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騎士爵家三男坊の立志伝 〜The wind blowing through the kingdom〜  作者: 裏庭ジジイ
第十一部 王国を吹き抜ける風3
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第百五十二話 ハルザンド軍港への襲撃

ジゼル達はかなり沖合に留めた軍艦から小型船に乗り換え、夜陰に紛れて軍港へと向かう。小型船は魚人族の助けもあって静かに、だがかなりの速度で進む。軍港のかなり右手では幾つかの炎が宿舎らしき建物から上がり、消化しようと海軍兵が慌ただしく動いているのが小型船からよく見えた。炎は先行した魚人族が起こしたものだった。接近する小型船に誰も気付いていない様だ。


「よし、半数はこのまま中央へ、もう半分は左手に向かって。上陸したら直ぐに戦闘よ。」


クリスが同乗している神殿騎士に指示を出した。北の大陸から撤退した連邦軍兵士が軍港に居ないのはホドムから知らされている。軍港に残るのはおそらく200ほど。100に満たない神殿騎士で制圧するのは難しいが、後続の小型船でカーマインから脱出した聖騎士隊300が増援としてくる事になっている。そうなれば形勢は逆転する。それまでに軍港の出入口を封鎖したい。同時に魚人族が海中から連邦海軍の軍艦の動きを封じる。


「僕が先行します。」


クリス達が乗っている小型船が軍港に近づくとジゼルは桟橋へと飛び移り、連邦軍の兵達が集まっているところへと駆け出した。既に身体中が光り輝いている。その光に気付いて武器を構える者もいたが、多くはその光が何なのか知っている様で、顔を引き攣らせていた。ジゼルはそんな様子を気にする事なく手前の兵から斬り倒していくと、後方の何人かの連邦軍の兵は武器を捨てて降伏した。ジゼルを追いかけて上陸した神殿騎士が素早く降伏した兵を縛る。


「ジゼル君、出入口を抑えるのが先よ。ここは私達に任せて。」


「分かりました。」


ジゼルはひとり軍港の奥へと駆けて行った。


「儂等の出番はなさそうだな。」


接岸した小型船から最後に出てきたのは龍人族の神であるテラスゴと巨人族の神であるゴードだった。古の神々で同行したのはこの2柱だけ。その他の神々は北に残っている。


「あら、私を守って下さらないのですか?」


クリスが冗談めかして言う。


「おぉ、ではその大役をきっちり果たして見せようぞ。」


ゴードが大笑いしながら返した。連邦軍の兵が放った矢が飛んできたが、ゴードが手で簡単に払った。一般の攻撃では神性を帯びている神々に傷を負わせる事はない。


上陸した神殿騎士は守りを固めてどうにか凌いでいたが、後続の聖騎士隊が到着すると形勢は逆転し、次第に連邦軍を押して行った。ジゼルは既に軍港の出入口にまで到着し、そこを制圧しているのがクリスのいる桟橋からも見えた。ジゼルも神性を帯びているので傷を負わない。連邦軍が出入口を突破して外に逃げる事は出来ないだろう。


「手に空いた者は消化作業を始めて。何人かは私と共に海軍司令室に行くわよ。」


まだ彼方此方で戦闘は続いていたが、既に勝敗は決まったと判断してクリスは軍港内部へと進んでいった。


ーーーーーーーーーー


2度の連邦軍による大規模な襲撃を受けて北の大陸では多くの犠牲者を出し、それによって幾つかの種族は存亡の危機にある。これ以上の犠牲者を出さない為には南の大陸を支配する連邦をどうにかするしかない。先ずは軍港を持つハルザンドを抑える。それが族長会議での決定だった。主力は神殿騎士と聖騎士隊。それをクリスが率い、ジゼルとテラスゴとゴードが補助する。マリウスと何人かの聖職者も同行しているが、彼等は戦闘には参加しない。ガイやルルも同行を願ったが、北大陸の守りも必要であると説得され、諦めるしかなかった。


ちなみにガイも再びジゼルに出会う事はなかった。彼は森人族の里長を60過ぎまで努め、また種族間の交流を促進させたが、急に引退してフローラに後事を託した。それから数年後、ガイはフレミア達に見守られながら静かに息を引き取った。


ーーーーーーーーーー


軍港を制圧するのに大した時間は掛からなかった。海軍の司令室だった部屋に入ったクリスは連邦の機密書類の確認を始めている。戦闘音を聞いて急ぎ焼却処分しようとしたのだろう。部屋の中は資料が散乱していた。おそらく大した情報は残ってないが、ハルザンド攻略への手掛かりがあるかも知れない。後で捕縛した指揮官の尋問もやる必要がある。


「団長。倉庫に面白いものがありましたよ。」


神殿騎士の1人に促されて倉庫へ行くと、中には軍事物資が堆く積まれていた。


「これがそうなのね。良いわね。有効に使わせて貰うわ。」


クリスは軍港に停泊していた軍艦の整備と、並行して倉庫で鹵獲した軍事物資の運び出しを命じた。

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