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鍵屋の倅と付与術師  作者: 藻翰
1/19

始まりはゴタゴタ

楽しんでいただけると幸いです


 今日はお祭り。

 街の空気もいつもと違い、いつもよりも緩くて賑やか。

 そんな空気感がボクを冒険に誘って来たので、反省は一切ない。


「あっちが闘技場で、こっちは屋台街……うーん、屋台に行きたいけどこっそり来たから……仕方ない。闘技場でも行ってみよう」


 いくら祭りだと言ってもお店はお店。お金を払わずにモノが貰えるわけもない。

 そんな当たり前のことは分かっているので向かう先は闘技場にしてみたのだが、思っていたのと少し違って。


「あれ?お祭りなのに闘技場って休みなのぉ!?」


 いつも一番にぎわっているダンジョン闘技場に足を運んでみたのだが、いつもは屋台と人にもみくちゃにされるような場所にもかかわらず今日は誰もいない状態。


「でもまぁ、入ったことないし……警備の人もいないからちょっと中の見学ぐらいはいいよね?」


 独り言に勿論返事はなく。

 ニヤリと笑って立ち入り禁止の看板の内側に入ります。


 外はお祭りなので賑やかな空気は勿論この闘技場にも多少あるのですが、壁一枚隣の世界って感じが好奇心を更に刺激して。

 奥へ奥へと進んでいると、ふらふらと酔っ払いのような少しだけ目が虚ろにも見える大人が数人闘技場のステージの方へ向かっているのを発見。


「にしし……何かあったらあの人達と来たって言えばいいんじゃない?」


 見つけた大人の後ろにこっそりとついていくと思っている通りで闘技場のステージが見えてきます。


「立ち入り禁止看板の先にお祭りの日の酔っ払いが向かう先。コレは何かあるに違いない」


 流石にステージの中に入ると危ない気がするのでステージの入り口付近にこっそりと隠れた状態で中を覗いていると、結構な人数が闘技場に色々な方向からふらふらと集まってきます。


「……んー、なにをしているのか見えない」


 少しだけ背伸びをしてみたりするのですが、視線がほんの少し高くなったぐらいでは何も見える景色は変わりなく。



 ザザッ………ザザザッ



 ただ闘技場の真ん中に十数名の人がふらふらと集まると、大人達がいきなり目を覚ましたようにキビキビとした動きに。


「ん?なんで俺ここに居るんだ?」

「アレ?酒を飲んで……トイレに行くつもりが間違えたか?」

「おめぇは……なんでこんな所に?」


 そして知り合い同士なのか知らない人同士なのかが分からないような曖昧な会話をしている様子。

 その時、ゾワッと何か良く分からないけれど怖いというか威圧というか、とにかく何かわからないけどヤバイ空気を感じます。



 ジーッ……ザザザッ



「え?」

「あ?」

「ん?」


 その良く分からない何かを大人達も感じたみたいでキョロキョロと周りを見るような動きをしていたのですが、そこから先は目を疑うような光景に。



 カチャ



「あ、あ……」


思わず悲鳴に近い声を上げてしまったのですが、それを聞く人は誰も居なくて。


 何か音が鳴ったかと思ったら、いきなり首から上が無くなって。

 血も何も流れず、ただ首から下だけしかない状態に。

 そして首のあたりからすぅっと体も上から下に消えていきます。


「あ、ああ……」


 闘技場に居た大人達はいきなりそうやって消えてしまって。

 何があったのかわからない、でもこんな場所に居ちゃいけないという本能的な警告は自分の中でガンガンにアラームを鳴らしている状態で。

 あまりの光景に腰が抜けて、警告通りに逃げることが出来なくて。

 どうしよう、どうしよう、どうしよう。

 こんなことになるんだったら、お母さまの言う通り家に居ればよかった。そんなことを思っていたのですが、



「あれ?何で気配が?」



 今まで誰もいないように見えたステージの横の方からそんな声が。


 その声に思わず反応しそうになって息を思いっきり吸い込んでしまって呼吸が苦しくなります。

 慌てて自分の口に両手をあてて音を何も出さないように静かにしたのですが、



「うわぁ……これは見られたか。って、子供かぁ……」



 息を殺してじっとしているので視線など一切合わせていないにもかかわらず、まるでそこにいるように声が聞こえて、



「仕方ない。案件じゃないからあまり使いたくないけど、こんなところに居たこいつが悪いって事で、とりあえずは…………」



 覚えているのはそこまでで。





 次に目を覚ました時にはいつもの天井で。


 何か凄いモノを見た記憶があったような気がするのですが、思い出せず。


「クリス、いつまで寝ているの?朝食の時間よ、起きなさーい!!」


 もやのかかったような状態は変な夢を見たからだと思ってベッドから起き上がって、


「はーいっ!今降りますー」


 元気よくお母さまに返事をして、いつもの日常が始まります。







 遠い場所からそれを見ていた男は、


「よっし、大丈夫そうだな。ふぅ……。あの場所に鍵はしっかりと掛けておいたんだが……」


 そう言いながら手元にウィンドウを出して項目をチェック。


「うわぁ……また勝手に項目がオンになってるじゃん……。オフっと。これで大丈夫だな」


 男の出したウィンドウにはいろいろな項目があって男がオフにした項目の名前は『――』


「えーっと、他は大丈夫だよな?『厄介事』は……ちゃんとオフだし、とりあえずこれで大丈夫かな」


 何項目か男はウィンドウを確認するとウィンドウを閉じてもう一度子供の方を向いて、


「祭りの日に家を抜けちゃだめですよっと」


 子供を家に帰して、記憶(・・)を書き換えたら後は帰るだけ。



 これで今回の件はすべて終わり。


 書き換えた記憶は都合のいいモノにしっかりと上書きされているので都合の悪い記憶は思い出されることはなくなって、目撃者はこれでゼロ。


「ったく、年に数回でもこの人数……。このままいくと人口減少しちゃうか心配だよ……」


 独り言ちて、後は家に帰りましょう。




 ここまでやれば後はいつも通りの(・・・・・・)日々に戻るだけ。








 改めましてこんにちは?あれ?初めましてでしたっけ?

 不都合な事はすぐに忘れちゃうので、ってその辺りは知っていましたっけ?


 皆さんご存じの通り?こっちの生活も結構長くなってきていまして。

 アッチで四十歳以上までぐーたらしていた自分としてはかなり色々と頑張っている気がします。


 こっちの世界に来たのはもう十数年も前。

 来てすぐは期待に満ち溢れていたのですが、


「知識チートとか全くないし。殆ど地球と変わりないのに魔法があるからヒャッホーかと思ったのにそんなこともなかったし」


 思わずため息が。

 十数年前に地球でぐーたらしていた四十歳過ぎの自分が何の因果か巻き込まれたのかもよくわからないままこっちの世界に。


 異世界転生じゃん!とすごく喜んだのですが、自分の思っていた異世界とは全然違って。


 世界が進みすぎてロボットもいるし、もちろん魔法もあるし、美味しい料理もバッチリ。


 もしや!?と思って娯楽はないんじゃないかと一瞬期待したのですが、娯楽もバッチリ。


 いろいろな転生系の小説は網羅していたのでそうなって来るとこれはざまぁ系?と思っていたのですが、そこまで大した(・・・)事はなく。

 まあ、紙落としの儀式でこっちの世界に来たので元々の体の意識を乗っ取る形になってしまって申し訳なかった気がしたのですが、その辺りも数年前までに解決済み。

 じゃあ、俺Tueee系?と聞かれると一応?多分それ系な気もするのですが……。


「強くてもねぇ……」


 一応ダンジョンがあって、ドラゴンなんかもいるのでギルドもあって冒険者になればそれなりの財産を築くことは出来るのですが、やりたい?

 元々ぐーたらしていたただのおっさんが生まれ変わって色々あってやる気も何もなくなって。

 ぐーたらしたい人が俺Tueeeになっても大したことになるわけもなく。


「そして今日もまた面倒だけがやってくるんだよなぁ」


 毎朝起きて最初にトラブルの項目にロックがかかっていることは確認しているので、本当におかしいとしか言いようがないのですが、はぁ。



 そんなうちの家業は鍵屋。

 何代目とか一応それなりに有名ではあるのですが、裏路地の先にあるお店なので有名店という事でもなく。

 今日もぐーたらと店番をしている状態。

 正直お客が来なくても問題ない(・・・・)ので面倒ごとや厄介を持ってこられると困るのでお店なんて閉じておけばいいと言いたいのですが、家業なので仕方なく。 









「面倒くさいなぁ」


 今日もいつも通りに頬杖をついた状態でお店の椅子に座りながら愚痴をこぼします。


 基本的にお客が来ない鍵屋をやっているので楽なはずなのに、今日もなぜか面倒がやってくるわけで。

 大きなため息をつきながらどうしようか考えてみるのですが、結局やらないといけないというところに落ち着きます。


「忘れずに仕事の項目にもロックしたはずなんだけどなぁ」


 ぐちぐちと言いながら面倒を片付けるために椅子から立ち上がります。


「サクッと終わるといいんだけどなぁ」


 とりあえず今日も仕事めんどうを片付けるとしましょうか。





 今日の依頼は家に保管してある魔導書の鍵開け。


 まあ、多分鍵をなくして開けてくれって話なんだろうけど……昨日の今日でここに来るなんて思っていなかったわけで。


「うっわぁ…………昨日の家かよ。良く分からない項目が開いていたのも気になるけど……。どうするかな」


 どうするかと自分で言ってみても結局仕事はしないといけないわけで。

 なるようになるだろうという事で仕事着である普通の(・・・)ローブを羽織って入り口にあるインターフォンを押します。

 家は昨日見ているのでなんとなく間取りも分かっている状態。

 そういえば結構広かったという事を思い出しながら案内されるままについていくと、それなりに広い部屋に通されます。


魔導書これのカギが見当たらなくなってね。魔導書は力づくで開けるわけにはいかないから依頼をしたんだが、どうだね?」

「あー、このぐらいでしたら。えーっと、スペアの鍵も必要ですかね?」

「そうしてくれると助かる。時間はどのぐらい?」

「すぐに終わりますよ。というか、まあ確認作業も必要なのでそこで見ていてもらえますか?」

「ああ、よろしく頼む」


 鍵開け作業はちょっとだけ特殊なので色々とあって、時間をかけると遅いと言われ時間をかけないとそんな簡単だったなら安くしろと言われることもあって客商売としては面倒なことが多くて。

 だったらやらなければいいと思うかもしれませんが、そういうわけにもいかず。


「これは結構古い魔導書ですね。なるほど、なるほど。…………うわ、面倒だな」

「何か?」

「いえ、えーっとですね、信じられないかもしれませんが鍵はこの家にあるみたいなのです。私は鍵屋なのですが、探偵みたいな話に聞こえるかもしれませんが鍵があるのであればそれをお渡ししたほうが確実かと思いまして」

「家にあるだと?ないから頼んだのに?」

「ええ。もし許可を頂けるのであればご案内しますが」


 凄く嫌そうな顔をされて値踏みするような視線でこっちを見てきます。


「……良く分からない鍵屋に頼むからこういうことになるんだ……全く」


 小さめの声で後ろを向いて言っているのですがしっかりとこっちに聞こえるような声量で言われているのでこっちとしても面倒なことになったとしか思わない状態で。


「鍵が無かったらしっかり開けられるのか?」

「ええ。それが生業ですから」

「ふん、とりあえずその場所に連れて行ってくれ」

「わかりました」


 基本的に魔導書は鍵と本で一対の物なのでパスが繋がっているものも多くて。

 かなり遠く離れてしまった状態だとそれは見えなくなるのですが、同じ敷地内ぐらいであればある程度(・・・・)の魔力がある人であれば見えるわけで。

 自分としては糸を辿るだけ。

 魔導書を部屋に置いたまま自分だけにしか見えていない糸を辿っていくと二階の部屋の前にたどり着きます。


「えーっと、この部屋の中にあるみたいなのですが」

「クリスの部屋、だと?」


 その名前は聞いたばかりでさらに面倒になったと思っていると、人の足音に気が付いた部屋主である子供ががちゃりと扉を開けて出てきます。


「アレ?お父様?どうしたの?」

「うむ、そこの鍵屋がこの部屋に鍵があると言っていて。ないとは思うのだが少しだけ部屋に入ってもいいかい?」

「鍵?……あ、うん。どうぞ?」


 何か思い当たる事があるみたいな顔ですが、どうぞと言われて一応部屋に入る許可は貰えます。

 そしてちらりとこちらの顔を見てきますが、子供がこっちの顔を覚えているわけもなく。


「では、失礼します」


 部屋に入って糸を辿ると、そこには勉強机があってさらにその奥に糸が伸びているのが分かります。


「あー、すみませんがこの奥にあるみたいなので少しだけ机を動かしても?」

「ん?そうなのか?」


 怪しんできますが本当の事で。


「ええ。許可を頂けると助かるのですが」

「いいかい?クリス?」

「え、うん」


 子供が頷くと多分許可は取れた状態。

 パッと見てわかるぐらいには重そうなので少しだけ魔法を使うとしましょう。


 魔法ウィンドウをパッと開いて、ズラーっと項目が出てくるのでその中の付与魔法の項目をオンにして、一度目を閉じます。

 今は机の重さがない状態になれば楽なので、『浮遊』を机に付与。

 片手ですっと机を動かしてみると机の後ろに目当ての鍵を発見します。


「これですね」


 そう言いながら机を元にあった位置に戻して、付与していた魔法を解除。

 使い慣れていない魔法はやはり疲れるのでさっさと魔法の項目をオフに戻していると、こちらを信じられないというような目で見てきます。


「今のはなんだ?」

「え?魔法ですけど?」

「いや、そうじゃない!そうだとしても何をした?」

「えー、ですから付与魔法をちょちょいと」

「……それで、それが鍵なのか?」


 何かあきらめるようにして聞いてきたので、


「ええ。こちらが鍵ですね。どうぞ」


 落ちていたものを拾っただけなのでそのまま手渡します。


「あ、一応確認で開けていただけますかね?」

「勿論だ」


 何か言いたそうなままのこの家の主人を無視して先ほどの部屋に戻ろうとすると、


「あの、おじさん?」

「なにか?」

「なんでここにある事が分かったの?ボクでも忘れていたのに」

「……たまたまだよ。こういう悪戯はほどほどにね?」

「……ん-、どっかで見たことがある気がするけど知りませんか?」

「初めて会ったはずだよ?似た人にあったことがあるとよく言われるから坊やの勘違いだろう?」

「うー、坊やじゃない!!」


 そんな話をしていると、ちらりと父親の視線が子供に向かいます。

そしてその視線にはいつの間にこんな悪戯をしたんだ?という小さな怒りを感じる視線。

ヤバいと思ったみたいで子供は、


「あ、勉強の途中だった。ほら、二人共出て行ってー」


 急にぐいぐいと背中を押してきます。

 そしてこちらとしても確認を早くしてここを離れたいというのもあって、頷いてこの部屋をすぐに出ることに。


「ウチの子供がすまない。ただ、無事見つかってよかった」

「ええ。見つかってよかったですね」


 そう言いながら先程の部屋に戻ると渡した鍵ですぐに魔導書が開きます。


「大丈夫そうですね?鍵開けはしませんでしたが、通常通りの料金となりますがよろしいですかね?」

「ああ。ありがとう」


 ここでごねられると面倒だなと思っていたのですが、そういう事にもならないですぐに頷いてもらえたのでよかったと思っていると、部屋にやってきたのはさっきの子供。


「やっぱりどこかで見たことがある気がするんですけどっ!!」

「クリスッ!」


 やや怒り気味な声ですが、子供は負けじと、


「お父様、違うんです。魚の骨がのどに詰まったみたいな感じで何か蓋をされたようなうー、思い出したいけど思い出せないような、何かその人を知っていて変な感じがするんです」

「なくした鍵を見つけてもらっていて、その言いようはなんだ。すみません、教育がなっていなくて」

「いえいえ。何やら似た人と間違えられているみたいですが子供にはよくある事ですから、気にしていませんよ。では」


 このまま居続けても改竄かいざんした記憶を思い出す事はないハズですが、嫌な予感だけはあったのでさっさとこの家を後にすることに。

 昨日掛けた魔法なので鮮度は十分のはず。日が経って綻びが出てくることもないわけではないのですが、それにしても早すぎるわけで。

 いつもの癖で家を出てすぐに各種項目をチェックしてみますが、主要項目はしっかりとオフなことを確認。気のせいということにしてさっさと家に帰って面倒なことは忘れるに限るわけで。

 お店でぼーっとしているうちに今日が終わって。

 そんなことがあったなと、この出来事は過去にしてしまいたかったのですが、どうやらそういう事にはならず。







「こんにちはー、お金を払いにきましたー」


 お店でぐでーっとしていたのに、思わず嫌な顔をしてしまう程。

 見なくても動かなくても面倒がやってきたことが分かります。

 仕方なく大きなため息を一つだけついてから、


「いらっしゃい」


 そこにいたのはこの間の子供。その片手には袋があって結構な量のお金が入っているのが分かります。


「この前の鍵開けの料金かな?」

「です。メイドさんが払いに行くといっていたので奪ってきました」


 なかなか厄介なことを。

 こっちのせいにされたらたまらないと思っていると、


「これ、欲しいですよね?」


 そんなことを子供が言ってきます。


「ソウデスネ。正当な対価ですから」

「では、交渉をさせて下さい」


 どこに交渉の余地があるのかわからない状態なのにそんなことを子供が言ってきます。


「あの後必死に思い出していたら、あの日の夢の事を思い出したんです!」

「夢?」

「ええ。おじさんがお祭りの日に闘技場で人をパッと消したのをっ!」

「っ!?」


 思わず目を大きく開いてしまうようなことを言ってきます。


「闘技場なんて行っていないし、別の人じゃないかな?」

「いえ、お祭りの日に外に抜け出してしっかりと見たので、間違いないです!」


 どういう理由かはわかりませんが、どうやら記憶が戻っている模様。

 こうなってくるともう一度魔法を掛けるしかないと諦めながらため息をつきます。


「もしそうだとして、それを私に言って安全だと?」

「その辺りはボクの勘で、大丈夫かと!」


 子供の勘にどこまでの信憑性があると思うと言いたいところですが、この子供はかなり危なっかしいことに変わりないわけで。


「……一応聞こうか。どういう交渉をするつもりで?」

「ここを何かあった時の避難所にさせて下さい」


 どんな事を言われるかと思って構えていたのですが、そんなに難しい事を言ってくることはなくて。


「避難所?……あまり人の家の事についてとやかく言うつもりはないけど、何かあるのか?」

「ちょっとだけウチは複雑でして。ボクのお母さんはもう死んでいて、ボクはお母さんの子供なんですが、今のお父さんとお母さんと血のつながりはなくて」

「なるほど。それは何とも」

「おじい様とおばあ様がいるうちはいいと思うのですが、二人共になぜか最近体調があまりよくないのもあって、何かあった時の避難所が欲しいという感じです」


 パッと見てわかる通りの子供ですが、なかなかに聡明なようで。


「色々と不自然に思えることは多かったけど、そうなってくると鍵が見つけられなかったのもそのせいかな?」

「そうなりますが厄介なことにおじさんが見つけてしまったので一気に肩身が狭くなりましたからね?」


 仕事めんどうなのでさくっと仕事をしただけなのに余計なことをしたと言われてしまうのは自分としても不本意ではあるのですが、まあこうなってくると仕方のない部分もあるわけで。


「わかった。何かあった時の避難所として来てもいい。これでいいか?」

「交渉成立です」


 そう言って袋に入っているお金を前に出してくるので中身を確認します。


「言っていた金額より多いんだが?」

「そうなのですか?さっき言った通りでメイドさんが用意していたものを奪ってきたので、間違えましたかね?」


 貰い過ぎても問題になるので正規の料金分だけを袋から貰って残りを渡します。


「こんなに安いんですか?」

「明朗会計でうちはやっているんでね」

「ほら、やっぱり信じて大丈夫な人じゃないですか。ね?ボクの目は間違っていないでしょう?」

「それを本人に言ってどうする。ちょっとお茶を出すから待っていろ」

「はーい」


 どういうからくりで魔法が解けたのかはわかりませんが、ココの記憶が残っていては面倒になるのでお茶に眠くなる魔法を付与するために自分の鍵を開けて付与魔法のロックを外します。


「待たせたな。お茶だ」

「あっつあつじゃないですか」

「お茶は熱いものだろうが」

「猫舌なんですよ……ふーふー」


 熱いお茶を頑張って冷ましながら飲み始めるとほどなくして魔法の効果が効いてきたみたいで、うとうととし始めます。

 数口お茶を飲んだ後にソファーに転がるように寝たのでもう一度記憶の改竄と封印をしようと魔法を掛けようと手を伸ばしたのですが、


「お母さん」


 夢を見ているであろう子供が寝言でそうこぼしながら開いていない目から涙を流します。


「はぁ、魔法を掛けるのも面倒だから放置でいいか」


 念の為という事で改竄した記憶だけはもう一度しっかりと改竄をして、今日の事は何もせずにお金を払いに来たことと少しだけ話をしたことは残したままにして少しだけここで寝かせる事に。

 自分の分のお茶を一口だけ飲んでみたのですが、適当に入れたお茶だったので結構な渋みがあって、


「苦ぇ」


 子供の癖によく飲んだなと思える味で思わず子供の方を見ると、静かなに寝息をたてたまま。

 そんな昼下がりをゆっくり過ごして、夕方まで来客するような客はなく。


「おい、そろそろいい時間だぞ」


 肩を少しだけ揺すりながら声を掛けます。



「んぁ?……あれ?ボクは?寝ていたの?」

「お金を払って、お茶を飲んだら疲れていたみたいで寝ていたから寝かせていたが、流石に夕方だから起こさせてもらったぞ?」

「えーっと、お金を払いにきたんだっけ?」

「そうだ。で折角だからとお茶を出したら飲んでいるうちに寝ていたぞ?」


 少しだけきょろきょろとして、何かを探っているみたいですがすぐに思い出す素振りはなく。何か大切な約束をしたのに理由を思い出せない(・・・・・・)のですが、大事な約束をしたことだけは覚えていて。


「何かあったら避難所としてここに来るんだろ?」

「そうでした。その時はよろしくお願いします」


 夕方近くなので人通りも少し増えている時間。

 それなりの大金を持っていると危ないと思うのが普通ですが、この世界は魔法がそこら中にある世界なので子供が大金を持っていても安全。

 ただ、何かあった時が嫌なので一応鍵の魔法を掛けておいて家に帰すことに。


「魔導書の鍵開けありがとうございました」

「はいはい。また何かあったらどうぞ」


 こんな感じにやっと面倒が帰って。

 あまりゆっくりできない今日が終わるかと思っていたのですが、思っている通りに事が進むわけもなく。

 ソレは夕食をもそもそと人委でゆっくり食べているときに、突然起こります。

 ただ、こっちは夕飯を食べているのですぐに動けるわけもなく。


「面倒な仕事のお金をもらったのに面倒が解決していない件について」


 自分で言葉にするとなにかちょっとした本のタイトルにも見えるような感じを受けますが、正直な話動きたいと思える感じではあまりない状態。

 どうしようかと考えて入るのですが、今回ばかりは特大な厄介な気がしてきたのでいつもの癖でウィンドウを開いてみると、色々な項目がなぜか(・・・)オンに変わっている状態で。


「なんでまた……、自動でオンに最近はなっていなかったのに……。あの子供がかかわる事は何か関係あるって事か……。はぁ、面倒だ」


 がっくりと肩を落として、仕方ない(・・・・)ので諦めて動くことに。

 ここで後回しにするともっと面倒なことになって戻ってくることは今まで(・・・)の経験でよく知っているのです。

 どうしようか少しだけ考えていても動かなければ何も始まらないと思っていると、一本の連絡が入ってきます。





「なんだ?」

「緊急のお仕事です」

「いつも、いつも、緊急じゃないか?」

「今日は超特急です」

「……はぁ。で、なに?」

「ギルバート家がゴタゴタしているので解決を頼みます」


 ギルバート家っていえばあの子供の家が確かそんなような名前だった気がします。


「解決って事は、色々とどうにかしろってことでいいのか?」

「そうなりますね。色々と訳あり(・・・)なので、手段は問いません」

それは助かる(・・・・・・)。終わったら連絡する」

「お願いします」


 あの子供に関してだけだと重い腰が上がりそうになかったのですが、仕事めんどうとなればやらざるを得ないわけで。

 いつも通りにもう一つ(・・・・)の仕事用のローブを羽織って現場に向かうとしましょうか。






「三回目だと新鮮さはないな」


 サクッと現場であるギルバート邸の前につくと、言い争う声が聞こえている状態。

 いきなり間に突入して喧嘩両成敗のような形で止める事を想像してみましたが、


「知らない人間が間にいきなり入ってきてもなぁ……いや、顔がバレてる分余計に問題か」


 昼間に鍵屋として家に一度行っているので顔を晒すわけにもいかず。

 入るべきかどうするべきかと悩んでいる間にも時間は過ぎていくばかり。

 どうしようか少し考えていても埒が明かないのでとりあえず門の鍵を魔法で開けて、勝手に家に入ることに。

 バレると問題という事はバレなければ大丈夫。という事で自分の存在感にロックを掛けて勝手に侵入。


「お邪魔しまーす」


 勿論返事はないのですが、周りの誰もがこちらに気が付くことはなく。

 スイスイと家の中を進んでいくのですが、何処に行けばいいのかわかっているわけでもなく。ただ、家の中で一番賑やかな場所が多分正解に違いはなく。

 音のする方へ足を進めていくと、たどり着いたのはあの子供の部屋の前。

 部屋の中からは言い争いが聞こえます。



「鍵屋さんにお金を支払いに行って何が悪かったの!?」

「あのお金は鍵屋さんに支払うものではなかったんだ」

「じゃあ何に!?」

「それはまだ言えない」

「お父様はそうやっていつも何か隠していてっ!!」


 その言葉がきっかけで父親から魔力が怒りに乗って出てきます。


「そう、色々とお父さんは隠し事があってね。あのお金はもっと大事なことに使うつもりだったんだよ」


 部屋の前に居るのでくぐもった感じにしか声は聞こえないのですが、それだと問題があるので鍵の掛かっていた部屋を勝手に開けて室内に入ります。

 ついでに面倒なことになりそうなので色々な項目を開いたままにしておきます。


「んー、これは余計なことを言いそうだから……えーっと」


 勝手に(・・・)部屋に入ってももちろん誰も気が付くことはないハズなのですが、


「あれ?」


 なぜか一つ視線がこちらに。


「あの金はなっ!」


 魔力を漏らしたまま父親が声を荒げて余計な事(・・・・)を言おうとしたのですが、言葉が続くことはなく。



 父親は何かを喚き散らすように言葉を発しているつもりみたいですが、その声は誰にも届くことはなく。

 出来の悪い腹話術の人形みたいに鬼のような形相で口をパクパクさせるだけ。

 そんな状況に最初に気が付いたのは視線をこちらに向けていたこの家の子供。


「おじさんが何でここに居るの?」

「……んー、なんで見えている?」

「だってそこの扉普通に開けて……」


 この子供にはどうやら鍵魔法をレジスト出来るみたいで思わず溜息が。

 ここまで何回も魔法をレジストされるとなれば、記憶の改竄をもう一度しても意味がない可能性の方が高い事も分かるのでさらに溜息。


「え、え?なんでそんなに溜息を?」

「いや、いい。とりあえずサクッと話を終わらせるためにも、ちょっとだけ目をつぶっていられるか?」

「目をつぶるの?」

「そうだ」

「でも、お父様が……」

「大丈夫。すぐ終わるから目を閉じて」


 そう言いながら、右手で頭をぽんぽんと撫でて、そのまま瞳を閉じるように下に下げて目を覆います。


「えーっと、どの項目がいいかなぁ……っと、この家の空気!いいのがあるな。これを開けて、付与魔法を開けて、眠りを付与して、ロックっと」


 カチャリと音がすると、バタバタと人が倒れます。

 その中でもやはりこの子供はこちらの魔法をしっかりとレジストした状態。


「もういいぞ。目を開けて」

「ん。って、お父様が…………寝ているの?」

「そうだな。一応確認するが、この時間帯に飯は誰も作っていないよな?」

「お夕飯はさっきおわったので後片付けはしているかもしれませんが、多分大丈夫だと思います」

「……念のため厨房はどっちか教えてもらえるか?」

「はーい」


 周りの人が全員倒れている状態にビビるかと思っていたのですが、どうやらその様子もなく子供の後を追いかけて厨房に。

 厨房はコックが居たのですが、そのまま寝ている状態で火は使っておらず、洗い物の最中だったみたいですが割れた皿はなく、水だけが出しっぱなしに。


「これなら問題ないな」

「これって何をしたの?」

「後で言うから、お爺さんとお婆さん所に連れて行ってくれ」

「はーい」


 やけに素直なのがちょっと怖い所ですが、虱潰しに探すつもりだった手間は省けるわけで。子供の案内のままに進むと角部屋に案内されます。


「ここ」

「ん」


 家の中でも当たり前のように鍵がかかっていたのですが、右手をすっと鍵の前にもってきて、ふっと魔力を流すと鍵の形に。


 カチャ


 鍵の掛かっていた部屋の扉が開くと、部屋のベッドに二人とも寝ている状態。

 子供を連れて部屋に入るとすぐに鍵をかけて、老人二人を起こさないといけないわけで。


「えーっと、部屋の空気の鍵を開けて、眠気覚ましを付与して、ロックと」


 カチャリと音がすると、寝ぼけながらも二人も目を開けます。


「おじい様っ、おばあ様っ!」


 思わず子供が声をあげますが一応想定内。

 あまり大きすぎる声だと家の人達が起きてしまいますが、このぐらいなら大丈夫なはず。


「おや、クリス?」


 先にしっかりと起きたのはお婆さんの方でおいでおいでと自分の近くに寄せると頭を撫でてあげています。


「急な眠気があったと思ったら、クリス?どうかしたのかい?」


 目の前に立っている自分には二人共気が付かない状態でそれを不思議に思ったのか子供がこちらを見てきます。


「あー、存在感を消したままだった」


 項目をオフからオンに戻すと、


「何奴っ!」


 今までの緩慢とした動きだったお爺さんがキビキビと警戒しながらこちらをにらみつけます。


「あー、争うつもりはないので少しお話させてもらってもいいですかね?」

「…………そのローブはもしや?」

「ええ。ソレ絡みです。落ち着いて話をさせてもらってもいいですかね?」


 両手を上げたままでも何も問題は無いのですが、一応争う意思がないことを示すためにあげている両手はそのままに声を掛けると、


「わかった」


 よくよくみればお婆さんの方も子供をしっかりと抱きかかえて何かから守るような動きをしていたみたい。


「上がこの家ゴタゴタしているから見てきて欲しいと言われまして。来たらゴタゴタしていたので静かにして貰ったのですが、何やら厄介そうだったので色々と起こる前に止めさせてもらいました」

「色々と起こる?」

「ええ。色々」


 その言葉に二人は何かに気が付いたみたいでさらに子供を守るようにこちらから遠ざけます。


「どうしましょう?私の方がでいじくった方がいいですかね?」

「そのローブも噂でしか聞いたことが無かったが、あんな話が本当なのか?」

「まあ、すべてがというと嘘でしょうけどある程度(・・・・)は」


 それを聞いた老人はごくりと唾を飲み込みます。


「一応話を今すぐに確認するので、少しだけ待てますかね?」

「あ、ああ」


 許可をもらったので空中に鍵を指してこの家のゴタゴタを確認してみることに。

 何をどうやったのかは別にいいでしょう?

 この家のゴタゴタの確認が終わったので、話を戻しましょう。


「把握したけど、どうしますかね?」

「…………」


 帰ってくるのは返事ではなく無言で。

こうなってくるとこっちとしても困ってしまいます。


ウチのゴタゴタって何ですか?」


 無言の中で最初に口を開いてくれたのは子供。


「少し君には早いんだが?」

「家の話ですから!」


 引き下がるつもりはなさそうで。


「あまり知りたくない話も多いと思うが、いいのか?」


 流石にその確認は本人にしても大丈夫と答えそうだったので老人達二人に投げると、少しだけ悩んでからゆっくりと縦に首を振ります。


「今日の昼間お前さんからも聞いたが、この家は少しばかり特殊だろう?お前さんのお父さんが良くない人に唆されて色々(・・)と悪い事をしようとしたみたいでな。流石にそれはまずいという事になったわけだ」

「もしかして、あのお金?」

「だろうな?」


 その言葉に子供は目を伏せて、しゅんとしてしまいます。


「で、俺が出張ることになったんだが、好きにしていいと言われていてな?」

「好きにしていいだと!?」


 激高するのはお爺さん。

 ただ、寝起き……というよりも近頃体調がよくないというそちらのせいか、すぐにてしまいます。


「まあ、大丈夫ですよ。好きにしたところで基本的にはみんな覚えて(・・・)いませんから」


 その言葉に二人は老夫婦の二人がビクリと肩を揺らします。


「一応上からお宅を含めて四家の色々な話は聞いているので理解も示せますが、この子(・・・)かなり危ないですよね?立場も何もかも」


 こちらの言葉に何も返せないみたいで凄い目つきでこちらを見てきます。

 ただ、別に何かしたいわけでもないのでそんな目で見られてもというのが正直なところで。


「どうにかできるのか?」

その為に来たんで(・・・・・・)


 こちらの一言で悲痛な表情を浮かべたかと思うと、目を伏せてしまったのはお婆さん。


何処まで変えます(・・・・・・・・)?」

任せる(・・・)


 そう言ったのはお爺さん。



 ただ、内心の事を言わせてもらうとマジそれ面倒臭い。っていうか、そこ(・・)を全て投げるなよと思わず言いたくなったのですが、この人達の気持ちが全く理解できないわけでもないのでこちらとしてもハイそうですかと簡単に返事を出来ないわけで。

 その心を汲んで、色々と考えないといけない話になって来るとほら、やっぱり面倒で。


一番楽なのは最初から(・・・・・・・・・・)ですけど?」


 とりあえず一番自分にとって無難(・・)というか簡単な選択肢を切ってみるのですが、思っていた通りで色よい返事を貰える感じはなく。

 多分ここから切っていく手札はどれもこれも簡単に頷けるものではないでしょう。

 ただ、こちら(・・・)としてもある程度妥協をしてもらわないと困る部分はあるわけで。お互い探り合いになりそうな空気をヒシヒシと感じ始めていたのですが、


「あの、ボクの事なんですよね?この話」


 間に入ってきたのは本人である子供。


「まあ、そうだね」

「話の内容はよく分からない(・・・・・・・)けど、大事なおじい様とおばあ様が悲しまない方法にして下さい」


 その目は真っすぐにこちらを見ていて、その言葉に思わず老夫婦の二人は息をのみます。

 そして誰も悲しまないで話が済む話ではない事も多分この子供は分かっているみたい。

 老夫婦二人が悲しまないという事は別の誰か(・・・・)が悲しむ事を許容するという事で。

 思っていた以上に子供の癖に肝が据わっているみたいなのでここは苦しませずにサクッと終わらせるべきでしょう。


「仕方ない、か」


 闘技場の時と一緒で魔力を開放すると、すぐに二人が反応します。


「ま、待てっ」

「いえ、待ちません」

「あ、あの、最後に……」

「それも、許しません」


 二人の言葉をすぐに遮って、右手に鍵を生成します。


 カチャ


 さっきと同じ手順で三人眠らせたつもりだったのですが、寝たのは二人だけ。レジストされることはもうわかっているので、


「出来れば目を閉じておけ」

「いえ、なんとなくですけど分かるんです(・・・・・・)。これが最後なんでしょう?」

「さあな」


 子供は寝ている二人をじっと見つめている状態。


 静かにしてくれているので説明はとりあえず後ですればいいという事で生成した鍵をつかって二人の記憶を改竄。


 カチャ


 色々と辻褄が合わなくなりそうな案件だったので後で広域の魔法を使う許可を取らないといけない気がしますが、とりあえず今はコレで十分なはず。


「終わったの?」

「ああ」

「…………そっか」


 凄く寂しそうにそれだけ子供は言うと俯きます。その目には涙が浮かんでいるのですが、必死にその涙をこぼさないように耐えているのが分かります。

 そんな子供にかける言葉は自分でもすぐに浮かばず。


「ボクはどうなるの?」

「とりあえず、約束通りにうちに避難するか?」

「……うん」


 昼間の約束がこんなに早く履行されることになるとは思っていませんでしたが、約束通りにとりあえずうちに避難してもらう事に。


「じゃ、行くぞ。ほら」


 どうにもこのままだと動きそうになかったので勝手にその手を掴んで引きます。


「ん」


 ぎゅっと強く握り返してきたときに今まで溜まっていた涙がそのままこぼれますが、それでもその涙をぬぐうことなく、足を止めることもなく、一緒にこの家を後にします。


 こんな感じでギルバート家のゴタゴタは人知れず静かに事が終わって。



 これでやっと平穏な日々に戻る…………ハズだったのですが…………。

 寧ろこれが、すべての始まり。







「よろしくね、おじさん」

「おじさんじゃない」

「んー、名前が分からないからおじさんとしか言えないんだけど」

「あー、キーファだ」

「キーファおじさん?」

「だからおじさんじゃない」

「わたしはクリス!」

「知ってる」

「なんで?」

「おじさんは色々と知っているんだよ」

「へー」

「で、坊やは多分、数日後から学校だ」

「むーーー!!だから坊やじゃないって」

「はいはい」

「ク・リ・ス!」

「クリスは数日後から学校な」

「もー!!!わかってないでしょ!!」

「もーでもむーでもないからな?」

「うー。お腹減った」

「夕飯は食べたんだろう?」

「怒られて食べてない」

「冷蔵庫には食材しかないぞ?」

「お腹減ったー」

「食いしん坊はいらないぞ?」

「普通の量で充分です!キーファおじさんは食べたの?」

「だからおじさんじゃない。言われてみるとまだだな」

「じゃあ、お願いします」

「……はいはい」



 こんな感じでウチに子供が一人避難してくることに。




 これが鍵屋の倅のキーファと付与術師クリス、二人の出会いであり始まりの話である。







いかがでしたでしょうか?


二人の出会い


まだ二人は出会ったばかりなのでお互いをよく知っていない状態。

知っていくと変わるものもあったり、知らないほうがいいままの事もあったり。

小さな驚きや楽しみをちりばめられる作品になるといいなぁと思っていたりします(笑)


二人の先が気になるという声があれば作者も頑張るかもしれませんので(笑)


忌憚のない感想どうぞよろしくお願いします<m__m>


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― 新着の感想 ―
[一言] まだ全然わからないけど、楽しみにします。 続きはいつかな?
[一言] 前作より飛んできたので、お夕飯はなにになるんだろう?という思考で終わりました(๑˃́ꇴ˂̀๑) その前は本(?)と鍵でいっぱいだったはずなのに…!
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