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異能ある君は爪を隠す  作者: 御誑団子
第一部 流星の君
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プロローグ

 今から三十年前の西暦二千二十五年、最初の異能者が発見された。

 能力は瞬間移動。彼は齢四歳という年齢で素足にボロボロの服で夜の交番に現れたという。

 警察が彼の両親を取り調べると子供達を監禁し虐待している事が発覚した。しかし、その子の両親は少年に対して酷く怯えていた。

 事実、全ての取り締まりを終え、子供と対面させた時、両親は罵詈雑言と暴言を浴びせ、

「死ね」

「化け物」

「お前なんて産まなければ良かった」

 その時、少年は保護してくれた研究者の一人から貰ったおもちゃを母親の胎内に転移させた。

 響く絶叫、青ざめる父親、倒れる母親。その光景を見て、少年は笑っていた。

 真実はこう。両親は日々不可解な現象が起こる少年を気味悪がり距離を置くようになった。対して少年はその不可解な現象を自らが起こしている事を自覚し、積極的に異常現象を引き起こし、その行動は次第に過激になった。

 いつの間にか立場は逆転し、少年の方こそが両親を虐待していたのだ。

 その後、少年のために異能の研究と歪んでしまった人格の矯正の為施設が作られた。

 真摯に、最初は友好的で協力的だった。そう、途中までは。

 ある日、少年は厳重に施錠された部屋から異能を使って飛び出した。

 そもそもその異能は少年が外に出たいと、閉じ込められたくないと願った事で発現した異能、何の不自由もなく幸福であったとしても閉塞感や窮屈だと思ったその時点で異能によって歪んだ精神は悲鳴をあげる。

 ただ唯一の救い、それは誰も殺さずに施設を飛び出した事ぐらいだろう。以降、少年の動向を政府は見守るだけとなった。




 その事件以来、各地各国で異能者が発見され出した。ある者は物体を浮かし、ある者は炎を生み、ある者は動物と会話できた。

 人類の進化、もしくは人類の分岐点、少なくとも人は変わり始めた。

 ありとあらゆる産業が進化し世界の常識が変わっていき始めた二十年代、その先の未来(フューチャー)風景(ビジョン)において体に機械を埋め込み、あらゆる工業を機械が代替わりした世界であったとしても、人々の中から生まれる異能者の居場所は無かった。

 それが人類の選択だった。差別、迫害、排除、見えない凶器を持つ彼ら彼女らを良しとしなかった。

 理由?恐ろしいから以外に何かあるだろうか……。

 とにもかくにも、三十年経った西暦二千五十五年において異能者の数は日本だけで十万を超え、増加傾向にある。それは世界各国も例外ではない。

 普通の人間と同じように人権を与える国もあれば特区を作り異能者とそれ以外を隔てる国、人権を奪い兵器として育てる国、様々だ。

 日本は、異能者とそれ以外の人権に差は無い。世界最初の異能者が今の今まで努力してきた結果だろう。それでも迫害は免れなかった。それはそうだ。異能とは見えない凶器なのだから、凶器を持っているかもしれない、という疑念は恐怖を生むのだから。それでも、異能者は日常に潜み、自らの凶器が人を傷付けないように頑張っている。

 けれどその年のクリスマスに人類は再びの分岐点に差し掛かった。

 人類、というのは語弊があるな。一人の少年と世界の分岐点。その余波が人類と未来に影響を与えるだけだ。

 少年の名前は雨宮翔(あまみやかける)、どこにでもいる高校一年生の陰気を放つ少年だ。

 だが、その日を皮切りに彼の出会いとそれからの未来は大きく変わる。

 それが幸福かどうかは神のみぞ知る。もしくは、未来の彼だけが。

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