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第九十七話 マリリアとの再会

【登場人物】

ジュード 主人公 英雄王ジークの転生体 〈勇者〉

アゼルヴェード 神帝 異界から呼び出された怪物

マリリア ジュードの元婚約者、神帝の妃 〈聖者〉

イェリアナ 神帝の妃 〈剛者〉

シルリラ 神帝の妃 〈賢者〉

ガイ 武勇に優れたジュードの従者

ケララケ 腹部以下が大蛇の獣人兵

ゴルバ 巨人族の青年で巨躯の持ち主

ティーゼ 龍人族の優れた女戦士

ミケ 怯者の精霊

シャム 識者の精霊

トラ 愚者の精霊

「闇森人の部隊200名ほどが接近しています。」


「闇森人の矢による遠距離攻撃は一般兵では未だ対応できない。動きの良いガイとティーゼの部隊だけを連れて行く。」


ホドムから連絡を受けてジュードは少数で迎撃に向かった。ジュードが率いる部隊は、現状では闇森人を相手に出来るほどの装備も練度もない。大勢で向かっても無意味だった。ジュードか、或いは戦闘に長けたガイとティーゼで迎撃するしかない。ゴルバは力任せの戦闘では優位だが、遠距離攻撃が得意な闇森人との相性が良くなかった。


遠くに見える闇森人の部隊、その部隊を率いていたのは神帝の妃となったマリリアだった。ジュードは知らなかったが、イェリアナとシルリラは妊娠中の為に、ケララケはカーマインへの侵攻中だった為に、マリリアに反乱討伐が指示されていた。マリリアは殺した筈のジュードがいる事に一瞬驚いた様だが、直ぐに弓を構えた。闇森人の兵士もそれに倣う。直ぐに矢を放つかと思われたが、なかなか矢が放たれない。


「こちらから仕掛けるぞ。ミケ...速さ、防御、飛翔で行く。」


「任せろジュード。シャム、トラ、やるぞ。」


紋章を光らせたジュードの神装具にミケ達が飛び込み、ミケは龍人族の速さ、シャムは鉱人族の防御力、そしてトラは妖精族の飛翔力の加護を発動させた。ジュードは低空を高速飛行して闇森人の部隊へと迫る。その速度は常人が眼で捉えるのが困難なほどだった。数多くの矢は放たれるが、簡単にはジュードを捉えられない。マリリアはどうにか1本の矢をジュードに当てたが、ジュードの盾に簡単に弾かれた。


尚も接近するジュードはマリリアの直ぐ横を高速で通り過ぎ、闇森人の集団へ突っ込んで数人を纏めて斬り倒した。周囲の闇森人がジュードに狙いを定めようとするが、ジュードは直ぐに違う場所へ飛んでそこの闇森人を斬り倒し、また高速に移動して別の闇森人を斬り倒す。闇森人は動きの速すぎるジュードに矢を放つ事が出来ないまま、暫くして全て斬り倒されてしまった。


そしてジュードは最後にマリリアの体を左肩から右の腰にかけて斜めに斬った。マリリアが咄嗟に避けたのか、ジュードが不慣れな妖精族の神装具を使ったからか、或いは無意識に手加減してしまったのか、辛うじてマリリアは致命傷を負わずに済んだが、胸に受けた傷は深い。マリリアは慌てて聖者の力で自身の傷を癒やし始めたが、痛みの為に立っていられず、その場に膝をついた。


それと同時にマリリアの頭の中に幾つもの疑問が湧いてくる。なぜ自分はジュードと戦っているのか、なぜ自分はアゼルヴェードという化け物に全てを捧げたのか、なぜ家族や多くの人々を殺めたのか、なぜ...。本来の自分なら望まぬ筈なのに犯してしまった過去の誤ち、何もかもがもう元には戻せない事に気付き、マリリアは震えと涙を抑える事が出来なかった。マリリアのこの絶望感は、胸にあった精霊石がジュードによって斬られ、精神支配から解放された為だった。


ジュードがマリリアに止めを刺そうと剣を振り上げた時、ジュードとマリリアの間にガイが割って入った。ガイは片膝を付き、マリリアを守る様に両腕を広げてジュードに向いている。ガイの後ろにいるマリリアは震えながら、涙を流しながら、何かを求める様な眼でジュードを見ていた。


「お待ち下さいジュード様。マリリア様を殺してはいけません。」


「そこをどけ。その女がアゼルヴェードと共に多くの人々を不幸にした事をお前も分かっているだろう。生かしておく訳にはいかない。」


「それでも無理を承知でお願い致します。どうか、どうか命だけはお助け下さい。例え精神を支配されたとしても犯した罪は罪でしょう。ですが、それだけで罰してしまってはマリリア様が余りにも不憫です。どうかお考え直し下さい。」


普段は無口で自己主張しないガイだが、こうなると決して引かない事は分かっている。それも単なる感情ではなく、彼なりに必要と判断しての行動だろう。ジュードはマリリアの扱いをガイに任せると伝え、その場を後にした。

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