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 読書感想文

作者: ゆう

私はこの「グラスホッパー」という物語には原作の小説よりも先に映画化された方に出会いました。映画は私の好きなアイドルが初めて出たものでPG-12のすこしグロテスクなものでした。そのアイドルは殺し屋の「蝉」と言う役で、人を殺しているはずなのにそこまでそこまでグロテスクに感じませんでした。映画がきっかけで原作の小説にも興味がわき、この小説を購入しました。私が映画を見たのは公開されてから時間が立っていたので、映画の原作である小説も見つけるのに時間がかかりました。


この小説の物語には、「鈴木」、「鯨」、「蝉」の三人の視点で進みます。妻を轢き逃げした男、寺原に復讐するために教師を辞め、裏社会で寺原の父親が経営する会社フロイラインに「鈴木」は入社します。ですが、押し屋という殺し屋に寺原を殺されてしまいます。上司の命令で押し屋を追うことに。一方、自殺専門の殺し屋、「鯨」はあるホテルで政治家の秘書を自殺させるときに、押し屋の犯行を目撃します。過去に自分の獲物を押し屋に殺されたことを清算しようと押し屋を追います。また、ナイフ使いの若者、「蝉」は岩西という男の元で殺し屋をしており、蝉は岩西を嫌っており岩西から離れるために押し屋を追います。三人がそれぞれ別の理由で押し屋を追うことで物語は展開していきます。


この小説は映画でも感じたようにグロテスクな内容を扱っているのにもかかわらず、あまりグロテスクには感じませんでした。私が読んだだけではなぜそう感じるのかはわかりませんでしたが、小説の最後についている解説を読んで納得がいきました。この解説は杉江松恋という文芸評論家の人が書いています。その解説で共感したところを主に私の考えを足して書いていきたいと思います。なのでこの感想文はもしかしたら小説についてではなく解説についての感想文になってしまうかもしれません。


一つ目は、先程も上げたグロテスクな内容がグロテスクに感じないことについてです。解説にはこう書いてあります。「人間を『死ぬ』のではなく『破壊』される対象として描いている。」私はこの文を読んだときになぜグロテスクに感じなかったのかがわかりました。人が殺されることを生命を奪われることに重きをおいているからグロテスクに感じるのだと思います。ですが、物が壊れていくことをグロテスクに感じることはありません。確かに人が壊された結果死んでしまっているので人によって感じ方は変わると思いますが、私はグロテスクに感じませんでした。グラスホッパーでは人が死ぬときその瞬間をカメラでコマ撮りしたかのように詳しく書かれています。どこに何が起こったのかが詳しくわかるようになっているので、人が死ぬのではなく壊れたように感じるのだと思います。


二つ目は、伏線のことについてです。解説には「こうした具合に読者に『答え』をまず見せ、暗示を与えた上で次の場面を始める」と書いてあります。私は初めて読んだときこのことに気づかなかったのですが、解説を見たあとに、何度も読んでいるうちにところどころに散りばめられているのがわかりました。グラスホッパーはお気に入りの小説の中の一つなので、5回は絶対読んでいると思います。それでもまだ全ては見つけてられていないかもしれません。この小説に多く出てくる伏線は黒と黄色の色の組み合わせです。この小説には二人で一つの「スズメバチ」と呼ばれている殺し屋が序盤に登場します。この二人はこの物語の世界では結構大きなことをしますがそれはぜひ自分で読んで確認してください。このスズメバチになぞらえて黒と黄色の警戒色が、危険が間近に迫っていることを示しています。黒と黄色が出てきたら人が死んだりします。他にも伏線は色々散りばめられていますが、読んで自分で探してみてください。


三つ目は、解説には関係ないことですが私が読んでいて感じたことです。この小説は一人一人の物語があって、それがどこかで交差する仕組みになっています。私は、この本を読むまで一人の視点で進んでいくものしか読んだことがなかったので新鮮でした。視点が短いスパンで変わるので、すぐ集中力が切れてしまって本を読むのが苦手な人には向いているかもしれません。一人の視点ではなく、複数の視点で話が進んでいくので、この登場人物がこう感じているけれど、他の登場人物は違う感じ方をしていたりして、性格の違いなどが出ていて感じ方の違いに重きを置いて読んでみるのも面白いと思います。


私はこの本を読んで表現力はとても大切で物語を面白くする大切なポイントだということがよくわかりました。表現力がなければ、人が壊れていく様子を説明するのは難しいと思うし、視点の違いによって性格の違いを表すのも難しいと思います。ぜひこの本を読んでみてください。

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