第1話 「不安に始まり安心で眠る」
あなたは恐竜が好きですか?私は好きですよ。作者が好きな恐竜はカルノタウルスなのです。
そんな作者が描く都合によってにわかな恐竜世界のお話。
ワクワクしてみませんか?良かったら感想をください。
突然のことだった。僕は新調した心地よいベッドで眠っていたはずなのに。
本当に突然のことだった。ベッドから砂を触る感覚を感じたのは。
目覚めた僕は驚愕する。家で寝ていたはずだったのに…屋根がないんだ。当然だ。そこは誰もいない潮風香る美しき海岸だったのだから。さらに反対を見れば無駄に生い茂ったジャングルのオマケ付きさ。
なにか考えようとしたがやっぱり頭の中は真っ白だった。何も思い浮かばないんだ。考えられないんだ。
なぜ僕はここにいる?
なぜ僕は服を着ていない?
なぜ僕は何も持っていない?
なぜ僕はこんな目にあっている?
いや!なぜこんな目に遭わなければならないんだ!
咄嗟に怒りが込み上げた。だが、案外すぐに治まった。怒っても何も起こらないとすぐにわかったから。
落ち着け、とりあえずなぜこうなったかは考えても埒が明かない。まず考えるべきは…いや、やめよう。考えることが思いつくまでとりあえず歩こう。気分転換にもなる。よし…深呼吸だ。
まぁ服なしと言っても腰巻みたいなやつはある。さすがに神様も僕のプライバシーは守ってくれてるみたいだね…。
そして僕は歩き始めた。なぎさを歩くのも案外いいものだ。昔、良く夏になると家族と海に来ていたから懐かしくも感じる。潮風が心地いい、足元の海水に湿った砂が気持ちいい。
景色も澄んでいてゴミ1つすら落ちていない。
…うん?「ゴミが1つも?」
1つの疑問が脳内に過った感じがした。そうだ。日本の海なら大抵ゴミが捨ててあるはずだ。小さい頃、それで足を怪我した覚えがあるのを思い出した。
それはさておき、肝心なのは「この海岸が異常なほど綺麗だということ」だ。
ならばここは日本じゃない…?海外の島か?…いや考えすぎだ…僕…。沖縄とか行けばこういう島あったりするだろう?…多分。
今やっと考えられることを思いついたと思えばこれまた奇妙な疑問だ。
あぁ…なんだか考えるのが面倒くさくなってきたな…
「ぐぅぅぅうう…」
そう思った途端、僕の腹の音が容赦なく鳴った。ホント誰もいなくてよかった。恥ずかしいくらい鳴ったからな…。
あ、考えるのを面倒くさがるのは前言撤回しよう。まずは腹ごしらえをどうするか考えよう。
出来れば肉…難しく言えば動物性タンパク質が欲しいところ。だが僕は力持ちでなければ足も早くない平均男性だ。狩りは向いてないかも…。
う〜ん…
ダメだ。思いつかないし、また歩こう。えっ?罠?僕不器用だしめんどくさいのヤダも〜ん。
そう思った僕は次はジャングルへ向かった。動物性タンパク質がなくても木の実から別の栄養素が取れればなんとかなると思ったんだ。嬉しいことに湧き水も見つけたし、しばらく持ちそうだ。奥へ奥へと進み、急な山道を超えて、降りてゆくと…。
「わっ!草原だ!」
思わず叫んだ。途中で偶然見つけた結構美味い木の実をかじりながら。
日はもう沈む寸前。駆け下りた先には…。
目を疑う光景があった。
そこに居たのは幼き頃図鑑で見たことがある巨大な爬虫類の群れ。
目の前を動く頭の後ろに長いトサカを持つあのトカゲ、他にもいる!ハンマーのようなしっぽを兼ね備えたトゲトゲの四足歩行のトカゲ、ダチョウのようにスリムで高い声で鳴く二足歩行のトカゲ!四足歩行と二足歩行を使い分ける少しスリムなトカゲもいる!
そうだ。僕は確信した。まるで牧場の様なあの独特な匂いと。目で見てわかる圧倒的質感!
彼らは古代の竜、「恐竜」なんだと!!
「す、凄い…!パラサウロロフスにアンキロサウルス、ガリミムスやマイアサウラまでいる!」
思わず口に出してしまった。夢じゃないか!?自分を疑った。だから引っぱたくがちゃんと痛い。夢じゃないんだ!
すると高速で上空をヒラリと飛来した鳥のような生物を見てまた叫んだ。
「プテラノドンまで!!」
興奮が暫く収まらなかった。どうやら僕は恐竜達の村に来たようだ。薄暗くなっていく中、巣の中に卵もあり、子供が孵化する様子も見ることが出来た。
「可愛い!」
キューキューとなくその様に心打たれた僕だった。幸いにも彼らは温厚で近づいても怒ったり襲ったりはしなかった。むしろ友好的で親のマイアサウラからは木の実を貰ったりした。
「ありがとう!さすが「良い母親恐竜」だね!」
「ブォオ…」
心做しか、返事してくれたような感じがした。手を振り、マイアサウラの親子に別れを告げるとジメジメした湿地帯へ足を踏み入れた。
日はもうないのに蒸し暑い場所に来てしまった僕は変な行動力を発揮する自分を少し憎んだ。
そして沼に足を取られながらもなんとか進んだ僕に待ち受けていたのは…。
絶望だった。
『ダバァンッ!』
沼を振り切った僕の前に巨大な三爪の足。勢いよく踏み込んだのか泥が飛び散り僕にかかった。
ああ…見たくない、見たくないよ絶対に。上なんか見たくない。
とりあえず願った。何に願ったのか?自分でも分からないんだ。恐怖ゆえに。
だがある意味これが最後かもしれない。だから仕方なく見ることにするが顔がどうしてもゆっくりしか上がらない。怖い、どうなるか大体予想がつくからその結果に怯えてしまう。
過呼吸になりながらも僕はようやく上を見ることが出来た。
予感はガッツリ的中した。そこに居たの雄々しく、そして強大な巨体を持つ二本足のトカゲ。小さな手に殺されそうな程に威圧してくる黄色い眼差し、何よりも目立たったのは歪にも見え、美しくも見える鋭利に並ぶ凶器的な牙だ。
コイツはやばい、本能的に感じたのがわかる。コイツは…コイツは…!
肉食恐竜だ…!!全長は…多分8~10mはあるぞ…!体高は…4mあるかないか…?
ティラノサウルスよりは小さめ…?だけどカルノタウルスよりは大きい…?何だこの肉食恐竜は…?
いやいや!こんな一瞬で身体測定している場合じゃない!あぁ悪い癖だ!
しかも周りを見て更に驚愕した!奥に何匹もいるし、巣のような穴がいくつもある…さらに丸い何かまであるぞ…。そうだ!あれは卵…!
ああぁ…僕はなんて愚かなんだ。今僕はこの肉食恐竜の領域に入ってしまったんだ…。…うん…?でも待てよ?今目の前にいる恐竜…僕に気づいていないっぽい…?しかも幸い、僕は視界に入っていない様子だ。辺りを見渡してる…。そうだ!泥だ!泥を塗って臭いを消すんだ!この手の恐竜は目が悪い代わりに鼻と耳が利く!
ならば泥塗って身を隠せば―――――
「「グロォオオオオオオオオオッ!!!」」
何が起こったか?ことを起こす前に肉食恐竜は吠えたんだ…。僕はその時、気を失うという感覚は覚えていた。
そんなの覚えられないって?違うんだ。だって…―――――
「「「「ガロロォオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」」
もっと大きな咆哮が僕を吹き飛ばし、強制的に目覚めさせたんだ!重厚感に溢れ、圧倒的威嚇感を実感させる強い雄叫びだった。
その咆哮に押された肉食恐竜は咆哮が聞こえた場所に振り向いた!
その方向には…!!
あまりにも巨大な図体に見事な一本角を頭に生やした見たことも無い肉食恐竜が仲間であろう僕が見つけた恐竜を数匹まとめて食らいつき丸呑みしていたんだ!!!そしてあの赤い眼光は誰もが恐怖した事だろう。食らいつかれた肉食恐竜の仲間達は応戦しようと吠えている!
「「グロァアアアアアア!!」」
目の前にいた肉食恐竜はその巨大な肉食恐竜に向かって走っていった。
今だ!僕も反対方向に向かって走っていった!!バレてはいない!ビビりながら一心不乱にダッシュした!!泥に足を取られながらも懸命に!
後ろからは僕を襲った肉食恐竜の断末魔らしき声が聞こえたが僕は走った!骨が折れたり砕けたような音、肉が裂けて飛び散るような生々しくて恐ろしい音が聞こえても走って走って走って…走りまくった!息も上がるし脚も痛いが走れるだけ走った!!振り向かないどころか前すら見ず、ただただ走り続ける!
どれだけ走っただろうか?だがだいぶあの地獄のような現場からは離れたはずだ。僕は逃げ込んだジャングルの中でついに倒れた。身体が悲鳴をあげているのを久々に実感したんだ。
倒れ、身体が休まっていく少しだけ心地よい感覚を感じながら僕はある事に気づいた。それは僕の手元に見知らぬすべすべとした心地よい感触があることだ。僕は疲れながらもそれを見てまた驚愕した。
そこにはあったのは約25cmほどの可愛らしい青い卵だったんだ!周りを見ても同じものは無い。恐らく逃げ出す時に走った時無意識に持っていたのかも?
でもラッキーだ。この卵ならある程度栄養を―――――
『パキッ…』
邪な考えが災いしたのか、大体何があったか想像出来る何かが割れる音がした。
そうだ。卵からだ。
『パキッ…パキパキパキ…』
ゆっくりと割れていく青い卵、僕は何も言わず、何もせずそれを見守った。
そして可愛らしい足を出し、頭でっかちな二足歩行の恐竜が生まれた。
あぁやっぱりかと僕は思った。その恐竜は僕がさっき見た肉食恐竜と同じ種類だ。
そのチビは僕を見てから寄り添って可愛い頭を僕に向かって優しく擦り付ける。
「あぁ、そういう事か…」
僕はなぜこのチビがこうしてくるのか理解して抱きしめ、月明かりが照らされる夜のジャングルの中、そのまま眠りについた…。
僕は眠りに落ちる前の心地よい感覚を感じながら安心した。
本当に良かった。だって暫くは寂しい思いをしなくて済みそうだから…。
日記はまだ続いている…。
最初は彼とチビの出会い。眠りについた彼らが目覚めたとき、どんなことが起きるのでしょう?どんな困難に直面するだろう?
どうぞ第2話が更新されましたら彼らを応援してあげてください。
読んでくださりありがとうございました。
日記はまだ続いている。