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無明の昇華  作者: 面映唯
第一章
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 最早、流れ作業で右にスワイプしていた。品定めしたところで両想いになれる確率は低い。ここは田舎だ。関東のような人口が密集している都会ではない。ただでさえ人口の少ない田舎、ましてや、出会い系やテレクラのイメージが払拭し切れていない。中には割り切って使っている者もいるだろうが、世間的な目で見ればあまり他言できるものではない。要するに、周りで使用している人物が圧倒的に少ない。


 マッチングアプリに登録してから二週間が過ぎた。望月(もちづき)は未だにスワイプし続けていた。プロフィール欄に表示された相手との距離。始めこそ近かったものの、日が経つにつれて、三十キロ、四十キロ、五十、六十と増していった。出会えるような距離を考慮してスワイプしていた望月も、さすがに気にしている場合ではないと思った。好みの顔を探している場合ではないと気づいた。二十代前半だけに絞っている場合ではないと気づいた。距離、顔、年齢の三つに当て嵌まる相手はそうそういなかった。一日に十人もいない。十人どころかいない日もあった。


 その三つの項目に当て嵌まりつつ、望月の選んだ相手が自分のことを右にスワイプする確率。加えて望月の使用しているのが田舎だということを考慮すると、マッチする確率が低いことは明らかだった。


 望月は頭を抱えた。


 そして誰彼構わず右にスワイプした。


 登録した初日が懐かしかった。女性に縁のない生活を送ってきていた望月にとって、多様な女性のプロフィール写真を見るのは楽しかった。顔の整った人格者にでもなった気分で取捨選択していた初日が懐かしい。


 しかし、長くは続かない。


 望月は右スワイプをやめた。画面には「あなたの周りに新しい人がいません」と表示されていた。

というのも、調べてみると、一度左にスワイプした人はそれ以降表示されない仕組みになっていた。だから、気が変わったからこの間左にスワイプした人を今度は右にスワイプしておこう、といったことができないのだ。その事実に望月が気づいたのはマッチングアプリに登録してから三日後のことだった。そんなことも知らずに望月はせっせと左にスワイプしていた。美男子ではないにも関わらず一丁前に選別していたというわけだ。冷静になって鏡の前に立てばはっきりした。どの面下げて人様を選別してたんだって話だった。


 そろそろ潮時か……。マッチングアプリに登録したときの好奇心は、今では羞恥心に変わっていた。そう思っていたときだった。望月は目を疑った。画面上にポップアップが表示される。急いでメッセージ画面に移動する。


 画面を見て思わず笑ってしまった。


「うおー―、マジでーー!」


 画面には、かわいらしい女性の顔が映っていた。


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