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第百二十五話 新世代の紋章持ち

ジョルジアとアルムヘイグの国境付近、アゼルヴェードが作り始めたその街を利用して連邦政府の中央政庁は置かれている。その街の一角にある屋敷の奥の部屋、そこに3人の青年が集まっていた。1人はハルザンドの新興勢力の当主達と話していた文官で、名はイェルヴェと言う。彼はハルザンド王家の遠縁で、智者の紋章を持っている。もう1人はフーゲル。かつてスーベニアの深き森に住んでいた識者の紋章を引き継いでいる。名前は以前の識者と同じだが、血縁者ではない。最後の1人はキース。フーゲルと共に独自の武装組織を率いているが、どちらかと言えば武器開発者の傾向が強い。彼は愚者の紋章を引き継いでいた。


「ヴァイブが討たれてしまったな。智者の力でも防げなかったのか。」


「あれはそう仕向けたんだ。怯者は我々の力さえ奪ってしまえる危険な存在だ。さっさと消してしまいたかった。君達も彼の頭の悪さには辟易(へきえき)していただろう?」


「まあ、それはそうだが...」


「だが、これで勇者が目覚めてしまった。我々の計画の邪魔にならないか。」


「問題ない。勇者といえど物量作戦には弱い事をクリスとヴァイブの戦いが示している。これからの時代に求められるのは勇者や剛者といった蛮勇ではない。秩序だ。それを我々が作り上げる事で本当の平和が訪れる。勇者がそれに賛同するなら仲間に引き入れ、そうでなければ討ってしまえば良い。」


「そもそも勇者は未だ子供、力を付ける前にイェルヴェのいう秩序を作り上げてしまえば問題ないな。北の大陸にいる古の神々はどう扱うつもりだ。」


「我々の秩序を乱すかも知れぬ存在なら排除する。キースの武器開発が進めば可能だろう。だがその前にこちらの大陸に蔓延(はびこ)る老害を片付けたい。手始めにハルザンドの新興勢力には消えてもらうつもりだ。」


「了解だ。手助けが必要なら声を掛けてくれ。」


ーーーーーーーーーー


スーベニアの大聖堂ではジュードが、正確にはジュードが転生した少年が、目覚めていた。ジュードの起きた部屋にはクリスと若い神官見習いがいる。


「やぁ、目が覚めた様だね。僕はマリウス。ここはスーベニアの大聖堂で、君がハルザンドの地下牢に閉じ込められていたのをこのオバサンが...」


「んっ、ちょっと、お姉さんでしょう。」


「失礼...このお姉さんが助け出してくれたんだ。ここまでは良いかな?」


少年は頷く。


「僕達は君が勇者の紋章を持っている事を知っている。僕は隠者の紋章を持っていてね。神託によって君が捕えられていた事を知ったんだ。それでどうにか君の所在を掴んで、地下牢から助け出したって訳なんだ。」


「クリスさんは知っています。隠者についても。それに俺は、いや、僕はジュードだった時の記憶を持っています。」


「話が早い。もしかするとジュード様とお呼びした方が良いかな?」


「いえ、僕はジュードの記憶を持っていますが、ジュードではありません。上手く説明出来ませんが、ジュードの記憶は遠い昔話の様な、とても曖昧で、今の自分ではない他人の記憶を覗いている様な感じがします。」


「了解、では今の君として話をしよう。なんと呼べば良いかな?」


「ジゼルです。」


「じゃあジゼル君、これまでに分かっている事を共有しよう。」


マリウスとジゼルはお互いに知っている事を説明し合ったが、ジゼルは早い段階で勇者の力を奪われていた様で、ここ数年の記憶を持っておらず、またジュードが行方不明になって以降の大陸内の動きについても知らなかった。まだ子供、それも早い段階で眠らされていたのなら仕方の無い事だった。


「ジュード様の記憶が他人のものに思えるのは、もしかすると今のジゼル君がジュード様だった記憶を受け入れるのに時間がかかる為かも知れない。君が長く眠らされていた事が影響している可能性もある。いずれにせよ先ずは君の体力を戻さなくては。それに勇者としての修行も必要だろうね。結構な時間が掛かると思うけど頑張ろう。」


「はい、宜しくお願いします。」

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