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第九十六話 ハルザンド東方の解放

【登場人物】

ジュード 主人公 英雄王ジークの転生体 〈勇者〉

アゼルヴェード 神帝 北の軍団を率いる侵略者

ガイ 武勇に優れたジュードの従者

フレミア 元はマリリアの侍女でジュードの付き人

ゴルドル 牛の頭と脚を持つ獣人兵、元は巨人族

ゴード 巨人族が崇める神

ゴルバ 巨人族の青年で巨躯の持ち主

テラスゴ 龍人族が崇める神

ティーゼ 龍人族の優れた女戦士

闇森人の領域の制圧はジュード達が異界の怪物達を討ち取ってからも続いていたが、その戦闘の最中にも、武装解除され捕らえられた闇森人は50人ほどの単位で順次各種族の地域へと連行されていった。連行された闇森人の扱いは連行先の種族に委ねられるが、これまでの闇森人による仕打ちを考えれば、相当に厳しいものとなるだろう。


ジュード達が制圧した神殿にはまだ複数の妊婦が残っていたが、殆どは気が触れて、まともに会話する事が出来なかった。この妊婦達は有力者の娘や優れた戦士も含まれていた為に彼女達の扱いについて意見が分かれた。結果、彼女達の扱いについては出身種族に委ねられたが、産まれた怪物は必ず処分する事で合意された。


「もうこちらはワシらに任せよ。ジュードは南でやる事がある筈だ。」


テラスゴやゴードの勧めに従ってジュードは南の大陸へと向かった。ガイやフレミアだけでなく、巨人族のゴルバと龍人族のティーゼも各種族から選ばれた先鋭部隊を引き連れて付いて来てくれた。


ーーーーーーーーーー


北の大陸を出港して20日ほどでハルザンド北方の港町に到着し、ゴルドルから大陸内で起こった事を聞く。ジュードが北へ向かってから半年以上、その間にアゼルヴェードはハルザンド、アルムヘイグ、ジョルジア、及びその周辺を併合して帝国領とし、マリリア達3人を妃としていた。現在も領土拡大すべく西側諸国や旧ゲイルズカーマインへ侵攻している。


「ジュード様、短期間でこれだけの領土を征服したのには驚きですが、どうもアゼルヴェードは急ぎすぎている様に感じます。何かの意図があるのでしょうか?」


「判断材料がない中でそれを考えても仕方ない。それより帝国に組み込まれてしまった人々を救う事が急務だ。帝国領を削って行くぞ。」


「先ずはどこを削りましょうか?」


「ハルザンド東方のオアシス都市から始めよう。」


北の大陸で起きた闇森人領域への侵攻やジュードの存在を示す情報はゴルドルが握りつぶし、アゼルヴェードへは伝えられていない。南の兵力が足りなければ北から呼べば良いと考えているだろう。故にアゼルヴェードには油断がある。ジュードはその油断があるうちに帝国領を削れるだけ削るつもりだった。


ハルザンドの砂漠地帯にも僅かだが地下水が流れている。その水が地表に出て池なり泉なりになった所には都市が形成され、少なくない人々が住んでいる。ジュードは手始めにハルザンド東方のオアシス都市を攻めたが、帝国は各地の反乱に対応している為に、都市には僅かな兵が守っているだけ、それも旧ハルザンド国軍の兵士が否応なしに兵役に就いているだけで、士気は低い。監視役として残っていた少数の闇森人さえ退ければ容易に都市を制圧出来た。解放された都市の人々は大歓声でジュード達を迎え入れた。


ジュードは休む事なく、次々と周辺のオアシス都市や街を開放していった。またその過程で降伏した旧ハルザンド国軍の兵を吸収し、部隊を再編して開放した都市や街の守備につけた。必要物資は北の大陸にいる各種族から定期的に送られ、それをゴルドルの部下がジュードの元に届けてくれるので不足はない。帝国打倒を目指す救世主ジュード、英雄王ジークの再来、その噂は密かに周辺へと伝わり、ジュードの元に憂国の士が集まり始めた。その中には辺境に配属されていた為に帝国の支配を逃れる事が出来た将校や文官、市井に埋もれていた政治学者や発明家も含まれていた。皆、ジュードと共に帝国に対抗していく意欲に溢れていた。


諜報部隊を率いるホドムもジュードの元に戻っていた。彼が戻った事によりジュードには各地の情報がより早く正確に入ってくる。その情報を分析して闇森人の所在や規模を把握し、効率的に周辺都市を開放していった。


ーーーーーーーーーー


「君がキリングか。」


ジュードの前の背の高い細身の男が座っている。その男は腕には大きな紙の束を抱えていた。同じ部屋にはガイとガイは選別した何名かの士官候補が同席している。


「グヒヒ...そうだよ。俺がキリングさ。まっ、売れない発明家だけどね。」


「貴様!、ジュード様の前でなんて言葉遣いだ!」


「待て、俺は言葉遣いなど気にしない。...それでキリング、今日は話があるそうだな。」


「あぁ、これさ。これがあんたの役に立つんじゃないかと思ってな。グヒッ、グヒヒヒ。」


キリングは抱えていた紙の束を机の上に広げた。ぱっと見は何かの図面の様で、随所に書き込みがある。


「ガイ、これが何か分かるか?」


「これは弩弓でしょう。こちらの図面が完成図、他は組み立て前の部品図面でしょう。似た様な物を前に見た事があります。ですが書き込まれている数字がサイズを表しているとすれば、私が知っている物よりかなり大きい様です。持ち運びに難儀するでしょうし、実戦で使い物になるかは分かりません。」


「グヒッ、使い所を間違えなければ役に立つ筈さ。俺の頭の中には幾つか改良する為のアイデアもある。あんたの所で作ってみないか? グヒヒヒ。」


「試してみるのは構わないが...」


すると1人の士官候補が名乗り出た。壮年の男で、髪には白いものが混じっている。


「私にやらせて下さい。実は以前から彼を知っていました。彼の態度と性格が災いして軍幹部には相手にされていませんでしたが、私自身は彼から学ぶべき事が多いと感じていました。私は軍で兵器生産に携わった事がありますので、兵器開発の進捗管理や物資確保でお役に立てる筈です。」


「そうか、では君に頼むとしよう。キリングもそれで良いか?」


「お任せ下さい。」


「俺も良いぜ。グヒヒッ。」

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