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第百十二話 異界の門

【登場人物】

アゼルヴェード 神帝 異界から呼び出された怪物

イェリアナ 怪物に取り込まれた神帝の妃 〈剛者〉

シルリラ 闇堕ちした神帝の妃 〈賢者〉

帝国に征服された旧ハルザンドの王都、その中にある王宮の一室にアゼルヴェードはいた。部屋の中央には石造りの台座が2つあり、一方には拷問されていたシルリアが、もう一方にはジョルジアの地下牢から移送した紋章持ちの男が裸で横たわっている。2人とも手足が切断され、頭部や胸部は切り開かれて中身が見えている。アゼルヴェードが紋章の秘密に迫ろうと解剖した、その残骸だった。部屋中に異臭が漂っている。


アゼルヴェードの手には2人の魂を封じ込めた精霊石がある。2人が死亡している以上、この精霊石を砕いても2人が目を覚ます事はない。だが紋章の精霊ならばどうか。おそらく今もこの精霊石の中に封じ込められている筈だ。


可能なら、この大陸の神々を自分の子等に取り込ませるつもりだった。かつてこの大陸では神界から魔神を呼び出したという話がある。同じ手段で呼び出せないかと調べてみたが、その手段を知る事は叶わなかった。それで紋章の精霊に目を付けた訳だが、神界に繋がる手掛かりは得られなかった。もしかすると紋章を使っている時なら可能だったかも知れないが、普段では、まして死んでしまった状態では試しようがない。


「まあ、今更だな。死体は片付けておけ。」


アゼルヴェードは部屋の隅に待機していた闇森人(ダークエルフ)にそう言い捨てて部屋を出ていった。


ーーーーーーーーーー


「アゼルヴェード様、準備が整いました。」


黒衣の闇森人(ダークエルフ)がアゼルヴェードへ告げた。


「そうか、では始めよう。」


王宮の中庭へと向かう。中庭の中央には大きな扉が設けられている。扉は表面も裏面もどこへも繋がっていない。ただ大きな扉だけがある状態だった。その周囲には各地から集められた人々が鎖で繋がれている。大人も子供も、男も女も、皆一様に(うつろ)な表情で、視点が定まっていない。麻薬か何かの薬品の影響で意識が朦朧(もうろう)としている様だった。


アゼルヴェードが呪文を唱え始める。それは森人族(エルフ)の神が異界からアゼルヴェードを呼び出す時に唱えた呪文とは違う、異界で使われる呪文だった。長い時間、呪文が唱えられ続ける。すると鎖に繋がれていた人々が1人、また1人と倒れ、倒れた人から出てきた白いモヤが扉へと吸収されていった。全ての人々が倒れるまで呪文が唱えられ続けた。だが扉に変化はなかった。


「まだ足りぬか。」


「この大陸の者達は、数は多いのですが、どうも魂の力が弱い様です。」


「それが分かっているなら、もっと数を集めろ。」


「数を集めるだけでは不十分です。それより、アゼルヴェード様がお持ちの精霊石を使ってみては如何でしょうか。精霊の魂なら、より大きな効果がある筈と考えます。」


「これか...そうだな、試してみる価値はある。」


王者と賢者の精霊を閉じ込めた精霊石を扉に近くに置き、再びアゼルヴェードが呪文を唱え始める。精霊石から白いモヤが出て、今度のモヤは逃げ出そうと暴れたが、結局は時間をかけて扉へと吸収されていった。扉が輝き始める。だが未だ扉は開かれない。


「私の中にある精霊もお使い下さい。」


アゼルヴェードの後ろに控えていた山羊の獣人兵、イェルリナと共に剛者の精霊を取り込んだアゼルヴェードの子が前に進み出た。アゼルヴェードが頷くと、山羊の獣人兵は扉の近くまで進む。3度目の呪文が唱えられ、山羊の獣人兵がその場に崩れ落ち、また白いモヤが扉へと吸収されていった。すると扉は一際強く輝き、ゆっくりと開き始めた。

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