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第二十二話 ジョルジア攻防戦、再び

ジーク 主人公 ベントリー領の領主

シンシア 主人公の妻で一男一女の母

カイン ショーウェルズ大司教の息子

ナディア 聖騎士隊の隊長

ヨルム 山岳民族の戦士

ホドム 情報部隊の隊長

マルグリット ジョルジア公爵家の長女で姫騎士

ミリア スーベニア大聖堂のシスター

フーゲル 深き森の住人

キキ フーゲルの従者だった少女

イェルガ ハルザンド王国の第一王子

イェガー 本名はイェルシア ハルザンド王国の王女

ヴァルベルト ゲイルズカーマイン帝国の新皇帝

帝国内でカーマインの反乱が起こっていた頃、旧ジョルジアとアルムヘイグの国境線でアルムヘイグ国軍と帝国軍の対峙は続いていたが、その国境線から遠く離れたアルムヘイグ王都では新たな部隊が編成されつつあった。アルムヘイグ西方の国々から集められた兵達を中心とした混成部隊で、数は多いが纏まりは無い。指揮官はジーク。先のジョルジア攻防戦での活躍、勇者であるというカリスマ性から、ジークが適任であると判断された。ジークの傍らにはジョルジア公爵令嬢であるマルグリットの姿もある。彼女はジョルジアの敗残兵を集めて一隊としていた。


この部隊の目的はジョルジアの奪還。カーマインの情報はアルムヘイグにも伝わっている。また国境で対峙する帝国軍の層が薄くなっている事は前線からの情報で明らかだった。これを好機と見たアルムヘイグは、各国の協力を得て部隊を編成した。但し、カインとキキはこの部隊に従軍しない。カインは教会の聖騎士団を率いてスーベニア神聖国の救援へ、キキはヨルム達山岳兵と共に山脈経由でジョルジアへ侵入して帝国軍の後方撹乱を図る。


「さぁ、ジョルジアを取り戻すぞ。」


混成部隊を率いて国境線に着いたジークは、移動で乱れた体制を整え直した後、躊躇なく帝国軍へと向かった。先頭にはジーク。接敵するや否やジークは前面に出ていた数人の帝国兵をひとなぎで払い除けた。寄せ集めの混成部隊に複雑な用兵は向かない。ジークは各国の隊に眼前の敵を打てとだけ伝えていた。アルムヘイグの攻勢を前に帝国軍は堅陣を敷いたが、ジークの勢いを止めることは出来なかった。ジーク達に続いてアルムヘイグ国軍も前進を開始した。帝国軍の後方では、ホドムから得た情報をもとにキキが作戦を練り、帝国軍の小隊、特に物資を運搬する輜重隊を各個撃破している筈だった。


国境線の帝国軍を打ち払った後も、帝国がジョルジア内に作った拠点や残党への対応を後続のアルムヘイグ国軍に任せ、ジークの混成部隊は進み続けた。ジークは勇者の紋章を光らせ続けていたが、その光は徐々に彼の体を覆い、光の鎧や盾となって敵の攻撃を弾いた。光の盾は左右の両肩の付近に浮かんで敵の攻撃を阻み、光の鎧は盾で阻み切れなかった攻撃からジークを守る。ジークのその姿を見て混成部隊は勢いを増し、帝国兵は恐れ慄いた。僅か数日の戦闘で混成部隊は帝国軍に手痛いダメージを与え、特にマルグリット隊は過去の屈辱を晴らさんと縦横無尽に暴れまくって目覚ましい成果を挙げた。


ーーーーーーーーーー


「ここまでだ...この荒野に貴様らの屍を晒してやる。」


ジョルジア王都から少し東の荒野、かつてのジョルジア攻防戦の戦場に混成部隊が迫った時に声が聞こえた。そこには再編された帝国軍と、その中心に黒い鎧兜を纏った一団が待ち構えていた。黒騎兵の中には一際立派な鎧を着たあの男...ヴァルベルトがいた。ジークの混成部隊は帝国軍と距離を置いて対峙する。その混成部隊に向けて、ヴァルベルトは大剣を振り上げ、そして振り下げた。振り下げられた大剣が巻き起こした衝撃波は、地表を割りながら進み、混成部隊の一部に突き刺さり、そこにいた数名の兵を吹き飛ばした。


「ヴァルベルト、ここで貴様を討つ。」


前面に出たジークは雄叫びをあげながらヴァルベルトへと迫る。それに応えるかの様にヴァルベルトも前に出る。初手はヴァルベルトからだった。衝撃波を伴うヴァルベルトの数度の攻撃がジークを襲うが、ジークはそれを躱しあるいは光の盾で防いだ。防いでからジークは距離を詰めて斬りかかったが、ヴァルベルトは剣でそれをいなした。ジークは続けて何度か斬り掛かる。しかしジークの刃を届かせる事が難しく、軽い傷を負わせた程度ではヴァルベルトが聖者の力で直ぐに治してしまった。ヴァルベルトも反撃するが、思考が加速されたジークは素早く躱し、或いは光の盾で防いだ。どちらも決定打を与えられないまま、二人は戦い続けた。


余りにも激しい攻防のため、二人の周囲には誰も近寄れず、混成部隊も帝国軍も遠巻きに二人を囲み、ただ勝負の行方を見守ることしか出来なかった。


「私の覇者の力が最強の筈だ、貴様に勝ち目はない。」


「覇者の紋章など存在しない。お前のそれは怯者の力で奪った紛い物だ。」


二人の口撃も激しさを増したが、勝負の行方は依然として知れなかった。尚も二人は戦い続ける。二人の戦いを見守る混成部隊と帝国軍。周囲には二人の戦う音だけが響いた。その時、二人を囲む包囲を突破して一直線に近寄る人影があった。騎乗したキキだった。ジークとヴァルベルトの戦いの余波に煽られながらもキキは二人に迫る。ヴァルベルトが大剣で近くまで来たキキを薙ぎ払おうとしたが、ジークはそれを剣で受け止めた。二人が鍔迫り合いをしながら立ち止まったその瞬間、キキは愚者の紋章を光らせながら二人に接触した。キキが発した光はジークとヴァルベルトを包み、そして暫くすると光は徐々に消えていった。


キキが発した光がジークとヴァルベルトを包むと、それまで使えていた二人の紋章の力が消えてしまった。それでも二人は暫くの間は戦い続けていたが、急激な疲れが二人を襲い、お互いに剣を納めて距離をとった。紋章の力を使い過ぎた事による疲労だった。二人とも立っているのがやっとの状態だった。


「これが愚者の力さ、二人とも暫くは紋章の力を使えないよ。」


そう言ったキキを睨み付けてから、ヴァルベルトは後退りし、黒騎兵の集団の中に消えていった。ジークはヴァルベルトが視界から消えるとその場に座り込み、そのジークへ混成部隊の兵達が駆け寄った。マルグリットやヨルムの姿もあった。混成部隊の後方からはアルムヘイグ国軍による救援が向かって来ている。ここで改めて両軍は対峙したが、帝国軍は戦う事なく撤退していった。ジョルジアでの戦いはこれが最後だった。

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