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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
肆頁:相互成長の刻

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97.レシスとネコと魔力温泉 後編


 レシスの様子がおかしいのはいつものことだが、ルールイがいつもするクネクネな動きをしているのはおかしい気がする。


「レシス? 君も早く体を温めて、俺に噛まれた指を一所懸命洗っ――」

『嫌ですよーー!!』

「ゆ、指を洗うのが!?」

『そ、そうじゃないですっ!! エンジさん! わたしは女なんですよ!!』


 突然声を張り上げるレシスに驚いたが、驚いたのは何を今さらな発言についてだ。


「落ち着いて、ドウドウ……」

「はーふーはーふー……女の子、淑女、魔女っ娘……なんですよ?」

「いや、回復士だろ君は」

「エンジさんっ!! 前々からそうじゃないかなと思っていたんですけど、エンジさんは意識しなさすぎですよーー!! プンプンプンです!!」

「ん? 意識って?」

「で、ですからぁーー」


 むぅ、意味が分からない。指を洗うだけなのにどうしてこんなにも怒りまくっているのか。


『エンジさま~! 気持ちがいいにぁ~!! エンジさまも早く入るにぁ』

『ヌシさま! 早くーでーす!』

『アルジさまのお背中は、わたくしがゴシゴシと丹念に洗って差し上げますわ~!』


 そうこうしていると、リウたちの声が湯気の向こう側から響いて来る。レシスの言っていることがよく分からないが、ここはひとまず湯に浸かって魔力もろとも回復させてもらおう。


『あー今から入るよ!』


 彼女たちに返事をした俺は身に付けていた装備と属性石を外し、それら全てを外套で隠して肌着を脱いで、湯に足を入れようとした。


『きゃわわわわわわっ!? エ、エンジさんのバカァァァ!!!!』

「――ハ? ぐげぇっ!?」


 一瞬何が起きたのか分からなかった。

 しかし、


「にぁっ!? エンジさまが大胆にぁ! でもでも、リウは嬉しいにぁ」

「ブクブク……ううーん……」

「にぁぅぅ……く、くすぐったいにぅ。エンジさま、そこはダメにぅ」

「あーー!! ネコ、ズルいぞ! ヌシさまはレッテがご奉仕するんだ!!」

「……」

「レッテはそこが気持ちいいのでーす。ヌシさま、もっともっとでーす」


 何やら全身がとても熱く、それでいてリウとレッテの声が交互に聞こえて来る。どうやらレシスによって俺は、湯の中に飛ばされてしまったらしい。

 

「あなた、アルジさまから優しくされておきながら、酷い仕打ちをされますのね」

「だって、だって~エンジさんが~」

「何を今になって恥ずかしがっているのか、わたくし、理解に苦しみますわ。アルジさまがとてつもなく鈍い人間であることは、誰もが知っていることですのよ? それを小娘のあなたごときが何を今さら……」

「うきゅぅぅ……だ、男性と一緒にお湯の中になんて、わたしの経験に無いんです~~」

「……それを言うなら、アルジさまだって同じですわ。ですけれど、恐ろしく色気のことに気付かないアルジさまに気付かせるなどと、身の程を知れ! ですわ」


 どうやらレシスに説教をしているのはルールイのようだ。大方、今までの鬱憤が溜まりにたまっていての説教なのだろう。


「ルールイさんはそれでいいんですか?」

「アルジさまのお傍にいて、ごくたまにご褒美を頂けるそれだけでいいんですわ。小娘の色気にすら気付かないアルジさまが、意識なんてするはずがありませんことよ!」

「それはそれで何だか悔しいです~」

「あなたはアルジさまと同じ人間。それだけで、わたくしたちよりも有利なはず。とにかく、アルジさまが目覚めたら、意識などせずに接したらいかがですの?」

「むむむぅ……大人なレシスになれ。そういうことですねっ? 分かりました!!」

「……全く、仕方が無い小娘ですわ」


 全身ゆらゆらと揺れながら、魔力と体力が回復していく感覚を覚えたところで目が覚めた。よく分からないが、誰かの膝の上に頭を乗せられているらしい。


「……ぅ」

「魔法士エンジさま。お目覚めになられたんですね?」


 聞き覚えの無い口調と何とも優しい声色。俺を包み込む、どこかで見覚えのある白い外套。

 そして何やらむにむにとした感触が手の中に収まっている。スライムに出会ったことは無いが、こんな感触なのだろうか。


「はひゃぅぅ……こ、これが大人への成長要素……」

「き……みは?」

「回復士レシス・シェラ。魔法士さまの奥さんです……目覚めのキスを頂けますでしょうか」

「レシス……魔法士の――」

「はい、そうですよ~あなたの……」


 いや、


『違うだろーーー!!』


『ほわぁぁぁぁぁっ!? び、びっくりするじゃないですかー!』


 うっかり騙されそうになった。見るとレシスは赤面させながら、布一枚だけを羽織った状態で俺を膝に乗せていた。


「な、何という格好をしているんだ、レシス! は、早く服を!!」

「で、ですよねぇぇ!!」


 リウたちの姿は近くに無いのに、レシスの膝の上で眠っていたなんてどういう状況なんだ。

 そう思っていたが、


「にぅぅ……エンジさま、ひどいにぁ」

「ヌシさまはヒドい……」

「その気があるならあると、何故おっしゃって下さらないのですか!?」


 リウとレッテ、そしてルールイが揃って俺を睨みつけている。全く身に覚えが無いが、意識が無い間に何かしでかしてしまったのか。


 レシスの膝の上で眠っていたのも気にはなるが、ここは彼女たちにもきちんと約束しておこう。


「リウ、レッテ、ルールイ。大丈夫! 後で必ずするから」

「ムフフ……きっとにぁ~」

「期待してるでーす!!」

「わたくし、遠慮をするのを止めさせていただきますわ!!」


 彼女たちには後できちんと謝ろう。

 何をしたのかは分からないが、機嫌を良くしてくれたようで良かった。


「エンジさん、そ、そろそろ出ませんか?」

「あぁ、そうしよう」

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