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第百三十一話 連邦の追手

クリス達が乗る大型船を襲った怪鳥の群れは依然として船の上空を旋回していた。未だ餌を欲しているのだろうが、近付くと危険だと分かり、こちらの隙を窺っている。神殿騎士の何人かが矢を上空に放つが、怪鳥には届かなかった。


「無駄に矢を放つな。あれが降りて来るまでは方陣のまま待機だ。」


クリスが指示を出す。その間にマリウスがジゼルに駆け寄って声を掛けようとしたが、ジゼルの様子を見て息を呑んだ。いつものジゼルとは違う険しい表情、少年とは思えぬ落ち着いた佇まい。慌ててマリウスは威容を放つジゼルの前で膝を付いた。


「よくお戻りになられました、ジュード様。」


「やめて下さい、マリウスさん。僕はジゼルです。船に強い衝撃があったので、思わず出て来てしまいました。神装具を勝手に使ってごめんなさい。」


「えっ、ああそうだね。でもその姿はまるで...」


マリウスとジゼルが話していると近くで誰かが叫び声をあげた。


「後方より敵影、連邦海軍の中型船4隻です。」


「上空からも怪鳥が迫っています。今度は4方向から来ます。」


その声を聞いてジゼルが迫って来る怪鳥に向けて矢を放った。全く別の方向に放ったと思われたその矢は途中で少しずつ軌道を変え、円弧を描きながら1羽の怪鳥の鼻先を掠め、驚いたその怪鳥は上空へと上がる。その様子を見て他の3羽も再び上空へと上がっていった。怪鳥が上空へ上がったのを確認してクリスが指示を出す。


「船を後方の中型船へ向けて。他にも餌があると鳥に教えてやるわ。」


クリスの指示で船は舵を切って中型船へと向かった。連邦海軍の中型船が真っ直ぐこちらへ迫って来る。先日の海戦で焼かれた船体が遠目にも見える。中型船は波の高い外洋の航行には向かないのだが、律儀に追ってきたのだろう。クリスは連邦海軍の手前で再び船を旋回させて右側へと逸れていった。連邦海軍はそれを追おうとするが、波に煽られて進みが遅い。その連邦海軍の船に4羽の怪鳥が襲いかかった。


「今のうちに急ぎこの海域を離脱します。」


クリス達が乗る大型船は離れていくが、怪鳥は連邦海軍の船を新たな餌場とした様で、クリス達を追って来なかった。緊張が解けたのか船上の神殿騎士がその場に座り込む。ジゼルは急に意識を失ってマリウスに倒れ掛かった。


ーーーーーーーーーー


「ジゼル君の様子はどう?」


「眠ったままです。外傷はない様ですが...」


「ジュード様も疲労が溜まって倒れた事があるわ。ジゼル君もいきなり神装具を使ったから疲弊したんじゃないかしら。それよりも、神装具って使えたのね。紋章の精霊の助けが必要だって聞いてたけど、近くに居るのかしら?」


「精霊は居ません。なぜ神装具を使えたのかはジゼル君に聞くしかないです。」


「そう、さっき船上で試してみたんだけど、誰が使っても普通の弓と同じだったわ。何か方法があるのなら知りたいわね。」


「神装具は統一教でも研究しましたが、謎が多いというのが現状です。精霊を通じて神の御力を借りているのではと研究者は予想してますが、それを確かめる手段はありません。いずれにせよ、先ずはジゼル君が目覚めるのを待ちましょう。」


船内の一室でジゼルは寝かされ、マリウスや統一教の医療班が交代で看病している。そこにクリスが訪ねていた。船は周囲に何もない海上で停泊して怪鳥によって破壊された箇所を修理している。幸いにも船体の損壊は軽微で、翌日には航行再開出来る見通しだった。

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