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第四十三話 語り継がれる物語

【登場人物】

ジーク 主人公 ジョルジアを治める英雄王 〈勇者〉

シンシア 主人公の第二王妃 〈聖者〉

カイン アルムヘイグ王国の大司教 〈賢者〉

ミケ 怯者の精霊

ある国のある都市の一角で老人が紙芝居で1つの物語を子供達に語っていた。最近流行り出した物語で、子供達の受けが良い。銅貨一枚で子供に物語を語り聞かせ、語り終わったら飴玉を1つ渡す。だが貧しい子供からはお金を受け取らず、隅の方に座らせて話を聞かせた。少し離れた場所では数名の大人達も老人の話を聞いている。場所を変えながら1日に何度もやるので、老人にとっては良い小遣い稼ぎとなっていた。


「......そうして英雄王ジークは悪魔を追って光の中に飛び込んで行きました。それ以降、この世界に再び平和が訪れ、人々は平和に暮らしたとさ。」


物語が終わるとそれを聞いていた子供達が歓声を上げた。


「ねぇねぇ。英雄王って本当にいたの?」


「いるぞ。ジョルジアって国の王様だったんだ。」


「そうなんだ。お爺さんは会った事があるの?」


「若い頃に儂はあちこちに旅をしたからな。遠くからお見かけした事がある。ジーク王のまわりはいつも人が大勢いたが、王はずいぶん立派な体格だから、遠目でも簡単に見つける事が出来たぞ。」


「王様はその後どうなったの? 戻ってきたのかな?」


「それは儂も知らん。どうされてるんじゃろうな。もしかすると、皆んなの近くで見守ってくれているのかも知れんぞ。悪い事をする子がいると怒られるかもな。」


「私は悪い事をしてないから大丈夫だよ。」

「ぼっ、僕は大丈夫かな。イタズラして母ちゃんに怒られてばかりだけど。」


「わっはっはっ。イタズラ程度でジーク王は怒らんだろうよ。でも人が嫌がる事はやめるのじゃぞ。」


「はーい。」


老人は暫く子供達との会話を楽しんだ後、飴玉を配ってから帰り支度を始めた。飴玉を貰った子供達はその場を走り去っていく。気付くと子供が1人残っていた。お金を払っていない子供だった。老人はその子にも飴玉を渡して帰っていった。


ーーーーーーーーーー


ジークが魔神を追って神界へ行ってから数年の月日が流れた。ジークは戻って来なかった。彼が無事に神界へ行けたのか、行けたとしてそこで何が起きたのか、それらを知る事は誰にも出来ない。ただ、ライドル旧王都での一件が終わって以降、新たな魔獣の群れが発生する事は無かった。各国は魔獣被害が無くなった事を受けて厄災の終息を宣言した。


シンシアの遺体はジョルジアへ移され、大勢の人達に見守られながら埋葬された。葬儀はマルグリットが中心となって執り行われ、各国の重鎮がその葬儀に参列した。埋葬された後もシンシアが眠る墓には彼女に治療された人達が訪れ、献花が絶える事はなかった。


カイン達は魔獣の群れの発生からライドル旧王都での魔神討伐の経緯について公表した。また精霊に関する情報とミケの存在については教会上部と紋章を持つ者だけに限定して伝えた。バラモス派については依然として残党の捜索が行われているが、もう本格的な活動はできないと思われ、近いうちに捜索が打ち切られる予定だった。


カイン達が公表した内容は大きな反響を呼んだが、中でも勇者ジークと聖者シンシアに民衆の注目が集まった。彼等の活躍は本となり、歌劇となり、あるいは噂話となって大陸全土へと広まり、民衆の心に深く刻まれた。


ジークとシンシアにはもう会えない。しかし彼らは物語となって人々の心の中で生き続ける。



第三部 完

これでジーク編は完結です。ご愛読ありがとうございました。

第四部からは新たな主人公が登場します。

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