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異能ある君は爪を隠す  作者: 御誑団子
第一部 流星の君

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Final Battle 【名称不明】

 瞬間、建物が砕ける音が轟いた。

 細いとは言わないが見た目と反した跳躍力で僕の居る空へと跳んできた。

「ッぐっ!」

 父さんを抱えたままじゃろくに戦闘できない。それどころか空翔ぶ事事態が初めて過ぎてまだちゃんと動けない。

「一回下に降りなさい」

「いや、でも」

「大丈夫だ。あまり、大人を甘く見るなよ」

 甘く見ているつもりはないけれど、父さんの言葉には確かな強さがあった。

 僕は空中で体勢を反転させ皆のところに戻る。

「んぁ!逃げんな!」

「うるさいよ、超人」

 遠くのビルで何かが光り、そして次の瞬間、空中を跳んでいた超人は狙撃された。

「……ッ!昼間の奴かぁ!」

 超長距離狙撃、カレンだ。

「邪魔ァすんなァッガッ!」

 止まった超人を空中で続け様に狙撃する。

 今のうちに僕は地上に降りて父を【烏】の大型装甲車両に腰掛けさせる。

「隊長!」

「かまうな、伝えた通りに、プランBに移行」

「はい!」

 しかし即座に超人が追い付いた。

「ダメだ、超人に銃弾は……」

 超人に対して一斉に弾丸が浴びせられる。

「……シューティングゲームはヌルいからあんまやってこなかったんだがなぁ」

 ただの人間には見分けることすらできない鉛玉の雨、放たれた弾丸はどう足掻こうと回避することはできない。ただ、放たれた弾丸を見切れる動体視力と反応できる身体能力と、負荷に耐えられる肉体があれば話しは違ってくる。

 超人は降る鉛玉の雨の間を駆け抜ける。全て躱しながら。

「はやッ!」

 縦横無尽、笑いながら弾幕を突破する姿はまるで遊んでいるようだった。

「まずは……」

「クっ……」

「てめぇだあ!」

 弾幕を突破して拳を握り振りかぶる。奴の視線の先にこの包囲網の指揮系統を担当している人が居た。

 この状況で誰を潰せば良いのかまで考えが及ぶ超人の思考速度が怖い。でも、僕は飛び出していた。

『動くな』

 瞬間、超人の体が何かに貫かれた。

「くそ……まだ……」

 二発目、超人の左足を撃ち抜き、膝から下を吹き飛ばす。これによって超人の機動力は失われた。

「……やっばぁ」

 また、超人に弾幕が張られる。次は避けられない。

 超人はうずくまり腕で顔を守る。的を出来るだけ小さくして当たらないようにして恐らくは急所に当たる頭部、眼球を守っている。

 一斉に放たれた弾丸はそのほぼ全てが直撃する。だけどオレンジ色の軌跡は全て曲がっていた。

 決定打にならない。あの硬化した皮膚を貫通しない。ただ、一つの攻撃手段を除いて。

 これは超人のミスだ。僕を追いかけるよりもビルの上にいたカレンを仕留めなかった。いや、仕留めけれなかった奴の。

 ほぼ真上からの曲射、三発目は右肩を撃ち抜き腕を持っていった。

「超人の弱点は関節だ」

「関節?」

 父さんがゆっくりと語り出す。

「このブレードでも奴の皮膚はちゃんと切り裂けなかった。だが、曲がる関節部分は太ももや腹部ほど固くはない。そこだけならブレードでも斬れるし、対物ライフルなら貫ける」

 鎧と同じ、全身を覆っても鎧を装着出来ない箇所がある。そこが超人の弱点だった。

 でも、僕の胸中にはざわめきがある。何か、とんでもないことを見落としているような、そんな気がして。

 四発目、残った片腕がとんだ。元に戻り始めている足と腕を含めてももう超人を守るものは無くなっていた。

「でも、心臓刺しても死ななかったんだよね?」

「一時的には無効化できた。なら、再生に時間がかかる致命傷を絶え間なく浴びせ続ければ……」

 左胸、心臓部を背中から弾丸が入る。そして、破裂するように超人の胸が吹き飛んだ。

 本来ならば対物ライフルの弾丸として製作されていない銃弾、ダムダム弾。効率的に対象の体組織を破壊する非人道的兵器、それを対超人用の切り札として使ったんだ。

 弾幕が止む、静寂が訪れる。

「……確認!」

 銃口は超人に向けたまま近寄り、一時的にでも無力化できたことを確認する。

 同時に装甲車両の後部が開き超人を封じるための巨大な装置が露になる。

 超巨大な拷問道具に見えた。鋼鉄の処女のような代物に。

「移動!」

 数名が超人を抱え、その拷問道具のような装置に超人を拘束した。

 拘束が終わると装置が閉じ、無力化が終わった。

 ……終わったんだ。

「………………違う」

 いや、僕は何を勘違いしていたんだ?この状況こそまずいだろう。なんで今更気がついた!

「ダメだ父さん今すぐ奴を出して!」

 奴の執念を、僕は解っていたのに。




 痛い。

 胸が痛い。足が痛い。頭も痛い。久しく感じていなかった感覚、とても新鮮だ。心地良い。

 心臓が動いていないせいで頭が働かない。手足が動かない。生きていない。でも、静かで良い。

 なんだか久しぶりにゆっくり寝れそうだ。

「……でも、まだ、だよなぁ」

 そうだ。俺様はまだ奴と戦っていない。雨宮翔、異能を覚醒させたばかりのお前と。

 冷たい体が熱を生む。胸の奥底、心臓よりも速く作り直したもう一つの心臓。この熱を、ずっと待ち望んでいた。

 再生した手足が切り落とされる。作り直した心臓が何度も何度も潰され、目は、耳は、常に壊される。効率的に人を殺し続けるこの機械は恐らく俺様への最終兵器として持ち出したんだろうな。

 ハ、ハハ、ハハハハハ、嘗めんなよ。俺様はまだ、死んでねぇぞお!

 もう一つの心臓を回す。心臓と言うより炉心に近いこの臓器を始動させる。膨大な量の熱が機械を溶かしこの拘束具から逃れた。

 俺様は、さらに進化する。何度でも、何度でも、この痛み、この静けさ、この冷たさが包む度に強くなるんだよ!

「雨宮ァ!」

 突破する。この機械の檻を壊して外に……。

「外?」

 いや、遥か上空だ。なんでこんな場所に。

「お早いお目覚めだな」

 俺様は空を見上げる。そこに、奴が居た。

「よぉ、雨宮翔」

 無数のワイヤーで吊り上げ、自身が覚醒させた異能を行使して装甲車両ごと空中に運んだのか。

「寝惚け眼かもしれないけど、早速死んでくれ」

 奴はワイヤーを手解き装甲車を地面に向けて落とす。だが、その程度なら簡単に脱出を……。

「あぐ」

 装甲車があり得ない速度で落下し始める。違う、押してんのか!

「この」

 これじゃあ隕石じゃねぇか!

 でも、ああ!こういうのだ!こういうの待ってたんだ!

 俺様は一旦装甲車の中に戻り上を目掛けて破壊しながら突き進み、突破する。

「ホラもっとなんかやってみろよ!」

「うる、せぇ!」

 装甲車がアスファルトの道路に直撃し地面を割った。

「いっつぁ」

 直前に脱出できたが頭を強く打った。まぁ、この程度どうってことはないんだが、思っていた以上だった。それだけは何物にも変えがてぇ。

 奴は、空に浮いていた。青白い翼を携えて。

「勝負だァ!雨宮翔ゥ!」

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