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第百十七話 帝国の滅亡

【登場人物】

ジュード 主人公 英雄王ジークの転生体 〈勇者〉

アゼルヴェード 神帝 異界から呼び出された怪物

マリリア ジュードに降った神帝の妃 〈聖者〉

クリス スーベニアの神殿騎士で知略の持ち主

異界の神々によってアゼルヴェードから森人族(エルフ)の神が解放されると、闇森人(ダークエルフ)は元の森人族(エルフ)へと戻っていった。ハルザンド王都で粘っていた闇森人(ダークエルフ)森人族(エルフ)へ戻り、正気を取り戻した彼等は連邦軍に降伏した。西方諸国を占領していた闇森人(ダークエルフ)も同様だった。彼等は自分達が何をしでかしたのか理解し、反省と後悔を述べ、連邦軍の指示に従順に従った。森人族(エルフ)はハルザンド王都内の一角に集められ、手足を鎖で拘束された。後日、森人族(エルフ)(いにしえ)の神々によって北の大陸に連れて行かれた。それが対帝国戦で協力した(いにしえ)の神々からの要望だった。


帝国によって王都内に造られていた施設には大量の遺灰が収められていた。なぜ遺体を焼却したのか、なぜ遺灰が集められたのかは分からない。分かるのは、それが帝国の犠牲となった人々の遺灰であろうという事だけだった。遺灰はそのために設けられた供養塔に移され、統一教によって(とむな)われた。ハルザンド王都の生存者は闇森人(ダークエルフ)が最後まで粘っていた建屋に残っていたが、その数はあまりにも少なかった。


ジュードが不在となった事で連邦政府および議会の再編が行われた。これにはアルムヘイグに続きハルザンド、西方諸国も参加した。編成後の連邦政府は即座に被征服地域の復興にあたったが、特にハルザンドの人口減少は深刻で、各国協力による復興支援と、ハルザンドへの移民の募集が始められた。しかしジュードという求心力を失った連邦政府は各国の思惑が衝突するだけの場と化し、徐々に機能不全に陥っていった。


北と南との交易が徐々にではあるが開始された。とは言え南の玄関口であるハルザンドは復興が始まったばかり。船に積まれるのは北から南への支援物資が殆どだった。北から送られる食料や資材はハルザンドなどの復興に役立ったが、一方で南の大陸の各国は支援物資を出し渋り、全体で見れば常に物資が不足しがちだった。


帝国が滅んで一応は復興が開始された為か、あるいは遅々として進まぬ復興に苛立つ民衆からの突き上げをかわす為か、連邦政府は改めて戦犯であるマリリアの責任問題を議題にあげた。以前であればマリリアを非難する側と擁護する側が拮抗していたが、帝国によるハルザンドでの大量虐殺が明るみとなり、その非難が帝国の生き残りであるマリリアへと集中した。数ヶ月の議論の末、マリリアへの処罰は斬首刑と決まり、スーベニア神聖国に対してマリリアの身柄の引き渡しが求められた。


スーベニアは当初、マリリアの引き渡しには応じなかったが、マリリア自身が連邦への引き渡しを申し出た。マリリアの周囲は彼女の元を何度も訪れて翻意(ほんい)(うなが)したが、彼女の決心を(ひるがえ)す事が出来なかった。スーベニアと連邦の対立を避ける為か、自身の罪の意識に耐えられなくなった為か、あるいはジュードを失った悲しみから逃れる為か、マリリアは自身の胸の内を誰にも明かさなかった。


スーベニアから処刑場であるジョルジア王都まではクリスが率いるスーベニア軍が引き受けた。1人の受刑者を移送するだけとは思えぬ規模の兵士が警備にあたった。スーベニアからアルムヘイグを通りジョルジア王都へと続く街道には多くの民衆が押し寄せたが、民衆は静かに見守るだけだった。国を滅ぼした悪女、しかし早くにジュードへ(くだ)って以降は人々の解放に協力し、また聖者の力で多くの人々を救った事を民衆は知っている。連行されるマリリアを無言で見送る民衆の胸の内は複雑だった。


マリリアがジョルジア王都に到着すると連邦政府は直ぐに処刑を実施した。クリスはマリリアの遺骸が(さら)される事を許さず、素早く処刑場を包囲すると、彼女の遺骸を(ひつぎ)に収め、丁重にスーベニアへと連れて帰った。

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