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第百三十四話 怪鳥の棲む島

魚人族(マーフォーク)の里は内陸部に入って直ぐの森の中にあった。そこには水の綺麗な泉があり、その泉を囲む様に家々が立ち並んでいる。その一角、一際大きい家の中にマリウスとジゼルは案内された。中からは宴会でもやっているのかと思える騒がしい声が聞こえる。


「こんな所で何をやってるんですか、クリスさん。」


中に入るとクリスが魚人族(マーフォーク)と酒を飲み交わしていて、それを見たマリウスが思わず声を上げた。クリスはかなり酔っている様で、顔が真っ赤になっている。その隣の上座には大きな体格の魚人族(マーフォーク)、おそらく族長のルーベルと思われる人物が盃を片手に座っていた。


「あらぁ、マリウス。見ての通りこの島に住む人々と交流を図っていたのよ。ここのお酒は美味しいわね。」


「おぉ、貴殿がマリウス殿か。さぁさぁ、こちらに来て一杯飲まれよ。」


「僕は聖職者なので酒など飲めませんよ。」


「まぁそう言わずに。一杯だけでも付き合われよ。」


マリウスが強引にルーベルの隣に座らされ、目一杯の酒が注がれた盃を持たされた。ルーベルとクリスがマリウスを見ている。こうなっては逃げ場がない。諦めてマリウスは一口だけ喉に流し込んだ。


「こっ、これは...これが酒ですか?」


飲んでみると酒らしさは感じられず、ちょっと香りの付いた水だった。確認の為にもう一口飲んでみても味は変わらない。ルーベルの反対側に座らされたジゼルも同じ様に盃を飲んでいたが、マリウスと同じ様に首を捻っている。


「クリスさん、これが酒ですか?」


「そうよ、美味しいでしょう。私は気分が良くなってきたわ。」


そう言ってクリスは盃の酒を一口飲んだ。


ーーーーーーーーーー


翌朝、マリウスとジゼルとで改めてルーベルへの挨拶と、この島に来た経緯や上陸した目的を伝えた。クリスは二日酔いだと言い、その場には参加しなかったが、二日酔いなのはクリスだけで、それ以外の者は酔ってすらいない。結局はクリスが酒に弱いというだけだった。


「貴殿らの話は分かった。目指している北の大陸とやらは我等が知っている所であろう。誰かに案内させても良い。水などの補給も引き受ける。但し、今は季節が悪い。風も波も船を遠ざけてしまう。半年ほどこの島に留まるのが良い。」


「ありがとうございます。安堵しました。ところで、私達がここに来るまでに巨大な鳥の群れに襲われました。その鳥についてご存知の事はないでしょうか?」


「あぁ、あれか。この島を棲家にしている鳥だ。昔からいてな。島の中央にある聖なる山、その中腹に住んでいる。我等は森や海に隠れられるので襲われる事は少ないが、それでも何年かに一度の頻度で犠牲者は出る。どうにかしたいとは思ってはいるが、あの巨体だ、通常では相手にできず困っている。」


「では援助への対価として私達が滞在している間にあの鳥の討伐を試みましょう。必ず討伐できると約束出来ないのは心苦しいですが、試してみる価値はあると思います。ここにいるジゼル君は海上で1羽の鳥を仕留めています。」


「なにぃ、あの鳥をどうやって仕留めたのだ?」


「弓です。」


ジゼルは素っ気なく返した。慌ててマリウスが捕捉する。


「彼は特別な力を持っています。ルルさんも浜辺でその力の一端を見ている筈です。彼が矢を放てば、あの大鳥を落とす事が出来るのです。」


「お父様、私はこの目でジゼルの強さを見ました。彼の身体中が光って、魚人族(マーフォーク)の兵達は誰も彼に傷を負わせる事が出来ませんでした。」


「ひかり?...そうかそうか。伝説の勇者だな。」


「ご存知でしたか。」


「知っておる。知っておるが、それは遠い昔の事だ。かつて我等の一族は勇者によって南の大陸から追われたそうだ。伝承ではそうなっているが、真偽は分からん。この少年がやった事ではないだろうし、気にする事ではない。今は頼もしい勇者が現れた事を喜ぶべきだろう。」


「そう言っていただけると助かります。」


それからもルーベルとマリウスは当面の生活や役割分担について話し合った。



第九部 完

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