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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
肆頁:相互成長の刻

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98.魔法士、魔所の奥に到達する


 レシスとなまじあんなことがあったせいか、彼女も俺も顔を赤くしたまま部屋を出ることになってしまった。とはいえ、ここが魔所なる場所に違いなく危険なことも変わりない。


 気を引き締めて行かなければ。


「あぁ、そうだ。リウとレッテ、ルールイ。それとレシス。俺のそばに集まってくれないかな?」

 

 せっかく苦労してコピー出来た防御魔法だ。早速使っておこう。


「にぁ?」

「ヌシさま、何です?」

「もうご褒美を頂けますの?」

「あぅぅ……エンジさん、まさか良からぬ欲が出ちゃったんですか? それでしたら、ぜひぜひわたしを~」


 レシスだけはまだ興奮状態にあるようだが、気にしないようにしよう。


「みんなが協力してくれたおかげで覚えることが出来た魔法。それを今ここで使おうと思ってね」

「にぅにぅ! 楽しみだにぁ」

「亀魔獣から得られた魔法なのです~?」

「あの敵は随分と硬すぎましたわね」

「ほえ? わたし、何にもしていませんよぉ?」

「いや、レシス。君は敵に体当た……突っ込んでくれただろ? おかげで得られたんだ」

「なるほど、なるほど~」


 正確にはレシスを投げ飛ばして、彼女が持つスキルに賭けてみた、が正しい。


「……そばに来てと言ったけど、くっつかなくていいからね?」


 そうは言ったが、彼女たちは俺に寄り添うようにくっついている。


 トルタルを編集。

 魔法攻撃をして来た敵のバフを解除。範囲内の仲間に、得られたバフを付与。


 物理防御力は個人に依存。時間の経過または、一定量以上のダメージで解消。

 ……こんなところか。


 今までそれなりに魔法をコピーしては来たが、仲間たちにも効果が表れるような魔法は覚えていなかったし、これは今後重宝しそうだ。


 レシスだけこの魔法の効果そのものが不要な気もするが、"絶対防御"も無敵でも無いだろうし、一緒にかけておけば安心だろう。


『トルタルを発動』

 

 今までの攻撃魔法は全て無詠唱、もしくは自分の頭にイメージを浮かべるだけで発動出来た。

 しかし全体防御系魔法は声に出さなければ彼女たちが気付けない。


 これも後で高度な編集が出来るように魔法そのものを成長させる必要がありそうだ。


「にぁにぁ!? リウの体がピカピカにぁ~! にぅ~キレイ~」

「耳も光ってるです!! これがヌシさまの~」


 獣であるリウとレッテには、毎回喜ばれそうな光の魔法のようだ。

 ルールイは元々コウモリ族として暗闇に住んでいたせいか、黙って目を閉じている。


「ほええ~エンジさん! これって……光の属性石に似てませんか?」

「んん? あぁ、まぁ……属性石の宝石を割った時に似てるかな」

「ふむむ~! 体がぽかぽか陽気なのは、エンジさんの愛情が含まれているからなんですかねぇ?」

「気のせいだよ」

「でもでもでも、この魔法は温かさを感じますよ」

「小娘はどこまで妄想力がお強いのかしらね……アルジさまがお困りになっていますわ!」

「えぇぇ!? そ、そんなはずは~」

「全く持って理解出来ませんわ。あなたは人間ですの!? そこの獣ならいざ知らず――」

 

 果たしてこの魔法自体に体温を上げる効果があるのかは不明だ。レシスには既に似たスキルがあるだけに、妄想とは言い切れない所がある。


 それはともかく、


「ルールイ。その辺でやめとこうか? レシスも」


「ご、ごめんなさい~」

「は、はいい~」


 相性の悪さを改善出来そうに無いのは仕方が無いとして。

 そろそろラーウス魔所の最奥部に着く。

 

 恐らくあの魔獣がここのボスのようなものだっただろうし、魔力温泉も魔獣を倒したモノへの褒美のようなものだったに違いない。


 最奥部に着いたとしても強力な魔法をコピーする期待は持てそうにないが、ここまでは魔所の思惑通りに事が進んでいるといったところか。


「アルジさま。この先からは、ほとんど得られるものが無いと思われますわ」

「ルールイは分かるの?」

「わたくし、こう見えても霧や(もや)、結界のようなものの先を探るスキルがありますの。アルジさまもあの妖精の助けが無ければ、わたくしの結界の中でずっと過ごしていたはずですのよ?」

「あっ……そ、そうだね」

「ですので、おびやかしで魔所と名付けられたのかもしれませんが、大したものはありませんわ」


 ルールイの言う通り、敵も仕掛けも見当たらない最奥部にたどり着いた。


 ここに宝箱のようなものでもあれば何かに期待も出来たしアースキンに土産でも持って行けたが、見事に何も無い行き止まりの壁が、目の前に見えている。


「……何も無いんですねぇ。エンジさんの望むモノは魔法だったんじゃないですか?」

「ま、まぁ」


 それほど数多くコピーを得られてはいないが、レシスから跳ね返って来た魔法はコピー出来た。

 そして魔獣の全体防御魔法。


 ラーウス魔所の中の寺院、行き着いた最奥部。

 ここへはアースキンの協力が必要だった仕掛けの方が厄介で、面倒な強敵はほとんどいなかった。


 しかし、こんなものなのだろうか。

 魔法をコピーしまくったと言えないし、リウだけが成長したことには腑に落ちないものがある。


「――って、あれ? レシスは?」

「リウ、見てないにぁ」

「レッテも知らないでーす!」

「小娘でしたら、「壁伝いに少し戻ってみますね」なんてことを言ってましたわ」

「ルールイ。君はレシスを止めなかったのか?」

「敵がいないわけですし、好きなようにさせては?」

「……いや、それでも」

「アルジさま、申し訳ございません。そうですわね、あの小娘が妙なモノを見つけてしまう恐れがありますわね」

「そういうことだよ。とにかく俺たちも戻って――」


 何か胸騒ぎがする。

 確かに敵の姿も無く、仕掛けも無い。


 だが、


『ひぃぃえええぇぇ!? な、何で~~!?』


 そう思った直後、レシスの悲鳴が聞こえて来た。


「アルジさま!! わたくし、先に見て参りますわ!」

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