プロローグ ある少女の失恋
「他に好きな奴が出来たんだ。別れてくんね?」
そう、三ヶ月付き合った男子に切り出された。
言動はチャラく、でも一緒に居て楽しいと思える人だった。あたしは彼の側に居ても恥ずかしく無いように髪の毛を赤く染めたりおしゃれやメイクだって頑張ったり……。
でも、まるで当たり前の日常会話みたいに彼は切り出した。
「……なん……で?」
純粋な疑問、あたしの何が悪かったのか。
「いやだって、重いし」
重い?君の声を聞きたいと思うことが?一緒に居たいと思うことが?ただ、君に相応しいように頑張ることが?
「もっと気楽な関係で居たいのよ」
そう言って、彼はあたしの元から去っていった。
残ったのは馬鹿みたいな髪色をした女。
いつもつるんでた女友達や男友達はあたしの事を慰めてくれたけど、一度負った心の傷は癒える事なんて無かった。
ただ、飢えた。一度味わった誰かに愛されるっていう幸福、家族や友達なんかじゃない生涯を共にするかもしれないパートナーへの深い愛情を。
数日して私は気持ちを切り替える為に外に出た。日照りが強くて、学校はもう夏休み。
友達と一緒にある天才ピアニストのストリートピアノコンサートを見に行った。誰でも見れて足を止められる。聞いていた時はとても心地良い、落ち着くような音色。
あたしはそこで無差別爆破事件に巻き込まれ、ある人に助けられた。
ただの風景と視界の端から切り捨てていた……。
「大丈夫!?」
倒れて青空を見上げるあたしの視界全てに映った、翔君に。
きっと一生思い出す。どんな恋をしても、どんなに離れていたとしても、あたしは未練がましく脳裏に焼き付いた君を呼ぶ。
学校が始まって、ガーゼと包帯でボロボロな君の顔を覗き見て、罪悪感で胸が締め付けられて、それでもまるで星のように笑ってくれた、夕陽に焼ける放課後の教室の、あの一幕を。




