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第三十九話 魔人の拠点へ

【登場人物】

ジーク 主人公 ジョルジアを治める英雄王 〈勇者〉

シンシア 主人公の第二王妃 〈聖者〉

カイン アルムヘイグ王国の大司教 〈賢者〉

ホドム 情報部隊の隊長

イェルガ ハルザンド王国の第一王子 〈剛者〉

ミケ 怯者の精霊

ジーク達はミケが記憶していた魔人の拠点へと向かっていた。そこはライドルがかつて王国だった頃の王都にある教会、その地下深くだった。ライドル共和国の中央政府は、先日の魔人や魔獣の襲撃、大きく黒い影の存在、それを討ち払ったジーク達の活躍を見聞きし、態度を一変させていた。今更ながら事の重大さに気が付いた様子だった。ジーク達に先行して進路上にある都市へ文官と軍を派遣し、事前に手続きを済ませ、宿泊場所や食事を準備した。そのお陰でジーク達は早いペースで目的地に向かう事が出来た。


「ジーク様、旧王都の調査が完了いたしました。対象者はこちらに記載しています。」


ホドムの情報部隊はジークに先行してライドルの旧王都に潜入していた。バラモス派が関与は明らかだが、全員が教会にいるとは限らず、旧王都の住民としてバラモス派が潜んでいる可能性がある。魔人の姿であれば容易に判別できるが、一般市民の姿のままだと判別は難しい。ジーク達が目指す教会に出入りする者、その者の行動範囲と接触者、そうした情報をホドムに把握させていた。


「これをライドル国軍の指揮官に渡し、旧王都への到着と同時に拘束するよう伝えてくれ。敵拠点の制圧を邪魔されたくない。それと捕縛した者達へはバラモス派に関する尋問もする様に。」


ホドムは了解した旨をジークに返すと姿を消した。


ライドルの旧王都に到着すると都市長や有力者がジークのいる城壁外の陣を訪れた。彼等はバラモス派の協力者である可能性があり、この時点ではジークの目的が旧王都の教会だとは伝えていない。彼等にはライドル各都市で行っている魔人追跡の一環で立ち寄ったと伝え、これまでの魔獣被害の聞き取りなどしつつ、彼らを長時間その場に留まらせた。それと同時にライドル国軍は市民からの聞き取り目的と偽って旧王都内部に入り、ホドムから得た情報に名前の挙がった市民を拘束していった。


市民の拘束を知った文官が慌ててジークや都市長達がいる陣に駆け込んで事態を知らせた。


「ジーク王、市民を拘束しているのは何故ですか? ご返答自体では我々も黙ってはいられませんぞ。」


都市長がジークに詰め寄っていると、ジークの後ろからホドムが現れた。


「ジーク様、対象者の拘束が完了いたしました。」


「分かった。」


ホドムに短く返事してからジークは都市長達に向き合って事情を説明し始めた。


「皆さんはバラモス派をご存知ですか?」


「えぇ、確か統一教教会に破門された異端の者達です。」


「そうです。そしてそのバラモス派が今回の魔獣発生の背後にいる事が分かっています。先程拘束されたと報告のあった市民はバラモス派の信者、或いはその協力者でした。これからバラモス派の拠点を制圧するつもりですが、その作戦の障害となる可能性がありましたので、事前に排除させて頂きました。」


「なんと!!」


ジークは話を大袈裟にしない為に魔神の件には触れずにいた。それでもバラモス派という単語を聞いて都市長達の顔が引き攣る。自分が管轄する都市に異端の者達が居たとなると、管理運営の手腕を疑われる恐れがある。最悪の場合、バラモス派を匿っていたとして教会から破門される可能性もあった。


「どっ、どうすれば...私はバラモス派とは何の関係もありませんぞ。」


「落ち着いて下さい。都市長を疑っている訳ではありません。我々にお任せいただければ良いだけです。ただ、バラモス派の拠点を制圧するまでは皆様の安全を確保する為にここで保護させて下さい。」


都市長達は守備兵や私兵を動員できる権限がある。敵であったとすれば被害は避けられず、またバラモス派に逃げる機会を与えてしまうかも知れない。そうなる事態は避けたかった。彼等がバラモス派に関与している可能性は低いだろうが、関与を完全に否定する材料はない以上、保護という名目で実質的に軟禁するべきとジークは判断していた。城壁外に陣を置いて彼等をここに呼んだのもその為だった。


「そうしていただけるなら助かります。私達にできる事があれば協力いたしますぞ。教会の方々にも私達が協力的であったと是非お伝え下さい。」


「お任せ下さい。」


彼等の何人かは家族や知り合いの安否を心配したが、ジークは彼等本人が旧王都内へ出向く事は認めず、ライドル国軍が代わりに家族や知り合いを保護する事で納得してもらった。


「では、そろそろ行こうか。」


旧王都内に侵入したジークは、ライドル国軍を城壁の全ての門、教会に通じる全ての道に配置し、封鎖した。バラモス派信者の脱出を阻む事が目的だった。その配置が終わったとの報告を受けて、ジークはイェルガ・カイン・シンシアと先鋭部隊を伴って教会へ向かった。ミケがその後をフラフラ飛びながら付いて来ていた。旧王都内は、軍隊が入ってきた所為なのか、他の都市の様な賑わいはなく、閑散として、人影も見掛けなかった。


教会内に突入したジークは地上部分に誰もいない事を確認した。一般的な教会の道具や書物はある。ぱっと見は普通の教会。しかし司祭やシスターは一人も居なかった。


「ココだよココ、この中に地下への階段があるんだ。」


ミケが教会の尖塔へと続く登り階段の手前の空間を指差した。ミケが指し示す場所へと先鋭部隊が素早く先行し、その場所や周囲を確認すると、確かに床板に隠された下り階段があった。ジークは下を覗き込んだが、階段はかなり狭くまた長そうで、先を見通す事が出来ない。一団は光の盾を前面に構えたジークを先頭に階段を降りて行った。

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