている。
「というか、あなたはなぜそれを知ってるんです?」
「クラフトの力だ。ピラミッドは神秘力を扱うのに最も適した形状の一類であるなら――トライピークスはその力を増幅させる」
「――、あぁさいですか」
事実関係の確認など、程々に切り上げるとして。
「《《お義母さん》》、すると今のあなたはメビウスの空間に戻れないと……あれ、それって暴れたい放題じゃないんです?」
「しれっと母公認を勝ち取ろうとする野心、嫌いじゃないなぁ。
残念だけどそも、ピラミッドはわたしの神秘力と行動自体を結界で封じているらしい。
私の助力自体、ここまでか。私がここに顕現するかはどこまでわかってたか知らないけど、先回りされたようね。向こうも星が詠める以上、あり得ない話じゃないけど」
「うわ、完全に私のせいじゃないですか……ごめんなさい、こんなつもりじゃなくて」
「行って――パビリオンのみなとともに、道を拓きなさい。
未来はあなたたち、若者の手の中にある。
魅那、あの子にもそれを知っていて欲しい」
「……はい!」
ウィズダムは複製体と戦っている、四人の下へ跳んだ。
*
自分の出生に関するとんでもない事実を知る由もなく、ナンバーと皇帝の戦いは続いている。
「どうした、もう息が上がっているぞ!」
「っぐ――」
(せっかくの強化形態お披露目だってのに、ここで変身を解除されたら、デジタライズトランプの拘束力が弱まる……せめてパビリオンが複製体を蹴散らすまでは、倒れるわけにいかない!)
いつの間にか、一対多の苦境をタスクの如くこなすようになったナンバーであったが、パビリオンだったら五人が適宜分担できるよう、チャトランが采配を振るうところを、戦略&戦術面を実質ひとりで担っているようなものだ、オーバーワークにもほどがある。彼が弱音を吐かないのは、単なる痩せ我慢、そして紛い物ゆえのパビリオンたちに対する、強烈な劣等感がそれをさせてくれないのだ。
にしたって……軍団を当たり前のように侍らせる、皇帝のカリスマ性を相手には、単身のヒーローではまだ足らない。
「私ほどの人望があれば、か?」
「! 大層なご自信で」
「いんや、この前も反逆されたばかりだしなぁ。
小童、ひとつ教えてやろう。
人に恐怖が必要なのは、そうしなくては増長するよう、凡愚どもはそのようにできているからだ。
貴様はもっと素直に、その暴力を扱っていい。
さすればすり寄ってくる数多の凡愚から、お前だけの駒を洗練することもできよう」
「トライ&エラーが大事って薫陶には頷きたいところですが、その下品にはのれない、な、『セルブレイド』!」
カード束で構成した刀身には、マテリアール獣たちが封じられたまま。皇帝は怯むことなく、人質の剣と大剣で剣戟を演じる。
「人質の束をなした、今のお前が品性を語れるのか?」
「パビリオンと違い、俺は本物じゃない。
だからというんじゃないが、あんたの修羅と渡り合うには、同じだけの狂気がいるのは弁えてるさ」
「やはり貴様は、私が見込んだ通りの男だな!
そうでなくては、私の宿敵は務まらんッ!」
「――」
クラフトの力で単に延命しているだけではない、この男には覇者としての器があった……ゆえに暴君足りえても、それを止められる臣下などいない――寧ろ同調者が寄り集まって、神格化までする。ポリゴォンなど、その最たる一人だろう。




