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第九十一話 北の大陸へ

【登場人物】

ジュード 主人公 英雄王ジークの転生体 〈勇者〉

アゼルヴェード 神帝 北の軍団を率いる侵略者

マリリア ジュードの元婚約者 〈聖者〉

ガイ 前軍務卿の外孫でジュードの従者

クリス スーベニアの神殿騎士で知略の持ち主

フレミア 元はマリリアの侍女でジュードの付き人

ミケ 怯者の精霊

シャム 識者の精霊

トラ 愚者の精霊

ゴルドル 牛の頭と脚を持つ異形の者

ハルザンドの北にある港町、そこからかなり離れた場所にある海にほど近い横穴の奥でジュードは簡易的なベッドに座り、ガイ、クリス、それにゴルドルという異形の者と向かい合っていた。フレミアはジュードを背後から抱きつく様にして支えている。フレミアの体温が背中から伝わってくる。


「ジュード オマエハ キタ ニ イケ。ココハ ソノウチ ニ ミツカッテ シマウダロウ。」


「ゴルドル、お前は話せたのか。ケララケは話せないと言っていたが。」


「ハナセル。ニガテナダケダ。ケララケ ノ ハナシ ヲ シンジテハ イケナイ。」


それからゴルドルは状況を話し始めた。数ヶ月前にアゼルヴェードがこの大陸に上陸し、配下の闇森人と共にハルザンドを攻めている事、マリリア達3人がアゼルヴェードに従っている事、ゴルドル自身は港町の守備を指示されている事、そしてゴルドルがジュードに胸を斬られた際に埋め込まれていた精霊石が砕けた事、それによってアゼルヴェードの精神支配から解き放たれた事を。


「直ぐにハルザンドの救援に向かわねば。」


「モウ オソイ イマゴロハ オワッテイル。ソレニ イマノ オマエデハ カテナイ。」


確かに、今のジュードは左眼の視力を失い、左肩の火傷も未だ癒えず、胸に受けた3箇所の矢傷も深い。海に落ちた際に多くの血を失ったせいか自由に動く事も難しい状態だった。ガイが海中から拾い上げ、その後のフレミア達の必死の治療で目を覚ましはしたが、回復には時間が掛かると思われた。


「キタニ イル ワガイチゾクノ カミサマ ニ アッテクレ。オレデハ ウマク セツメイ デキナイ。」


ジュード達が信じる神とは違い、ゴルドルの一族が崇める神はこの下界に存在し、一族と共に暮らしている。その神の魂を封印していたのが精霊石で、一族の神の血を濃く受け継いでいたゴルドルだからこそ、その石を体内に取り込む事が出来ていた。精霊石が砕け、封印されていた魂は元の体へと戻り、神が目覚めている筈だった。


「なんだか僕の怯者の力と似てるじゃないか。封印するだけで能力は引き継げないけど、代わりに神性は引き継げるんだろうね。」


「神を封印したんなら、そりゃあ異形の者も神性を得るだろうさ。マリリア達が急に強くなったのもその精霊石のせいか。」


「精神支配って点は僕達と違うね。トラの愚者の力なら無効化できるんじゃないか?」


「実体のない今は力を出せないよぉ〜。」


ジュード以外には見えない聞こえないミケ達だが、さっきからジュードの側でゴルドルの話を聞いていた。ミケが言う通り怯者の力に似ているのかも知れない。精神支配の力は未知のものだが、ゴルドルを信じるならば、精霊石を砕けば解放できるのだろう。


「イツカゴ ニ フネ ガ デル。ソレマデニ ジュンビ ヲ シテオイテ クレ。」


ゴルドルの指示通り、5日後にジュード達は船で北の大陸へ向かった。ジュード達は重症者とその看護者の帰国だと船員に説明され、船内の一室が充てがわれていた。ジュードに同行しているのはガイとフレミア、それに案内人としてゴルドルが付けてくれた彼と同族の青年だった。


海風を捉えて帆が大きく膨らみ、船を北へと進ませていた。

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