表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/160

第百四十一話 神としての在り方

北の大陸へと戻ったガイはクリスと共に防衛体制の構築に専念していた。ホドラムによれば、今のところ南で軍事的な動きはない。だが、いつまた南が攻めてくるかは分からない。堅牢な防衛体制の構築は急務だった。ジゼルはその間に龍人族(ドラゴニュート)の神であるテラスゴを訪ねていた。紋章持ちであるマリウスとフローラが同行している。テラスゴの屋敷には近隣に住むの古の神々も集まっていた。


「お前がジゼルか。確かにジュードを幼くした容姿だな。それにこっちはマリウスとフローラと言ったか。」


「初めまして。私がマリウスです。本日は南の大陸で信仰されている統一教の立場で参加しています。早速ですが神装具について意見交換させて下さい。」


マリウスはジゼルから聞き出した内容を古の神々に説明した後、弓の神装具を皆の前に置き、幾つか疑問を投げかけた。なぜ精霊が入り込む事によって強力な武器となるのか、なぜ神装具は精霊を持つ者にしか扱えないのか、そしてなぜジゼルは精霊がいなくても扱えたのか。


「かつてジュードから聞いた話では、精霊とは神々が力を与える時の目印だそうだ。神装具はその精霊が実体を保つ為の依代であって、神装具自体が強力な力を持つ訳ではないだろう。強力な武器となるのは、つまりは精霊を通じてお主達が信じる神の力を引き出しているという事だ。他の者の意見はどうだ。」


「儂も概ね同じ意見だ。それ自体が力を持っている儂等の新装具とは異なる物だな。ジュードは儂等の新装具を使っていたが、その際にも精霊によってお主達の神の力を借りていたのだろう。但し、使用は相当に負担となる様で、ジュードはひどく疲弊していた。」


「俺も同じ意見だな。加えて言えば、紋章持ちだけが神装具を使えるのは、そもそも精霊と意思疎通できるのが紋章持ちだけだからだろう。」


「ジゼル君が精霊の助けを受けずに神装具を使える理由は何だと思われますか?」


「精霊を通じて神の力を得ていないのだから、ジゼル本人が神装具に力を与えている筈だ。ジゼルは既に神格を得たか、或いはそうなりつつあるのかも知れん。ジゼルは記憶を持って生まれ変わった。それは死後に魂を浄化されていないと言う事だ。おそらくはアゼルヴェードを倒した後にそのまま神界へ移り、その時に神格を得たか、お主達の神が意図的に神格を与えたのだろう。」


マリウスは慌てて聞き直す。


「お待ち下さい。人が神になる事などあるのでしょうか?」


「目の前の儂等がまさにそうだ。儂等の場合は多くの信仰を集めて神格を得た。お主達の神もおそらく以前は人で、何かのキッカケで神格を得たのだろう。それで神格を得た儂等はこの下界に留まって眷属を直接的に守ると決めた。但し、下界に留まった結果として儂等は神性を持つ者によって殺される可能性がある。それが儂等の選択だった。」


「下界にいるジゼル君は皆様と同じ存在になったと言う事でしょうか?」


「さて、それはどうかな。儂等は下界に留まった。だが逆にお主達の神は神界へと移り住み、精霊持ちを通じて間接的に信者を守る事にした。奴等は精霊持ちが死んでも新たな精霊持ちを誕生させれば良く、自身は神界にあって死ぬ事はない。その代わり、精霊持ちが必ずしも神の意志に従うとは限らない。それがお主達の神の選択だった。神の在り方には様々ある。ジゼルにも、自身がどう在りたいかを選択する時がいつか訪れる。」


「僕はただこの世界で生きる人々の安寧を守りたいだけです。ですが、その為に自分に何ができるのか、どういう選択肢があるのか、今は分かりません。」


「ジゼルは正直だな。まだ時間はある。ゆっくり考えよ。」


神の存在について既にマリウスが理解できる範疇を超えている。彼は自身の疑問を引っ込め、神装具の件に話を戻し、どうすればジゼルに適した神装具になるかと質問した。今ある弓の神装具はジゼルに大きな負担を掛ける。それを軽減する事が目的だった。その質問を受けて古の神々が弓の神装具を手に取って調べていたが、暫くすると神装具を床に置いてテラスゴが話し始めた。


「マリウスよ。儂等は自分の力を発揮するのに神装具を必要としない。ジゼルもそうなるだろう。わざわざ負担の大きい神装具を使う必要はない。それでも使うと言うなら、弓に長けた森人族の知恵を借りて作り直した方が良い。そうすれば使用者の負担が減る筈だ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ