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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
参頁:駆け出し魔法士の目覚め

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84.駆け出し魔法士、ガ・クオン寺院の扉を開く 後編


 ピエサからのご褒美に何やら一瞬驚いてしまったが、彼女はすぐに俺から離れてしまった。


 ザーリンと同様で、ヒントは与えても答えまでは教えてくれないらしい。

 そうこうしているうちにレシスの手伝いをしていたリウが、大量の石を抱えて持ってくる。


「エンジさま~たくさん拾って来ましたにぁ! でもなにに使うのにぁ?」

「あぁ、ありがとうリウ。良かったらリウも一緒にやってみるかい?」

「にぁ?」

「エンジさん、これもどうぞどうぞ!」


 リウに勧めようとすると、レシスは両手いっぱいの何かを俺に手渡してきた。


「――うわっ!? 濡れ草じゃないか! これはさすがに……」


 レシスに任せたのは果たして正解だったのだろうか。

 疑問が拭えないが、彼女は期待を裏切らず手あたり次第の草と石をかき集めた。


 石に関しては大きさ指定をしなかったこともあり、どう見ても窪みにはめ込むことが出来ない石も見える。


 そもそも窪みに草を押し込んだ場合、魔法を込めて扉が開くのだろうか。

 果たしてそういう仕掛けになっているかは不明だ。


「エンジよ、せっかく集めて来てもらったことだ。とにかく試してみるしか無かろう」

「まぁ……」


 賢者アースキンは相変わらず、色とりどりの属性石を身に(まと)っている。


 属性石を触媒に魔法の威力を上げることが出来るのが、彼のスキルだ。

 しかし現時点では、属性石を装備品から外す意思は無いらしい。

 属性石といえば元は鉱石で作られた物。何か見落としている気がしてならない。


 アースキンの言う通り、モノは試しということで窪みを改めて確認して触ってみる。すると、はめ込む大きさと形は一定で、しかも一つだけでなく複数の窪みがあった。


 魔封解除の魔法だけでは扉は開かない仕掛けというのは、間違いなさそうだ。

 

「ふんぬーふんぬぅぅぅ!!」

「一応聞くけど、草を押し込んでいるのかな?」

「ふっふー! こう見えてもわたしは力持ちなんですよ! 濡れ草だろうと枯れ草だろうと、押し込んだもん勝ちですっ!!」

「そ、そうか……」


 レシスの突拍子な行動に驚いても仕方が無いとはいえ、やっぱり変わってる。


「エンジ。すまん! 試せばいいというものでは無かったと俺は反省し始めている……」

「草ではない……そういうことですよね?」

「う、うむ」


 楽しそうに窪みに草を押し込むレシスを見て、彼女を信じていたアースキンはとんでもないことをさせていることに気付いたらしい。


 リウは石を両手いっぱいに抱えたまま俺の言葉を待っているのに引き換え、レシスの愉快な動きに頭が痛くなりそうだ。


「重くない?」

「大丈夫にぁ! リウは力がありますにぁん」

「ちょっとだけ持ってみようかな」

「にぅ」


 どう考えても草では無く石をはめ込むと思われるが。

 リウが持つ石に触れてみてもその辺の石ということもあり、潜在する魔力を感じることは無い。


「エンジさーん!! 反応しましたよー!」


 そんなバカな……。

 まさか草に魔力が含まれていたとでもいうのか。

 リウに持たせていた石はその辺に転がし、俺とリウはレシスの所に近づいた。

 

「反応したって?」

「ですですよー! 枯れ草とか濡れ草を別々の窪みに押し込んだらですね、微かに光ったんですよー!」

「光った……? ということは、草自体に僅かながらの魔力があるのか……」

「チガウ。フェンダー、考えて」

「ピエサは分かっているんだよね?」

「……ヘンタイにヒント」


 そう言うとピエサはアースキンを見る。

 俺もつられて彼を見るが、


「俺は変態では無いのだが、俺が何だというのだ?」


 ピエサの答えの前に、まずはレシスが押し込んだ草を窪みから引っ張り出す。

 反応があったとされる窪みに触れてみると、微かに水属性や土属性の魔力を感じる。


「エンジさんっ、せっかくの草を引っこ抜いちゃうんですか~? ひどいじゃないですか!!」

「レシスとやら、すまぬが草を押し込んでも扉は開かぬ。だが無駄にはなっていないようだし、ここはエンジに任せてみないか?」

「むむぅ! 変態賢者さんが何を~!」

「ぬぅ……」


 自信満々なレシスは納得いかないのか、怒りの矛先をアースキンにぶつけ始めた。

 握りこぶしを作りながら、アースキンに向かって駄々をこね始めている。


「このこの~! 酷いです酷いですよ~!」

「お、おい……」


 レシスから可愛らしい攻撃を受けまくっているアースキンの全身は揺れていて、アクセサリーとして身に付けている属性石が、揺れに揺れまくっている。


「ピカピカにぁ~」

「リウは光っている石が好きなんだね」

「にぁん。でもでも、触れたら大変なことになるにぁ」

「あぁ、そっか。属性石のことはゲンマで味わったからだよね」

「にぅ。リウが触れても何も起きないにぁ。でも、魔法が込められているのは危ないのにぁ!」

「そうだね。うん……ん? 魔法が込められている……というか、込めたのは俺だった」

「にぁ?」


 あぁ、そうか。

 アースキンの装備品そのものが手がかりだった。


 ピエサの表情を見てみると笑っているように見えなくもないが、銀色の長い髪をかき上げ、彼女はすぐに俺の傍に寄って来た。


 そして、


「な、何?」

「ゴホウビ。ウレシイ?」

「まぁ……うん」


 ピエサがしたことは何てことの無い頭を撫で撫で。

 しかし同時に何らかの回復を施してきたようで、頭痛になりかけた頭はスッキリしている。


「ムムムム! 何だか悔しいにぁ」

「ナデナデすると喜ぶと妖精から聞かされた。ソレと、思考力を回復サセた。だかラ、早くやって」

「ありがとう、すぐに開けて来る!」


 ピエサの言葉を頼りに窪みに向かう。

 

「あっ、エンジさん! 賢者さんが酷いんですよ~!」

「アースキン、属性石の水と土を渡して欲しいんだ」

「む? 属性石だと? そ、そうか!」

「エンジさんがシカト? あぅぅ……」


 レシスのことは後で慰めるとして、アースキンから手渡された属性石を反応のあった窪みにはめ込んでみた。するとすぐに光り出したので、そのまま属性石に向けてさらに魔法を注いだ。


 少しして、どこかの仕掛けが反応したような音が建物の内部から聞こえてくる。


「ほわぁぁぁ……!? ええっ!? と、扉が動いてますよー!?」

「なるほど、そういう仕掛けがあったわけか。俺がいなければ開かなかったのだな!」

「そういうことです。アースキンがいてくれてよかったですよ」

「ふっ……嬉しいではないか」


 正確にはピエサの助言によるもの。だが、アースキンの装備品が無ければ開かなかったわけだし、ここは黙っておこう。


「あら? 開きましたの?」

「レッテは眠くなったですー!」


 扉から離れていたルールイとレッテは、待ちくたびれような顔をしながら近寄ってきた。


「待たせたね。とりあえず入り口は開いたから、中に進もうか」

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