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第四十一話 魔神との戦い

【登場人物】

ジーク 主人公 ジョルジアを治める英雄王 〈勇者〉

シンシア 主人公の第二王妃 〈聖者〉

カイン アルムヘイグ王国の大司教 〈賢者〉

イェルガ ハルザンド王国の第一王子 〈剛者〉

人型の影は先日と同様に腕の先が幾つも枝分かれして触手の様になっている。しかし触手を鞭のように振るうその攻撃は先日の影よりも速く重い。加えて今回の影は、翼にある羽の一枚一枚が鋭い刃の様にジーク達を襲い、また同時に魔術をも扱った。


シンシアは聖者の力で祈る。魔神はその聖なる祈りが気に入らない様で、シンシアには近付かず、距離をおいて羽の刃や魔術による攻撃をしきりに仕掛けるが、カインが土壁や炎でその攻撃を防いだ。カインは同時に魔神へ向かって魔術で攻撃するが、しかし神格を持つ魔人を傷つける事が出来ず、牽制や目眩し程度の効果しかなかった。それでもカインは魔術による攻撃を続けた。


「やはり私の攻撃は届きませんが、敵の攻撃は防ぐ事は出来ていますね。まだまだこれから。力を出し切るつもりでお相手しますよ。」


イェルガはいつもの大剣を大盾に持ち替え、ジークに迫る触手などの攻撃を防ぎ続けた。先日の影よりも強力な攻撃を受けてイェルガは何度も弾き飛ばされるが、その度に起き上がり、また攻撃を防ぎ続けた。既に着ていた鎧は一部が破損し、持っていた大楯も折れ曲がっている。それでもイェルガは魔人に向かい続けた。


「魔人よ。俺がハルザンドのイェルガだ。この程度で俺を倒す事など出来ん。お前の触手による攻撃など、この俺が防ぎ切って見せる。」


シンシアは聖なる祈りで戦う3人を守るだけではなく、遠隔でカインやイェルガの傷も癒していた。その回復力は以前の何倍にも高まっている。先程イェルガが負った打撲など瞬時に治している。


ジークは魔神の隙をついて攻撃し続けた。カインやイェルガが防ぎ切れなかった魔神の攻撃を光の盾で防ぎつつ剣撃を放ち、徐々にではあるが魔神のダメージを増やしていった。しかし魔神の体は固く、遂にはジークの持っていた剣が折れてしまう。


「この程度で諦めるものか! 剣などなくてもお前を倒して見せる。」


剣を失ったジークは、今度は素手で魔神を殴り始めた。するとジークの両手に光が集まり始める。それに伴って魔神へ与える一撃が強くなっていき、次第にその光は剣の形となって魔神の体を削る。ジークの勇者の力が更に成長した瞬間だった。光の鎧を着け、光の盾に守られ、光の剣を両手に持つその様はまるで神話で語られる闘神の姿だった。ジークは攻撃を続け、魔人の負う傷はより深くなっていった。


魔神はジークが最も危険だと認識したのか、攻撃の全てをジークに集中し始めた。その攻撃をイェルガとカインは必死に防ぐ。既に2人の防具は消し飛び、上半身が剥き出しになっていた。2人に守られたジークも、魔神の攻撃を受けつつも光の剣で魔神に斬る。魔神と3人の応酬が激しさを増していき、それに伴って魔神の負った傷は増えていった。だが魔神の攻撃は依然として熾烈だった。


その時、後方にいた筈のシンシアが魔神に向かって走り出した。


「危ない。」


「下がるんだシンシア! 前に出ては危険だ。」


「なぜ出て来たんですか。下がって下さい。」


ジーク達はシンシアに向けて咄嗟に叫んだが、シンシアは止まらなかった。その姿を認識した魔神が触手を繰り出すが、シンシアはそれを左右に動いて回避しながら進んだ。しかし何度目かの攻撃で、魔神は近くまで来ていたシンシアへ向けて触手を鋭く突き出し、その触手をシンシアの腹部に突き刺さしてしまった。突き刺さった触手はシンシアの身体を完全に貫通している。


「シンシア〜〜!!」


ジークが叫ぶ。シンシアは吐血し、その場に崩れ落ちそうになるのを堪えて、魔神の触手を掴んでどうにか立っている状態だった。ジークはシンシアへ駆け寄ろうとするが、魔神の激しい攻撃に妨げられてしまった。


「やはり...私では避けきれませんね...でも、この時を...ぅぅ...待っていました。」


シンシアはそう言うと最後の力を振り絞り聖者の力を解放した。触手を掴んだシンシアの手が一際強く光り始める。シンシアが発したその光は急速に周囲へと広がり、ジーク達や魔神までも飲み込んでいく。


「ギギィィィギギィィィィ...ガガァァァ...ゴゴゴゴォォォォォ...」


シンシアによる聖なる光に包まれて、叫び声と言うよりは何かが軋む様な音を魔神が発し、その音が周囲に響く。それと同時に魔神は硬直し、ジーク達への魔神の攻撃が止んだ。


「今です...ジーク...お願い。」


「やれっ、ジーク。」


「ここで決めて下さい。」


シンシア達がジークに向けてその言葉を言い終わる前にジークは反射的に動いていた。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ〜...」


ジークは触手を伝って魔神に向けて駆け上がり、そこから飛び上がって魔神の頭上へと至り、落下と同時に光の剣を振り下ろした。振り下ろされたその光の剣は魔神の影を真っ二つに切り裂いていた。

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