スキルの暴走
先月に公開してからやっとの事での三話目ですが、今回もかなり時間がかかっていてすみません
文字数は少ないのですが、更新は更新と、開き直っております
後書きに色々と書きますので、まずは読んでいただき楽しんでください
いきなり大きな音で起こされて焦ったのですがどうやらクリスとシスターが悪戯をして起こしただけだったみたいで焦っただけ損をしたような感じに。
「で、結果は?」
「2-2-2に4。スキルは予想通りで適正にも反映されている形ね」
「……まあ、そうなるよな」
「そうみたい」
クリスの鑑定結果は予想通り。
四家の一つだという事も分かっている自分達からすればなにもおかしい所はない状態。
ただここまで予想通りのことが続いてくると、ずっと放置していた父親の動きがかなり遅いように感じますが、残念というか出来ない人間というのは人の予想よりも大抵は下を行くことも多くて。
こっちが思っている以上に出来ない父親だった可能性が高くなってきます。
「何か気になったの?」
「いや、アイツに聞くから別にいい」
「そう。じゃ、さっさと帰って」
シスターがまじめな顔でそんな事を言ってきます。
「別にゆっくりしていてもいいだろうに……全く」
「違うのよ。ほら、そろそろお昼でしょ?最近うちの教会お昼を食べるのに奇麗なスポットとして有名になってきていて、人が結構来るようになったのよ。それでちょっとした小銭稼ぎもしているわけ」
「なるほど。邪魔になると?」
「まあ、そういう事ね。ほら、さっさと帰ってー」
しっしと追い払われるように教会を出るのですが、シスターの言う通りでお昼を食べに人が結構な量入ってくるのでその流れを逆走する形で結構教会から出るだけでも疲れることに。
「この後どうするのー?」
クリスに聞かれたのですが、鑑定が終わって後の話はアイツ達も勝手にしているはずなので今やらないといけないことはほとんど終わった状態のはず。
「とりあえず帰るか」
「お腹減ったー」
「……作る予定はないから買って帰るか」
「おー」
二度寝の寝起きだったこともあって、いつもやっていることを完全に忘れてしまっていたことに気が付くのは色々とあってからになるのですが、この時は完全にそれを失念していた状態で。
クリスを連れて街を歩きながらお昼を買おうと教会から食べ物が売っている市場の方へと移動していくのですが、こんなに混んでいる街ではないはずなのにかなり今日は混んでいて。
「街ってすごいねー人が一杯」
「いや、そうだがこの人数は明らかにおかしいだろ」
人が何かに引き寄せられるような形でぞろぞろと動いていて、その人々の目もちょっと正気ではなさそうで。
そこで思い出すのは祭りからまだ日がそれほど立っていない事。
「時期的に考えても、スキルの暴走か」
「スキルの暴走?」
「クリスもさっき鑑定したようにスキルは基本的に一人一つ。その人間に合ったもの与えられるんだが、スキルに振り回される人がいるわけだ。そのスキルに振り回されている人の事をスキルの暴走というわけなんだが……」
目つきが多少おかしな奴らが何かを追いかけていることは分かったので、視線の先を探してみると、一人の子供が屋根を伝って逃げているのを見つけます。
「多分アイツだな」
「あの子が何かしているの?」
「多分な。追いかけていて、その目つきも正気じゃないとなると、スキルは『挑発』あたりか?暴走であればなんでこうなったのか分かっていないから怖くて逃げているだけだな」
「スキルが分かるの?」
「いんや、分からん。ただ色々と記録はされているからそれから予測することは出来るわけだな」
「へー。すごいねー?」
そんな話をしている最中にもスキルは暴走し続けるわけで。さらに人々が巻き込まれてどんどん人の列は大きくなっていきます。
巻き込まれないように注意して進んでいたはずなのですが、気が付けば列の端っこに引っかかってしまったのはクリス。
「キーファーー」
人の波に流されるようにクリスが群衆に飲まれてしまうと簡単には見つけられそうにない状態。このまま放っておけば勝手に帰ってくるかもしれないとは思ったのですが、後で何かを言われるのは自分なわけで。
「はぁ、面倒だ」
大きなため息を一つついてから、今やれることを考えます。
あまり大っぴらで鍵魔法を見られるわけにもいかないのですが、そもそもの原因はこの列を作ったスキルの持ち主。それをどうにかすればいいというのは明白なわけで。
「道一本だけ裏に入れば大丈夫か?」
大通りに居たのですぐ近くにある小道に逃げるように入りながらも視線はしっかりと逃げ回る子供を見失わないように見ている状態。
一応周りがこちらを向いていないことをしっかりと確認して、もう一度視線を子供に固定してから、右手を空中に。
視線がしっかりと子供をとらえた状態なので子供のスキルが自分の目には表示されます。
そこには予想通り『挑発』のスキルが発動中となっているわけで。
「鍵かけ」
カチッ
空中で鍵が閉まる音がすると、挑発スキルによる人を引き付ける力は霧散。道に居た人たちの目が一気に正気に戻ります。
「あれ……なんで俺?」
「何かを追いかけていたような?」
「うわっもうこんな時間、お昼もう少しで終わっちゃうじゃねーか」
スキルによって引っ張られていたのは男性が多いのですが、それはスキルを使った子供が女の子だったから。そのスキルが鍵かけされた以上、なにも効果はない状態に戻るので、引っ張られていた男性陣はそのまま散開。
何が起こったのか分かっていないのはスキルを暴走させた子供も一緒で、屋根伝いを逃げ回っていた子供もペタンと両足から崩れるようにお尻をつけてキョロキョロしています。
「キーファ、助かったー」
スキルを鍵かけしたままには出来ないので一応注意をしなければいけないと思っていたのですが、先にクリスがこちらに戻ってきます。
「注意してくるからそこで待っていろよ?」
「屋根の上に行けるの?」
「まあ、な」
「え、ずるーい」
「いいから、ここで待っていろ」
クリスのブーイングは無視して、自分の中の風魔法を左手で鍵開けして、壁を少しだけ蹴りながらすぐに子供のところに。
「スキルを使ったな?」
「え!?うわ、え?いきなり?何っ!?」
ペタンと座った状態なのですが慌てているのか両手をわたわたと振ってきますが、攻撃にも防御にもなっておらずただ慌てているようにしか見えません。
「何があったのかは知らないが、スキルが暴走していたぞ?」
「だって、いきなり大きな声を出されてビックリしちゃったんだもん」
どうやら驚いてスキルが発動してしまって、追いかけられてさらに驚いてスキルが発動。それの繰り返しが今回の暴走の結果みたいで。
「そうか。しっかりと学校や教会で習ってスキルに振り回されないように注意しろよ?とりあえず俺は降りるが、どうする?」
「え、あ。うん、降りる」
慌てて逃げているうちに屋根伝いまで来られるという事は何かしら数字のいい適正も持っていそうですが、そこまでの興味を持つわけでもないので脇に子供を抱えます。
「何その持ち方っ!もっとお姫様抱っことかせめておんぶとか色々とあるでしょっ!」
「喋っていると舌噛むぞ」
「え、うそ、やーめーてー」
子供がうるさくしているのを無視して来たときと同じスピードで通路から裏に入ったところに降ります。
「ほら、次はないから気をつけろよ」
そういってから右手を空中に鍵開けをします。
カチャ
「いきなり降ろされてビックリしてる?」
すぐに近くに寄ってきたのはクリスで、壁によたよたと寄りかかりながらこちらを見てくるのは子供。
「い、一応、お礼を言っておくわ。ありがとう」
「すっごく足がプルプルしているけど、大丈夫?」
「いきなりあんな高い所から落ちたらビックリするでしょっ!っていうか、アナタはなんなの?」
「ボク?ボクはクリス。キーファに街を案内してもらっているところ?」
「案内はしないぞ。飯を買ってとりあえず帰るからな?」
そんな話をしている間にも最初にあったような人込みはもうなくなっていて、町は歩きやすい状態に戻っています。
「気をつけろよ。ほら、クリスはこっちだ。行くぞ」
「はーい」
「え、あのっ!私っ!ノヂシャ!」
子供が名前を言っているみたいですが、興味はないので軽く手を振って挨拶をしたらさっさとお昼を買いに戻り……たかったのですが、クリスはまだこの街を楽しみ始めたばかりで普通であれば帰り道でパパっとスープや食べるものを買ってすぐに終わる話なのですが、隣にいるクリスは街を歩いたことが無い人間。
「キーファ、アレ!!凄い!!」
そう指をさしては腕を引っ張られ、
「キーファ!あっちのよく分からないやつも美味しそう!」
お昼を買いに来たというよりは殆ど子供のお守り状態。
「引っ張るなっつーの」
「えー、あっちのも美味しそうだし、こっちのアレも見てみたいし」
お祭りは終わったので普通の出店があるだけなのですが、時間帯が丁度お昼というのもあって昼食用の屋台もぽつぽつあってそれらのお店は魅せるランチにもなっているのでパフォーマンスもなかなかの物。
それにクリスが食いつかないわけもなく、選んだ道が悪かったというべきなのかもしれませんが、少しの距離を進むのにいつもの数倍以上の時間がかかっている状態。
これではいつまでたっても家に帰れないと思ったので、色々と自分の中でも葛藤はあったのですが、もう一度脇道にはいってクリスにある提案をすると、二つ返事が返ってきます。
そして提案した通りの事をしてみたのですが、慣れないことをするべきではなかったように感じることに。
「うわぁよっく見えるー。さっき見えなかったアレは……へー。こうなっていたんだ。キーファ、そっちじゃなくてこっちこっち」
提案したことはクリスを肩の上に乗せる事。
ちょろちょろ動き回られると見失いそうで困るのとローブを引っ張られたときに首ががくんがくんとするのが嫌だったのでこっちの方が楽だろうと肩車をしてみたのですが、重さは思っていた通りないのですが、肩の上で動かれると結構バランスは微妙な状態。
さらにクリスは自分が見たいものの方の肩の辺りのローブを引っ張るのでそれで余計にバランスが悪くなって、自分の提案が悪手だったことに気が付きます。
「あんまり暴れるな。とりあえず一通り見ただろうから、飯買って帰るぞ」
「はーい」
結局クリスが選んだのはサンドイッチとスープ。
肉の串なども食べたそうにしていたのでいいのか?と確認をしたのですが、食べきれない気がすると自分の適量を把握しているみたいだったので次の機会という事にしてやっと昼飯を買い終えて家に着くとお昼とは言えないような時間に。
そんな感じに二人がお昼を買って家に向かうのですが、その頃一人残されたノヂシャはまだ心臓がバクバクの状態。
それもそのはずというのも変な話ですが、一応形だけでも考えてもらえると今のノヂシャの気持ちは分かりやすいもので。
知らない男に驚かされて追いかけられ、気が付くと人数が増えていて動けなくなりそうになっていたところに颯爽と現れた男がいきなり地面まで抱きかかえられていたとはいえ助けられた気持ちはあるわけで。
それは子供の目からはほぼ完璧な王子様に見えてしまって。
ギリギリで名前だけは伝える事は出来たのですが、軽く手を振られて相手にもされない感じがあって、それもまた彼女の心をぐっとつかんでいた一つの要因に。
「キーファさんって、言っていたわね」
時間が経ってやっと足の震えも収まって。
「学校や教会でスキルについてしっかりと勉強……。頑張らないと!!」
こうして、図らずもキーファを追いかけるようになる少女が一人誕生するのですが、まさかこんなことになっているとは全く思っていないキーファ。
クリスのスキルや適性を確認しに来ただけなのに、こうやって厄介な事が増えていくのを喜ぶ人が今日もまたニコニコ笑いながらどこかで見ているみたいです。
読者の人にこんなお願いをしていいのか分からないのですが、今回の話のタイトルあっていましたかねぇ?
何かいいタイトルあるよってときは教えてください。検討します(決めるとは言ってない)
シスターはまだ……ええ、ぎりぎり最初にこれを書くと決めたときに必要そうなキャラクターだったので名前こそまだないですけど出てきそうな人でした。
誰、この子?
最初に作者が考えていたストーリーは普通に昼飯を買うだけだったはずなのですが、どうしてこうなった。
私は人の親ではないのですがキャラクターの親というか神になってしまうので適当にというわけにもいかず、名前、性格、ある程度色々と考えることになりまして。
ノヂシャを考えるのにかなりの時間を取りましたが、やっとキャラクターがいい感じに出来たような気がします。
が、自分の中でまだ上手く書けているのか良く分かっていない状態。
基本的にはどのキャラクターも好かれて欲しいですが、嫌われるのも一つの才能。
好きの反対は嫌いではなく無関心と何処かの誰かに習ったのですが、その通りだと思っています。
という事は嫌われるのもあり?と思ったのですが、この子を嫌いになる理由はないわけで。
出来るだけ好かれたいですが、一話限りになるのか、これからも出続けるのか……。
作者もまだ何も知らないのですが、コレどーなんでしょう?(笑)