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翌日、商店街の端に見えた灯りは一つだけだった。
客はおらず、辻占さんだけがテーブルに着いてまっすぐ前を見ていた。
「あの、こんばんは」
私が声をかけると辻占さんは、ゆっくりとこちらへ顔を向け、静かに笑みを作り、いつものようにお帰りお疲れ様と言った。
「あの、私も占ってもらいたいんですけど、いいですか?」
今日こそは占ってもらいたい。勇気を出して、というと大げさかもしれないが、その一言をなかなか口に出来ずにここまで来た私にとってはそれくらいのことなのだ。
しかし、その勇気も無駄になった。辻占さんからは信じられないような言葉が返ってきたからだ。
「占いは、していないんですよ」
え?と思わず声に出てしまった。占いはしていないって、なにを言っているんだろう。
だって、辻占と書かれた提灯を灯し、テーブルの上にも道具が置かれてある。なにより、昨日もその前の日も、お客さんがいたではないか。占いをやっていないと言うなら、あの人たちはただのおしゃべりをしていただけだとでも言うのだろうか。
「でも昨日も若い女性のお客さんがいたじゃないですか。その前の日だって。あの人たちは、じゃあ何をしていたんですか?」
私にしてはめずらしく、次々と言葉を投げかけ答えを求めた。
辻占さんは、半ば文句を言われたようなものなのに、穏やかな表情を変えることなくこういった。
「あの人たちはもう占えないんですよ。占ってもしかたない・・でもあなたは違う。あなたには未来がある。あの人たちとは違うんです」
ますます、なにを言っているのかわからなくなった。
あの人たちと違うって、私には未来があるって、じゃああの人たちには未来が無いと言うのか。
「あなたは大丈夫です。派手でにぎやかというのにはあまり縁がないようですが、穏やかでゆったりとした人生を歩んでいかれます。私がお伝えできるのはこれくらいです」
私は、言葉を封じられたかのように頭の中が空っぽになり、自然と流れだした涙を拭くこともせず辻占さんに深々と頭を下げるしかできなかった。




