夕食
ご飯な回ですね。
こっちでもご飯、あっちでもご飯。ご飯、ご飯、ご飯。
作者、食べる事が大好きみたいです(笑)
クリスは思っていた以上に努力家で、家にいる間サボることなくずっと真面目に基礎魔法練習を週末の間やっていたので、明日は学校だというのについ先ほどまでクタクタになるまで魔法の練習という名の家事をやっていいました。
ただ、まだ繊細なコントロールが出来ているわけではないので、すべての作業ができるかと言われると微妙で。
そして魔力を使ってクタクタという事は、そこにいる子供は動けない使えないモノになってしまうわけで。
「キーファ、ご飯おねがーい」
「おねがーいじゃない」
「だって、もうクタクタだよ?」
「分かってる」
朝は各自だったのですが、結局昼も自分が作って、このままだと夜も自分が作ることに。
ただ、買い物に行っていないうちの冷蔵庫に食材が大量に残っているわけもなくて、今から買い出しに行くというのもちょっと微妙。
だからと言って買い食いがいいかと言われると、そこまで外食というか外の味が食べたい気分でもなく。
「どうすっかな」
一人であれば適当に酒を飲んでおつまみを食べて終わりでいいのですが、何故かうちに居座る子供がいるのでそっちの事を考えないわけにもいかず。
「仕方ない……買ってくるか」
リビングでくたくたになったままのクリスに何か買ってくると伝えるのですが、
「一緒に行くー」
「動けないだろう?」
「一緒に行くー!!」
まだクリスは街に数回しか行ったことが無いわけで、買い物に行くというだけで思っていた通りついてくるという始末。
ただ、この状態のクリスを連れて行ったところで面倒なだけ。
「疲れているんだから、休むのも宿題だぞ?」
「でも、行くのー!」
ここまでくると折れることは少なそうなのですが、面倒に変わりはなく。
「じゃあ、何か食べたい物は?それ買ってきてやるから、おとなしくしてろ?な?」
「一緒に行くーのー!」
聞いているこっちが流石に疲れてしまったので、連れて行くことになるわけですが、なんとなく嫌な予感を察知して自分の項目を開いてみると、案の定トラブルの項目がオンに。
「ったく、油断も隙もねぇな」
すぐに項目をオフに戻してからすぐに支度を済ませて、クリスと夜の街に出ることに。
「やっぱり町は賑やかだねー」
「まあ、飯を食うとなるとそっち側しかないからな」
街はある程度区画に分かれていて、ギルドなどがある北の区画、市場のある東の区画、武器やなどが並ぶ西の区画と街の入り口となっている南の区画。
全部ごちゃまぜが南と北にあって、今向かっているのは北と東の間の辺りの区画。
どうやら昔からこの辺りは屋台の露店が広がる場所だったみたいで、屋台にもかかわらず老舗という不思議な文化が残っているほど。
「で、なに食うんだ?」
「んー、あっちのスープも美味しそうだし、こっちの串もよさそう……あ、あれなに?」
こんな感じでどの食べ物にしたいというのを考えているというよりはショッピングを楽しむような感じにしか見えない状態に。
「何も案が無いんだったら、スープに麺が入っている所にするがそれでいいか?」
「んー、アレも気になるんだけどー」
「じゃあ、串も買ってきていいから、とりあえずささっと済ますぞ?」
「はーい」
完全に子供の引率という具合になってしまったので、よく行く屋台に向かいいつも食べている屋台でいつもの麺を注文。
この屋台は、日本で言う蕎麦の屋台。
魔法を使って麺を温めて、スープに落としてわかめ、ネギを多めにどさっと乗せてくれて、一つだけトッピングで揚げ物が選べるお店。
「トッピングは?」
「かき揚げで」
「そっちは?」
「んー、分からないから、キーファと一緒で」
「はいよ」
ゲソ入りで紅ショウガがアクセントになっていて、色々な野菜も入っている多分このお店で一番人気のかき揚げを頼んでおけば基本的に間違いなしなかき揚げのトッピングをお願いしたのですが、凄くお腹が減っているときはコロッケというのもアリで。ひたひたにつけたコロッケはちょっと脂が染み出るのですが、その油が蕎麦と合うのでもう少しもう少しと食べたくなります。
と、まあ自分のいつもの食事は一度横に置いておいて、二人で蕎麦を啜っているのですが、ここは屋台街なので隣のお店の串焼きを蕎麦の上に乗せることも許可はされていなくてもやることが出来る状態。
「お勧めは豚串だが、蕎麦に合わせるなら鶏串がいいか。まあ、気にせず牛串もいいけどな?」
「んー、キーファどれにしたらいい?」
「好きにしていいぞ?」
自分は蕎麦だけで少し足りない感じでお腹いっぱいになるのですが、あえてスープをしっかりと飲み干してみると、かなり胃にスープも溜まるので、家に帰るころには思っている以上にお腹いっぱいになることが分かっているので追加の串は微妙な所。
ただ、今の状態だとまだ食べることが出来るので、勧めるとすればやはり鶏。いや、あえて食べたいときに食べたい串という意味では牛がいいかと悩みます。
「んー、じゃあ、お勧め通りに鶏で!」
「はいよっ」
香ばしく焼けている鶏串を一本買って、早速一口クリスが食べると、焼きたてというのもあって熱々で、はふはふとしている状態に。
「慌てなくても置いていかないから、ゆっくり食べろ」
「うん。おいしい」
なんとなく焦っているみたいだったので、焦る必要がないと伝えるとホッとしたような感じでゆっくり食べ始めたので、こっちも少しだけ食べるペースを落として食事をすすめます。
なんとなく、なんでそんなことに気が付いた?という視線が串焼き屋のおやじではなく、隣の蕎麦屋からあったのですが隣の串焼き屋が事情を知っているのでちょっと耳を貸せと勝手に人の事情を話しているみたいで、小さく何度か頷いてからこちらを怪訝に見てから、もう一度頷くと、
「サービスだ。賞味期限も近いからな」
そう言って、クリスの蕎麦の上に生卵をポンと乗せてくれると、
「わぁ、ありがとう。おじちゃん」
「また連れてきてもらえよ?」
「うん」
教会に行く時にここの串焼きを買う事が多くて、ここで串焼きを買えない場合は少しだけ子供と遊ぶようにしているのですが、どうやらその辺りの事情を話してくれたみたいでなんというか生暖かい目線でこちらを二人が見てきます。
ただ、自分はもう蕎麦を食べ終わらせて、串焼きも残りあと一つ。口の中にパクっと入れてしまえば終わりなのですが、焦らせることになりそうなので小さく息を吐いてクリスの食事が終わるのを待っていることに。
そして十分ほどかけてクリスもしっかりと食事を終えたのですが、一日中クタクタになるまで魔法の練習をしていた人間が食事を終えるとどうなるのかというのは考えなくても大体答えは出てきているようなもので。
「もう、おなか、いっぱい」
「おいおいおいおい。……はぁ」
電池の切れたおもちゃのような状態で、食事を終えて一息ついてしまったらクリスはさっさと夢の中。
で、この場所に放置するわけにもいかないわけで、
「出来る男は違うねぇ」
「うっせぇ」
「また食いに来いよ」
「ああ、そうするよ」
やいのやいのと言われながら仕方なくクリスを半分起こしてみたのですが、このまま歩いて帰るぞといっても微妙な状態。
仕方なくおんぶすることにしたのですが、やはりクリスはかなり軽いので簡単に背負う事ができます。
そして家に帰って後は風呂に入れて寝て貰いたいところですが、かなり危ない感じだったのでそのまま寝かせて明朝に風呂に入って貰う事に。
その辺り一応自分が起きなかった場合に備えて、一枚の紙をリビングに残しておくことに。
で、翌日の朝。
一応起きたのですが、クリスはしっかりとメモを確認したみたいで風呂を済ませて、朝食も済ませてくれたみたいでホッとしたというか、大きなあくびをしていたのですが、
「キーファ行くよー?」
「んあぁ?」
寝ぼけている今の状態で行くよ?と言われても訳が分からないのですが、
「学校までキーファが送ってくれないと、ボク学校入れないのー」
そんな事を今さら言われても仕方がないのですが、クリスはこっちを引っ張ってきます。
「顔洗う」
「早くねっ!」
眠い状態なのでクリスの声はキンキンと頭に響くのですが、顔を洗って……も、なんというか覚醒した感じはなく。
「ほら、キーファ行くよー」
「んぁ」
ぐいぐいと引っ張って来るのですが、コレは室内着なので外出着に着替えが必要で。
半分寝たような状態で着替えを済ませると、いつもの鍵屋のローブを羽織らされて殆ど引っ張られるような形で家を出ることに。
クリスに引っ張られながら学校に向かう道はところどころ店や建物が変わってはいるのですが、少しだけ懐かしい通学路でそんな思い出もあって、そんなものを見ているうちになんとなく目も覚めてきていたのですが、でもまだ眠いわけで。
半分起きているような、半分寝ているような状態で歩いているのですが、懐かしい場所を歩いているだけなので半分寝ていても何も問題なく学校に向かって歩けます。
「キーファは凄いね?寝ていても学校に行けるの?」
「んー、まあ……なぁ」
返事は相変わらず生返事ですが、多分そろそろ学校につくはずの辺りまでくると登校時間というのもあって子供の数が増えていることに気が付きます。
ただ、自分はまだまだ眠い状態なのでぼーっとしたままでクリスに引っ張られている状態でいると、数日しか通っていないはずなのにもう友達が居るみたいでクリスに声を掛ける学生もちらほらと。
そんな状態のままやっと学校の入り口に着いたのですが、学校に子供を連れて来る人間が自分だけなわけもなく。
「おやおやおやおやぁ?そこにいるのはもしかしてぇ?」
こっちは眠い状態なのですが、こっちの事を気にすることない人間というのはそういう事を気にしてくれるわけもなく。
獣が獲物を見つけたように目を細めると、こちらに寄って来て、
「価値無しの鍵屋じゃないの?」
朝から何やら面倒な人間に絡まれているみたいなのですが、こっちは眠くて正直反応したくないのでこのまま無視でいいだろうと思っていたのですが、残念というかタイミングが悪く今自分は一人ではなかったわけで。
「オジサン誰?何でキーファに悪口言ってるの?」
「あぁ?オジサンだぁ?」
……眠いし怠いのに、どうしてこう喧嘩を売っちゃうのかなぁ……。
朝から面倒に巻き込まれることになります。
良い感じに絡まれて終わってしまいました……。
所謂次回が気になる展開ではあるのですが、出来るだけ早く仕上げておかないとこの熱が冷めそうで作者的には焦る話。
思っていた通りには進んでいないので(笑)頑張って欲しいですね。
だって、キャラクターが勝手にご飯に……お風呂に……ダンジョンに……。
ウチのキャラクター達は作者泣かせですが、作者的には自由に動いてくれて楽しいと思う事も多く。まあ、痛み分けという感じで(笑)




