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異能ある君は爪を隠す  作者: 御誑団子
第一部 流星の君

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おまけ 年末年始大忙し

 十二月二十七日、退院。

 その足で壊された家を掃除。非番の父さんの部下の人達が手伝ってくれて何とかその日の内に終わった。




 翌日、父さんの壊されていない職場の仮眠室の一部屋を間借りし雫と新しい家が決まるまで生活、午後から僕の異能で空を飛んで彼女の住んでいた地図に載っていない村へ到着した。人工衛星でも見つけられない巧妙に隠されていたようで上から探していたら一生見つからなかったかも。

 彼女の祖父は既に埋葬されている。心当たりはあるっちゃあるけど……カインしか出来る時間がある奴は居ない。

 思っていたより死に対しては律儀な奴だと感じた。それを誰よりも望んでいるのはあいつなのかもしれないが。




 翌日、特記すること無し。夜遅くに新しい家が決まったと連絡が入ったことぐらいだ。




 そして今日、三十日。僕達は高級高層マンションの最上階に居た。

 白を基調とした柱、外が見れる壁は全面ガラス張り、キッチンはよく知らないけどヤバい。高級感すごい。テラスが庭だこれ。

「たっかー!でっかー!ひっろー!」

「どお?三億はする部屋だけど」

 僕は絶句していた。いや、家って言うよりリゾートホテルとかそっち方面の奴これ。

「プールある!プールあるよ翔!」

「わーほんとだーやばー」

「感情がバグって出力がフラットになってる!」

 なんで最上階なのに庭があるんですか?

「ここで可愛い女の子とエ○○(バキューン)すると気持ちいいと思うよ」

「雫の前だぞ次口走ったらぶん殴るからな」

 この部屋を紹介しているのはカンナギだ。本当に僕達の面倒をある程度見るつもりらしい。下世話な事はやめて。

「それと家具とかも用意しちゃうよ?」

「和室!」

「こっち!」

 タワーマンションの最上階ってこんなに広いの?貧乏暮らし長すぎて感覚が追い付かない。

「昔住んでた家より狭いけど快適~、ここ住む~」

「そういえば広かったデスネ、雫の実家」

 どうやって隠してたんですかねあの豪邸。

 しかも下は四室ぐらいあるけどここは四室作れるスペース全てを使っている。どんな規模だよ。

「こ、これ配達とかは大変……」

「宅配物専用のエレベーターあるよ」

 すっげ。

 逆に何が無いんだよ。

「さて、住む場所紹介も終わったし、やることチャッチャとやらないとね」

「やること?」

「……お前の髪の毛だよ」

「………………あ」

 そう言われて僕はボサボサで目が隠れるぐらい長い髪の毛に触れた。

「これに関してはボクを恨むなよ?雫ちゃんからの要望なんだから」

 ……あぁ、まさか。

「美容室行ってこい」




 どうも始めまして。私の名前はヨツミ、新人美容師、ジュニアスタイリスト!です!

 今日から男性のお客さんを相手させてもらうのですが、今日は女性の方が多く手が余っている状態です。

「やぁあ!まだ心の準備がァあ!」

 おや?なんだかお店の外が騒がしい。

「堪忍して髪の毛切りなさぁい!」

 バーンとお店の扉が開かれると凄く綺麗な金髪の女の子が黒髪の男の子をヘッドロックしながらダイナミック入店してきた。

「お客様ァ!?」

「予約してた翔です!この人!」

「あぁ……ヨツミちゃん!よろしく」

 店長ォ!?今押し付けましたよねぇ!?

 って言い返せるわけ無く。プルプル震える小動物みたいな男の子をヨツミは担当するのです。

「あー、こんにちは」

 席に座らせ私はもろもろの準備をしながら何とか話をする。

「今日はどういった髪型にされますか?」

「あ、えっと、僕、美容室とか初めてで……」

「あー、ですよねぇ……………………………………一緒に来られた方は彼女さんですか?」

「いいえまだ違います」

「そうですか………………………………………………」

 話しが続かなぁい!

 もうちょっと喋ってぇ……なんなら明るいあの子の方がまだやりやすいよう。

「あー、取り敢えず梳きますねぇ」

 髪を薄く濡らして櫛で梳くと男の子の顔が一瞬見える。

 ………………………………………………めっちゃ好みなんだけど。

 え?何?凄く可愛いじゃんこの子。てか目が青かったような……綺麗。んー、フフフ。初めてって言ってたっけ。

「あの、良ければおまかせしてみません?悪いようにはしませんので」

「えッ!?……まぁ、はい、お願いします」

 よし来たァ!

 私の趣味全開で綺麗にするぞー!おー!




 とまぁ、そんなことがありました。はい。目に髪の毛がかからないことと耳が出ていることに落ち着けません。

 ウルフカットに青と金のメッシュが入ったド派手な髪色なのに雫からは「落ち着いた色じゃん」と言われた。派手だよね?

 その後は雫と一緒に歩きながら買い物したり映画見たりしていた。下着売場に連れていかれた時は顔から火が出そうだったけど。まぁ、今日まで上はさらしで下はカンナギが持ってきた下着を着ていたから仕方ないんだけど。……なんか高級そうな呉服屋の方がまだ落ち着けた気がする。

 そんなこんなでただの散髪からイメチェンに変わり最終的にデートをして終わったその日、夜は同じベッドで寝ていたにも関わらず疲れすぎて双方何もなく寝てしまっていた。




 大晦日、父さん退院。タワマン最上階の部屋を見てカンナギに鬼電、電話先にケタケタ笑われながら説明を受ける。

 壊された方の家にあった金庫を置いた部屋が父さんの部屋となった。狭くて良いと言っていたけど希望の広さの部屋はクローゼットしかないんですが。

 夜はそば食べながら年越し、なぜか僕と雫の部屋に防音設備を取り付けるように言われる。もう付いてる。なんで?




 元旦、初詣に出掛ける。ウッキウキで出掛けて作法がなってないと神社で雫にめっちゃ叱られた。鳥居の端から礼をして入るとか知らなかったんです。

 途中で野暮だと気付いたのか徐々にやんわりとなって最終的にちょっと指摘する程度に収まった。

 ちなみにおみくじは吉でした。




 翌日、特に無し。娯楽に飢えていた雫が本読んだりテレビ見てたりしていた。なんか山のように積み上がった本が届いた。




 翌日、父さんもう職場復帰。カンナギに帰れと言われる。

 僕はそろそろ学校だなぁと思い至り、宿題に一切手を付けてないことを思い出す。大丈夫、夏休み最終日みたいな地獄にはなっていないと奮い立たせ急いで宿題を消費し始めた。十分地獄だった。




 そこから最終日まで何も変わらない。

 ご飯を作り掃除をし洗濯をして空いた時間に宿題をする。そして最終日に何とか間に合った。

「おつかれ」

「ありがとう」

 彼女の労いの言葉が骨身に染みる。

 どんな報酬よりも嬉しかった。

 明日は学校だ。早めに寝て早く起きて学校に行かないと。多分電車とか乗ってたら二時間はかかりそうだから。

 ……飛んでいったらもっと早いかな。でもあれ服の背中部分破れるからなぁ。

 これ着ていったらって言われて手渡された某童貞殺すセーター……。背に腹は変えられないかな。やめとこう。

 僕はチャッチャと準備しながら部屋を右往左往していると滅茶苦茶デカイテレビのモニターにニュースが映っていた。

『先月のクリスマスに聖夜の奇跡が……』

 へー、そんなことが。

『青い光と共にあの超人を……』

 …………ん?

『これがその人物の映像です』

 画面に映る尾を引いて空を飛ぶ青い星のような物体が。

 ………………え?

『調査によるとこの人物はこの建物に住んでいたと……』

 前に僕達が住んでいたアパートの映像が流れる。

 そういえばここセキュリティ凄いって話だったような。

『精鋭部隊や軍とも戦ってきた悪名高き【超人】を退けるヒーローのようなこの人物の情報をこれからもお待ちしています』

 僕の背に悪寒が走る。いや、これ……

「……まずくない?」

 そうして不安が後ろ髪を引っ張る新学期が始まるのでした。

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