宿題2
やっとこっちも十話目……。
遅々とですが、進んで……いませんね?(笑)
クリスに家事をお願いするのですが、見本無しでお願いする程酷い人間のつもりはなく。
とりあえず先にやり方を見せる必要があるわけで。
「やり方が分からない家事は?」
「大体わかりそうだけど、力加減とか微妙な所がさっぱり?」
「とりあえず、こういう感じっていうのを見せればいいか?」
「お願いします」
という事で、家に戻って最初にする家事……というか整えるのはベッド。
「奇麗に畳んだな?」
「毎日使うものだから、起きたらしっかりと整えなさいって」
そういえばクリスはそれなりの家の出なのである程度自分の事は出来ることは分かっていたつもりでしたが、クリスの部屋のベッドは奇麗に整えられた状態。
わざわざぐちゃぐちゃにしてからやるというのも微妙なので一応奇麗な状態のところに風の魔法でもってふわりとベッドを整えることに。
ベッドに風がふわりと入ると、布団は少しだけふかふかになって、掛布団も少し風が入ったことによって軽く動き、更に多少の埃や塵などがベッドから浮かんだのでそのまま地面の方にゴミを移動。
ゴミと言う程のゴミではなく、あまり使わない部屋というのもあって多少部屋の中に残っていた埃があったのでついでに埃掃除もということで風を上手い事使って部屋の中、隅々まで風で掃除をすると結構なゴミが出てきたのですが、それらをそのまま部屋に置いてある屑籠へ。
「と、まあこんな感じでやるわけだが」
「すっごーい!!」
思っていたのとは違う反応にちょっと困るばかりですが、やることはコレで分かったはず。
「この部屋の掃除は今ので終わり。別の部屋の掃除をまずは頼めるか?」
「はーい」
こんな感じに風の魔法でやる掃除をまずはお願いしてみたのですが、風を扱うというのはなかなか大変で。
少しでも強く風が吹くと、物は簡単に傷つき壊れます。そして弱すぎると何も効果を発揮できない為、掃除にもならず。
一つの部屋を風の魔法だけでささっと掃除しているように見えますがまだ魔法を使い慣れていないクリスにはかなり難しい操作の話。
午前中で一部屋ぐらい終わったらいいかと思っていたのですが、そこまで終わる事すらなく。隣の倉庫のような部屋をぐちゃぐちゃにするだけして疲れてしまったみたいでへとへとになっているクリスがリビングでぼーっとしている自分の元へ。
「うぅ、キーファー、ごめん……なさい」
「まあ、初めてやるとこんなものだ。毎日毎日繰り返しやって、それでやっと慣れて来るからな?」
「これを毎日?」
「そう。毎日」
うへぇ、と嫌そうな顔をしてペタンと地面に崩れ落ちます。
そして、なにを言うのかと思ったら、
「お腹、減ったぁ」
まあ、朝から魔法を使い続けた訳ですから魔力は減っているわけで。
「何か食べるか」
「食べるー」
という事でお昼になったのですが、じーっとこっちを見て来るクリスは何か作れと催促の目。ただ、自分もいまはそれほど何かを作って食べたい気分でもなく。
「何か食べたい物はあるか?」
「んー、んー、ンー?」
どうやら何でもいいという状態みたいで、悩んではいるのですがこれと言って決まった何かがあるというわけでもなさそうで。
「とりあえず適当に作るから待ってろ」
「お手伝いする?」
「あー、じゃあ、そこで見て勉強な」
「はーい」
まじめに作ると面倒なので具材を切る必要のないモノばかりでとりあえず作るのはオムライス。
ご飯をフライパンに入れてその上にケチャップをたっぷり入れて、コーンの缶詰は水気を切って中身だけ、ツナ缶は油ごと一緒に入れてケチャップのべちゃべちゃな感じがある程度飛ぶまで炒めます。
炒めたご飯をお皿にこんもりと盛ったら、そのまま食べられるチーズを乗せて、面倒なので同じフライパンで卵焼きを作って、後はそれを今のご飯の上に乗せるだけ。
「ほい、オムライス?の出来上がり」
「おおお、早ーい。いただきまーす」
いただきますまでが凄く早いので結構お腹が減っていたように思えるのですが、なかなかの食いっぷり。
今回はツナを使ったのですが、勿論ツナをハムやソーセージに変更してあげると美味しくなりますが今日のこの作り方、他にもメリットが結構あって。
洗い物が少なく済むのです。包丁もまな板も使っていないので、洗い物が減るわけで。
と、楽をしてしまったのですが洗い物が多くあった方が家事の勉強になったかもしれないという事実に今更気が付きまして。
「ミスったか?」
そんな事を思いながらも、お昼をしっかりと堪能したクリスは食後と言うのもあって結構眠そうな感じ。
「とりあえず、少しだけ休憩してから三十分ぐらい寝ろ」
「え?寝ていいの?」
「無理しても余計眠くなるから、先に自分の中で時間を決めて寝るんだ。そうすると後が楽になるからな」
「へー。キーファは何でも知っているんだねぇ」
「いや、知っているというよりは経験だな。眠気は色々とミスを引き起こすから、しっかりと付き合わないと危ないからな」
こんな感じに昼寝をすることにしたのですが、なかなか気持ちよく寝ているところをゆさゆさと起こす人が。
「んぁ?」
「キーファ、起きて。寝たらすっきりしたよー」
起こしてきたのはクリス。
こっちはもっと眠いのですが、どうやらクリスは眠気も取れてさっぱりした様子。
「じゃあ、さっきの続きで水に浸した食器洗いから。それが終わったら洗濯物を風と土で奇麗に畳んで、乾きが甘い場合は火の精霊も使ってやって」
「わかったけど、やり方教えて?」
「んー…………ん」
眠い自分には何故先にすべてを教えておかなかったのかと恨み言の一つでも言いたいところですが、過去の自分に何かを言う事なんてできるわけもなく。
すべての作業をパパパッと見せてあげるとクリスは楽しそうにそれらを見て、学び、早速開始。
「終わらなくてもいいから、ある程度したら起こしえてくれ」
「はーい」
それだけ伝えたらもう一度リビングに戻って寝始めると、今度こそ邪魔もなくぐっすりと昼寝をすることに。
結構寝た感じで、気分がよくなって大きく伸びをすると、まだ外はある程度の明るさはあるのですが、それでも夕方と言って差し支えのなさそうな時間。
どうやらクリスは色々な家事作業に集中しているみたいでこっちの事は忘れてしまっているのでしょう。
「様子でも見に行くか」
どんな感じになっているのかと確認に向かうと、庭と言う程広い場所ではないのですが、洗濯物を干す場所で悪戦苦闘中のクリスが肩で息をしながら、色々と頑張っているところ。
先ほどちらっと見せた風を使ってふわりと浮かせた洗濯物を地面から伸ばして箸の様にピンポイントで服に刺さらない程度の硬度でタイミングよく合いの手を入れる形で洗濯物をしまうバスケットに畳みながら仕舞う作業を真似ているのですが、風が強すぎると上に洗濯物が吹き飛び過ぎて、弱すぎるとそのまま地面に落ちて。
そしてその場合はもう一度洗い直さないといけないのですが、一応その辺りも洗濯の魔法を教えてあげてしまっていたのもあって、水と風で水流を作ってその中に入れて汚れだけを落としてもう一度竿に掛けるという作業を見せているので、クリスはここからどうやら一歩も動けなくなってしまったみたい。
「あ、キーファ」
「大変そうだな?」
「うん。基礎魔法は簡単って先生が言っていたのがやっぱり嘘だってわかった」
「簡単というか、まあ習熟するには慣れや時間がかかるからな」
「うん」
どうやら自分を見て一気に疲れが出てきたみたいで、キーファがペタンと地面に崩れ落ちます。
「とりあえず宿題はこのぐらいやればいいか?」
「多分十分だと思うー」
「よし、じゃあ残りはやっておくからとりあえず先に風呂入って夕飯になったら起こすから寝てろ」
「眠くはないけどー?」
「お風呂に入って、風呂から出て、牛乳の一杯でも飲んで涼しい部屋でゆっくりすればわかるぞ?」
「そーなの?」
「そーなの。ほら、いけいけ」
「はーい」
とりあえずクリスを家に戻らせて、洗濯物を一応確認。
どれもこれも何回か洗った跡があるのでクリスは宿題を頑張っていたことに違いはなさそうですが、バスケットの中身はすべて奇麗なものばかり。
残りの洗い物をチェックしながらすべての作業をパパっと終わらせて、夕食に。
疲れているときに食べるといいのはやはり肉。その中でも豚肉がいいだろうという事で何か思いつく豚肉で食べられるものは生姜焼き。
たっぷりタマネギも一緒に食べるタイプの生姜焼きはご飯もすすむのでいいだろうという事でサクッと作ることに。
もちろんご飯と味噌汁も準備して少しだけ面倒だと思いながらもキャベツの千切りも。
まあ、キャベツの千切りはスライサーを使って包丁での千切りではないのでそこまで大変という事もなく。
「よっし、出来た」
肉をしっかりと焼いて、ちょっと味が強めの生姜焼きが出来上がったのでクリスを呼びに行くと、眠くはなさそうだと言っていたのですが、疲れは疲れ。
すーすーとしっかり寝ていたので少しだけ肩を揺らして起こします。
「夕飯だぞ。起きろー」
「んー?ぁー?きーふぁ?」
目がトロンとしていて寝起きと言うか、しっかりと覚醒していないような状態で少しの間ぼーっとしていたのですが、もう一度しっかりと声を掛けると目がシャキっと。
「キーファの言う通り寝ちゃった!」
「はいはい。とりあえず飯な?」
「うん」
そして夕飯を食べるのですが、生姜焼きは味的にも今日の一品としてもヒットしたみたいで、クリスがおかわり。作った自分もなかなかヒットの一品でおかわりをしながら食べたのですが、
「そういえば、基礎魔法の練習は必要って言っていたけど、スキルには関係ないんじゃないの?」
「いや、必要だぞ?」
「そーなの?」
「この間の『挑発』のスキルの子供がいただろう?」
「えーっとノヂシャちゃん?」
「……多分ソレだが、挑発というスキルは自分でコントロールする必要があっただろう?」
「うん。人がうわーってなってた」
「そのコントロールは魔力のコントロールに似ているというか、殆ど一緒なんだよ」
「そーなの?」
「ああ。だから、付与術というスキルは基礎魔法が上手く使えないと、上手くならない」
「えー?でも、学校の先生が基礎魔法は基礎魔法。スキルはスキルって習ったけど」
どうやら学校は未だに勉強不足みたいで、正しい授業は行われていないみたいで。
「例えばなんだが、『剣士』というスキルを貰ったとするぞ?」
「うん」
「『剣士』だからと我武者羅に剣を振っていればどんどんスキルが育つかと言うと、実はそうではなくてな?」
「そーなの?」
「ああ。スキルとは別に技もあるわけだが、スキル頼りだと結局ある程度までしかいかないんだ。それは、スキルを正しく扱えないから。そして、スキルを正しく扱うために必要なのが……」
「基礎魔法?」
「ああ。まあ、魔力のコントロールだな。『剣士』と言うスキルだとしても魔力を全く使わないわけではないから、それこそ身体強化は基礎魔法の極致でもあるから、それが上手く使えない『剣士』は弱い事になるわけだ」
そして、こいつのスキルはどう考えても魔力寄り。
基礎魔法が先に行くにつれてどんどん大事になるわけで。
「って事で、明日も今日と同じメニューでくたくたになるまでやる感じだからな?」
「えーっと、どれか属性を一つだけ偏ってもいいの?」
「最終的にはすべてをある程度で使えた方がいいが、キッカケがつかめるまでは一つの属性に絞るのもいいぞ?ケガが少ないのは水だな。次に土、風、火と続くが」
「そういう感じに聞くと、ぜーんぶやった方がいいって事?」
「まあ、頑張れ」
「ん!!」
大きくクリスが頷いて、残っていたご飯をお肉で挟んでぱくりと大口を開けて食べます。
「頑張る!!」
こちらもつられて頷いてしまいましたが、家にクリスが居ることに微妙に慣れている自分に気が付いて。
少し遅くなった、ハッとした状態ですが細い息を吐きながら諦めることに。
とりあえず、明日から飯の作り方を覚えて貰って休日のやることを一つでも減らす方向で。便利な小間使いが手に入ったと思って教育してみることに。
基礎魔法さえあれば、生きていくことは余裕だと思うのですが
何故か魔法をそこまで便利に使えない人達。
まあ、魔力量が低い為とか何かしら色々と理由はあるかもしれませんが、とりあえず鍛え方を教えることは出来た訳で。
鍵魔法をつかってもっとカチカチやるはずが、全然やれない不思議。
しゃーないか(笑)




