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第十七話 黒騎兵の襲撃

ジーク 主人公 ベントリー領の領主

シンシア 主人公の妻で一男一女の母

カイン ショーウェルズ大司教の息子

ナディア 聖騎士隊の隊長

ヨルム 山岳民族の戦士

ホドム 情報部隊の隊長

マルグリット ジョルジア公爵家の長女で姫騎士

焦土作戦の効果もあってか帝国軍の侵攻はジョルジア王都陥落で一旦停止されたが、旧ジョルジアとアルムヘイグの間にある緩衝地帯を挟んでの対峙は続いていた。同時にジョルジアからの避難民の受け入れ作業が進められ、ベントリーやアルムンドにも多くの避難民が割り当てられた。ジークは避難民のための食料確保や宿泊場所の建設に奔走していた。マルグリットはベントリーからアルムヘイグ王都へと移り、彼女の要請に応えてアルムヘイグの使節団が帝国に対して旧ジョルジア領土の返還交渉を試みたが、全く進展しなかった。


「東方からの敵影あり...」


旧ジョルジア側からの帝国の侵攻に備える為、ジークは領民達と防衛施設の建設に着手していた。その建設現場で休んでいたジークにホドムが駆け寄り、敵の接近を告げた。


「相手は騎乗してる。山岳地帯を抜けると一気にこっちへ駆けてくるぞ。」


「山岳地帯で止められないか?」


「無理だ。相手が強過ぎて山岳兵では止められそうにねえ。」


東方はヨルムが厳重に警戒していたが、それを突破して領内に侵入した敵がいるという。急ぎ守備兵を伴って街の外で防御を固めたジーク達の前に現れたのは、黒い鎧兜に身を包んだ騎馬兵だった。侵入して来た方角から帝国軍だと思われるが、ジョルジア攻防戦では黒い騎馬兵を見ていない。所属国を示す印象も見当たらなかった。しかしジークは見覚えがある。かつてシンシアの乗る馬車を襲った騎馬兵だった。


戦闘が始まるとジークは1騎2騎と切り倒していった。いつの間にかナディアと聖騎士隊も戦闘に参加していた。しかし敵の数が多く、ジーク達は次第に包囲されていった。その包囲の横を数騎の敵兵が駆け抜け、街の中に入っていく。まずい。街の中にはシンシアと子供達がいる。しかしジークは周囲の騎馬兵に阻まれて動けずにいた。その時、教会から駆けつけたカインが数発の火球を放ち騎馬兵を怯ませ、直後にナディアが騎馬兵へ突進して道を開いてくれた。ジークはすぐさま包囲を抜け出し、先行する敵兵を追った。


街の中の道端には怯えた表情の領民達が座り込んでいた。その領民を横目に駆け抜け、街の中央の広場へと出た。その時、ジークの眼に凄惨な現場が映った。広場のあちらこちらに倒れた守備兵や救護班、散乱した武器や医療具、夥しい血痕、その中心には一際立派な鎧を着込んだ男とシンシアが立っている。しかも男の腕はシンシアの体を背中側から貫いていた。男の腕には黒いモヤがあり、それが次第に男の体へと吸収されていった。


「これで聖者の力も私のものだ。」


そう言うと、男はシンシアの体を無造作に放り投げた。シンシアは動かない。そのシンシアに駆け寄って彼女を抱き上げたジークに背を向け、ここにはもう用はないとばかりに、男と騎馬兵は走り去っていった。


ーーーーーーーーーー


その日の夕方、シンシアは邸宅の寝室のベッドに寝かされていた。不思議なことに貫かれた筈の体に傷はなかった。しかし彼女は目を覚まさない。医師にも原因は分からなかった。ジークはベッドの脇に膝をつき、シンシアの手を握っていた。彼女をこんな状況にしてしまった自分をジークは許せなかった。


「奴らの目的がシンシアさんの紋章の力だった事は明らかだ。」


メイドに促されて執務室に移っていたジークに対してカインは言った。以前にもシンシアが襲われていた事から、彼女が聖者の紋章を持っている事が早い段階で奴らに伝わっていたのだろう。しかし、どうやってシンシアが聖者である事を知ったのか、どうやって力を奪ったのか、そしてなぜシンシアは目覚めないのか、分からない事があまりにも多かった。


「シンシアさんが目を覚さない現状は薬などによるものではないだろう。超常の力、相手も紋章を持つと考えた方が良い。それがどの様な紋章なのか、どこから来たのかを調べなくては...」


「帝国の侵攻と関係あると思うか?」


「どうだろうな。時期としては合っているが...今回の様な少数による襲撃だと傭兵団などの国と関係ない武装勢力という可能性も否定できない。今の時点で帝国と決めつけるべきではないだろう。何れにせよ、闇雲に追いかけても今からでは敵を捕捉できない。」


「紋章や敵について調べる手段はあるか?」


「ある。」


翌々日の朝、ジークは旅装を整えていた。シンシアを目覚めさせ、力を取り戻す方法を見つけてみせる。その思いを胸にジークはベントリー領を旅立った。同行者はカインとナディア。同時に情報収集のためホドムを先行させた。

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