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鍵屋の倅と付与術師  作者: 藻翰
6/19

【セイギノミカタ】

な、何とか間に合った……けど、誤字脱字がありそうで怖い(笑)

もし、みつけたら教えてください<m__m>


 鍵屋の札は閉店(クローズ)のままに送られてきた資料を読んでみると、今回の【セイギノミカタ】もそれなりの人生を送っているみたい。


 そりゃあ【セイギノミカタ】になるぐらいだからと思うかもしれませんが、正義という言葉は正直に言うとあまり(・・・)いい言葉だと自分は思いません。


 なぜかって、正義とは人の数ほどあるわけで。


 その人にとっての正義は他人(ヒト)にとっての悪人である場合もあるわけで。

 普通に辞書を引けば、反対語を調べることが出来るのでわかりやすいかもしれませんが、正義の反対は悪ではなく不義。

 悪の反対は善なのです。

 そして自分勝手な正義というのはとても厄介で。


「馬車による事故、身分差……なるほど。事情は分からないとは言えないが……、それにしても……やりすぎたのか」


 今回の【セイギノミカタ】は家族を轢き殺された男の人で、自分の家族を殺した相手に復讐をしたという。正直な話、復讐をしたというだけであれば法に則っていうならばよくはないのだが、理解は(・・・)できる。

 ただ、この男は戻すのが難しい引き金を引いてしまった為、人間として緩くなってはいけない引き金が軽くなってしまったみたいで。

 自分と同じように恨みがある人を探しては半ば無理矢理依頼を受けて、別の復讐を請け負うようになってしまったみたい。

 こうなってしまうと、それは正義だけではなくなって。

 確かに、一部の人達からは涙を流して喜ばれることもあるはずだが、それはやってはいけない事(・・・・・・・・・)。理解よりも多分快感に飲まれてしまっている可能性が高い今の状態は一般の人達には理解できない場合もあって。


「なるほど。ただ消せばいいというわけでもないのか」


 今回の件に対して、アイツからの指示は処理してくれというのだが、報告が必要と一文が添えられているわけで。


「ここまでの事をしていると、いきなり消えたとは言えないわな……」


 そうなって来ると何かしらの処理もしないといけないわけで。

 やっぱり今回の件も簡単ではなく面倒なわけで。


「まあ、クリスの件もおわったし、サクッと終わらせてゆっくりするか」


 あまり沸かないやる気が少しだけ湧いてきたので、このやる気を維持してサクッと終わらせることに。

 資料を自分の部屋に持っていくとすぐそれを火にかけてすべてを燃やしてしまえばどんな指示があったのかわかる方法は頭の中に残るだけ。

 外で燃やした方がいいんじゃないの?と思うかもしれませんが、部屋の中に暖炉等の暖房施設があったらそこだって安全に火を使えるでしょう?今燃やした場所はまさにそういう場所なので何も問題は無くて。


「っし、とりあえずマップの項目をオンにして……」


 鍵開け(アンロック)する項目はマップを筆頭にサーチ、認識等を数個。

 資料に名前もあったのでこの街の中にいることは分かっていて、すぐに対処することも可能ではあるのですが、自分が狙われていることを理解しているみたいで人通りの多い道や人混みが多い場所を狙って移動をしていて、ある程度の時間一定の場所にとどまることはあるのですがそのどれもこれもが周りに人が居る場所ばかり。


「コレは、夜までかかるか……」




 あれから一歩も家を出ることなく、サーチをつかって場所を確認しているのですがなかなか隙を見せてはくれず。

 このままだと夜というよりは深夜までかかりそうだと思ったのですが、一瞬だけまずいような気がして。


「いや、まずくはないないな」


たった数日、うちにクリスが居たのでどうしても飯をせびられる懸念があったのですが、クリスはもうウチを出て学校に行っているので気にする必要はなくて。

 そんなことを思い出すと、飯を気にしていなかったことを思い出します。


「……まあ、動くから飯は後でいいか」


 元々一人だとそこまで食べることに重きを置かない人間なので食べることは後回し。

 スキルのマップとサーチに明確な動きを探知できたのは思っていた通り夜もかなり遅い時間。人通りの多い店から目標が動き、情報通りの方向に【セイギノミカタ】が動きます。


 相手が今回の標的にしているのは何の因果かクリスの実家。

 資料の情報通りだとこの件は、馬車に轢かれたわけではないのですが急ぎの治療を必要としていたにもかかわらず権力を笠に着て順番を変えさせた結果、治療が間に合わず亡くなったという情報で。

 ただ、正直に言えば治療がもし間に合ったとしても絶対に回復していたという状況でもなさそうなので、これはかなり拡大解釈が必要な話のような気がしていて。


「自分が狙われている事すら気が付いていない人間を助けるのもどうかとは思うが……まあ、仕事だしやるか」


 ここ数日で何度か足を運んだ場所にまた行くことになるのと思っていたのですが、追いかけていると思っていたのと違う展開で。

 確かに家に向かって自分も動いているのですが、微妙に行く先がずれていて。


「これは、どういう事だ?」


 マップの情報を見ている限り、正確なところは分からないのですが今回の標的の【セイギノミカタ】は家の近くまで行くと人気の少ない場所で待機をはじめ、多分標的になっていると思っていた、クリスの父親の方が家を出て相手の元に向かいます。


「情報が古いのか」


 クリスの父親が標的にされていると思っていたのですが、その情報自体がもう古い話で、クリスの父親と今回の目標に繋がりがある様子。


「さて、どんな話をするのか……」


 自分の存在感の項目をオフにして近づきます。



「やはり正しい行いというのは人がしっかりと見てくれているようだね。正義の鉄槌が下された事を被害者の家族も涙を流して喜んでいたよ」

「貴賤なんてあっちゃいけない。人はみんな平等、アンタの言った通りだな」

「そうとも。そして、可哀そうな人は他にも一杯いる。その声をくみ取ってあげる必要がまだまだ私達にはある」


 クリスの父親は濁った眼でそんな事を言うのですが、


「因みに、アンタはどうなんだ?」

「私?私も平等であるべきだと思うが?」

「……だったら、同じようにならないといけないな?」


 あれ?

 これはおかしい風向きじゃないか?

 そんなことを思ったのは自分ばかりではないみたいで、口を開けてポカーンとした顔のままのクリスの父親。


 怒りをにじませた【セイギノミカタ】が得物をアイテムボックスから取り出して構えます。


「まって、待て、待て。いきなり、どうした?」

「いきなりではない。確かに今まで情報を流して、交渉を有利に運ぶ手伝いをしてくれたことには感謝している……が、それはそれ。数秒前に自分の口でも言っていただろう?平等であるべきだと?」


 手に得物を持ったまま、一歩ずつ近づきます。


「いやいやいやいや。言った、言ったが、何故そんなものをこっちに向ける?」

「自分の都合で順番を変えて、それが原因で他人ひとが亡くなった。俺の都合(・・・・)で順番を変えて、お前が亡くなったとしても、それは平等だろう?」


 かなりの暴論に理にかなった話は勿論なし。

 そして不思議な事にクリスの父親も何も言い返せない様子。


「あったのか無かったのか知らない人間を殺すことは無いようにしてきたが、それにしても色々と俺達はやりすぎた。お前を終わらせて、俺も終わるつもりだ」


 何も言い返せないクリスの父親を無視して、今回の標的である【セイギノミカタ】は勝手に決心を固めてしまって。

 後三歩も進めばという距離まで来た瞬間に、クリスの父親はアイテムボックスから何かを取り出します。


「一人で、勝手に死ねっ!私は、関係、無いっ!!!」


 アイテムボックスから取り出したのは何かしらの魔道具。

 それが地面に落ちると、ぶわっと強い風がその場で渦巻き得物を持った状態の目標は動けない状態に。


「最近、色々と思い出せない(・・・・・・)事がある気がするが、お前も使えないやつだったな。しっかりと私の評価になるように処理してやるからありがたく思えっ」


 久しぶりに見る、心から下衆な存在に思わずうへぇと口から零れる言葉もあるのですが、勿論それをやりあっている二人は気が付くはずもなく。

 丁度いい形で目標を始末してくれるので、ありがたいと言いたいところではあるのですがそうなって来ると自分が仕事をさぼったと言われてしまうので、勝手に処理をされては困るわけで。




「とりあえず、こんな頻度で倒れるのは体に悪そうだけど、まあこれだけ憎まれていそうな人間は世に憚りそうだから大丈夫だろう?」


 丁度おあつらえ向きな位置に魔道具が転がっていたので、魔道具に付与したのは眠りの効果。もちろん自分は当たらないように遠距離からそれを付与すると先に眠ったのは目標の方。そして、すぐに異変に気が付いたみたいですが、気が付いた時にはもう遅かったという形で、クリスの父親もその場にパタンと倒れこんで、寝てしまいます。


 この後は二人の人間の記憶をいじる必要があるのですが、優先して終わらせる必要があるのはクリスの父親。

 そもそもここにいたことを覚えていては困る状態。


「お前は後回しな」


 聞こえていない事は分かっているのですが、魔道具からの風はいまだ眠りの効果を発揮していて、突っ立ったまま寝かせてしまった状態の【セイギノミカタ】は風がいい感じに四方で受け止めていてくれるので、立ちながらも器用に寝ているような状態に。


 倒れたクリスの父親に浮遊を付与して、慣れた家の中を勝手に歩きながら記憶通りだと多分自室だろうという部屋のベッドに寝かせると、左手をクイっとひねってクリスの父親の記憶、を勝手に鍵開け(アンロック)

 この間も多少の記憶改竄はしたのである程度は記憶を見てはいたのですが、本当にクリスの父親か?と思えるぐらいにこいつは真っ黒。

 この街にそんなものは無いのだが、闇ギルドの人間ですとか悪者の手先ですと言われた方が信用できるようなぐらいに悪い奴。


「なるほど。子供が出来ない(・・・・・・・)自分達に先がないのであれば、周りが居なくなればいいと。……それはそれで短絡的だし、そんな簡単にいくわけがないだろう……」


 思わずため息が出てしまう程杜撰な計画を実行していたみたいですが、今回返り討ちになりそうなタイミングで自分が現れてしまったので、改竄された後のこいつは何故かまたもノーダメージ。

 運がいいと言えばいいのかもしれませんが、そう何回もこんな幸運が続くわけがないのですが、そもそもこの幸運自体にも彼は気が付いていないわけで。


「二度あることは三度ある……のかねぇ。ま、程々にして欲しいわ……」


 改竄を終えたら、空中に左手をもう一度上げて、鍵かけ(ロック)をして、こっちの処理は完了。


 出来れば二度と来たくないと思っている家を出て、二人が密会していた場所へ行くと、立って寝ていたはずの【セイギノミカタ】が見当たらない状態。


 魔道具はそのままで風も出ているままなので耐えられるはずはない眠気に抗ったみたいですが、かなり気力を振り絞っているのでしょう。

 足をずっているみたいで何処へ逃げたのかは簡単にわかります。

 その足跡を追っていくと、こちらに気が付いたみたいで【セイギノミカタ】が振り返り得物を構えてきますが、まだ微妙にふらふらしていて。


「まさか本当だったのか?そのローブ」

「ん?ああ、このローブ?」

「ただの噂にしては信憑性が高いのが不思議だったが、実在した……という事は、俺はここで終わりか」

「そだねぇ」


 【セイギノミカタ】の右手にある得物は微妙に血が付いていて、よーくみるとその得物を使って自分の手を軽く傷つけた痕も見えます。


「そういえば、耐性が高いスキル持ちだっけ?」

「それが原因でうちの子供は殺されたからな」

「みたいだねぇ」


 資料に書いてあった今回の目標である【セイギノミカタ】さんは事故による死亡を装った(・・・)殺人で子供が殺されていて。

 死んだ人間を蘇らせるようなことは人間には出来ないわけで。

 何と声を掛けるのが正解か分からないままでいると、


「子供が死んで、妻は壊れた。少しずつ、少しずつ話が合わなくなって、最後にあいつは言ったんだ。子供に会いに行くと。どうやって止めたらいい?なんて言葉を掛ければよかった?なにも答えが出ないで、考えているうちに、妻は死んだ。二人共いなくなって、そんな俺が出来る事なんて復讐しかないだろうっ!!俺の家族をハメた奴らが生きていていいわけがないっ!」

「貴方が殺した相手にも、家族は居るんですよ?」

「知ってるよっ!!!分かってるよっ!!それでもっ!」


 【セイギノミカタ】にも言いたいことは勿論あって。

 それが正しくないことも分かっていて、それでもやり場のない怒りがあって。


「なあ、なんで今なんだ?」

「さあ?」

「もっと前に、子供があんなこと(・・・・・)になる前になぜ動いてくれなかった?噂のソレが本当だったら、分かって(・・・・)いたはずだろう?」


 何一つ言い返せる言葉は無くて。



 ザザッ………ザザザッ



 ジーッ……ザザザッ



 カチャ



 音が鳴ると、いきなり首から上が無くなって、血も何も流れず、ただ首から下だけしかない状態になって、そして首のあたりからすぅっと体も上から下に消えていきます。


「神様じゃないから、わるいな」


 そこにいたはずの【セイギノミカタ】はこの世から消えたはず。


 アイツや周りの人間にお前は何でもできると言われていても、セイギノミカタ一人救うことは出来なくて。

 今日も嫌な気持ちになりながら、無力を自分自身で噛みしめる結果に。


「あとは、安全になったと情報を流してもらうだけだが、そっちの方の調整は任せるか……」


 このローブを纏っての仕事はいつもこんな感じに後味が悪くて。

 小さな溜息をつくと、お腹がクーとなって。


「家に帰って酒でも飲むか……」


 どういう改竄を周りにするのかは後で確認するとして、とりあえずこの件は終わり。

 家に帰って休むとしましょう。








あっちのストックを溜めたくて、こっちが疎かになってしまって。

出来ればこっちもちゃんと更新したいんです。

でも、私マルチタスクには向いていない人間なのでどうしても一個ずつ地道にやらないとイケなくて。


今回も少しでも楽しんでもらえると嬉しいです。

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