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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
参頁:駆け出し魔法士の目覚め

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80.駆け出し魔法士、助っ人を無意識に呼び寄せる


「ううーん……俺だけが戻るか、でもなぁ……」


 正面ゲートを隔てた場所で待っているのは心配そうな表情のリウとレッテだ。

 彼女たちには魔力が無く、だからこそ魔封門に引っかかることも無かったわけだが……。


 こちら側には魔力を持つ俺と純真なレシス、そして何故か全身をくねくねさせているルールイが、俺の言葉を待っているという、何とも言えない状況。


「悩みどころですねぇ~エンジさん、ファイトですよぉ!」

「……本当に何なんですの、この人間は」

「まぁまぁ……」


 ルールイが一番まともに思えて来るが、いい意味でレシスは応援してくれているはず。

 その期待に応えるしかなさそうだ。


「よし、ここには魔物が寄り付く気配も無さそうだし、どっちに近づいても倒せるだろうから俺は一度フェルゼンに戻るよ」

「えぇぇっ!? ど、どうしてですか? いてください~! エンジさんがいてこそのわたしなんですよ?」

「イライライライラ……」


 どんな意味でその言葉を放っているかは聞かないでおくとして。

 ルールイが怒りに任せてレシスに危害を与えないとも限らないし、ここを離れるべきでは無いのか。


「エンジさん、エンジさん!! な、何か来ましたけど……どうすれば!?」

「うん? どこに?」

「後ろ後ろ……エンジさんの後ろから、何か飛んで来てます!!」


 レシスは不思議なことを言い放つとは思っていたが、もしやこれも魔所に近づいている影響なのか。正面にはレシス、ルールイが立っていてその向こうにはリウたちがいる。


 レシスの言うような何かは、後ろを振り返っても確認することが出来ない。


 獣道を通り賊と召喚魔物を倒してスムーズに進んで来た。それなのに、まさかここでつまずくことになるとは。


 そんなことを思っていただけなのに、無意識に救難信号でも飛ばしていたのだろうかと思う出来事が起きた。


「おーい、エンジ! 来てやったぞ~!」


 この声はまさか、アースキン?

 しかし上空から聞こえて来る時点で幻聴としか思えず、首を左右に振りながら思わず目を閉じる。


「あわわわ! ふ、不思議なことが起きてますよ!?」

「驚きですわね……まさか、あなたの言ったことが本当に起きるだなんて」


 目を閉じたまま聞こえてくるのは、レシスの慌てふためく声と呆気に取られているルールイの声だ。少なくともアースキンの声は聞こえてこない。


 やはり幻聴か?

 目を閉じたついでに広範囲サーチをかけてみるとする。


【ジェリー・アースキン 賢者 ランク?】

【ピエサ フェルゼンのドール 強度S 成長スキルA】


 何故アースキンとピエサがサーチにかかるのか。 

 さっきから聞こえて来る幻聴はまさか……。


「おい、エンジ……何故そこで寝ている? それとも瞑想か? おい」

「あれぇ? 本当ですねっ! エンジさんが眠ってます~」

「エンジ! おい! 起きろ!!」

「ザーリンの言ったこと、本当だっタ。エンジはサボり癖がある。物理攻撃をスルから、離れて欲しい」

「む、そうか」


 間違いなく彼らの声だ。

 何故かドールのピエサも来ているようだが、俺に攻撃とか正気なのか。


「わー!! 待った、俺の物理耐性は決して高くないんだから、今すぐその攻撃を止め――」


 魔法にはめっぽう強い俺ではあるが、魔法防御を張っていたとしてもドールからの攻撃には耐えられない……そう思いながらすぐに目を開けた。


 しかし目の前に見えているのは人間にしか見えないピエサの顔だ。


「あれ?」

「とぼけてないでさっさとコピーする! その為だけの賢者を連れて来た」

「キ、キミはドールのピエサ……だよな? 機巧少女だったはず……あれ?」

「アナタの成長によりワタシも成長。以上」


 成長したら人間っぽくなるなんて聞いて無い。


「そうなんだ……それで、ここへは何しに? 何で賢者も連れて?」

「アナタが呼んだ」

「お、俺が!?」

「ワタシのマスターであるアナタが助けを求め、ソレを拾った」


 単なるお手伝いドールという認識しか無かったが、まさか俺の悩みが伝達された挙句にここまで来させるとか、迂闊に悩み過ぎるのもまずいのか。


「マジックゲートを破る為にヘンタイを連れて来た」

「アースキンを?」

「こら、待て待て。何故俺を変態として認識させているというのだ? 謂れの無いことをドールに学習させたのではあるまいな?」

「気のせいだよ。それで、アースキンがこの門を破れるってのは?」


 さすがに本人の前で変態と言わせるのはやめさせないとな。


「ん? あぁ、ログナのギルドが封鎖されていたのを覚えているか?」

「あの時の?」

「ああ。賢者である故にギルドにかけられていた封じの魔法を解くことが出来たわけだ。彼女が言うには、ここのゲートも同じ封じ魔法がかけられているらしくてな」


 ラフナンのことがあり、ログナが荒れ果てていた時だった。

 ギルドには何らかの魔法封印がかけられ、俺ではどうする事も出来ずにいた。

 だがそれをあっさり破り中に入ることが出来たのは、アースキンのおかげでもあった。  

  

 その時のアースキンを見習ってコピーをしておくつもりが、すっかり忘れていた。


「よく分からんが、お前に触れさせるために連れて来られたというわけだ」

「なるほど……ログナの守りは?」

「俺がいなくともお前のおかげで騎士が増えたこともあって、俺は自由に動けるようになったぞ。見たところこれから危険な所に行くようだが、お前さえよければ俺も……む?」


【ジェリー・アースキン プロテクトデバフ 賢者専用 コピー可能 編集可能】


 なるほど、アースキンだけが使えるスキルだったわけだ。

 魔法ではなく対象にかけられている保護効果を下げる。

 という時点では、魔法のディスペルと似た感じか。


 セイレーンから得られたディスペルと組み合わせて編集をしておくか。


「どうだ? 俺から何か得られたのか?」

「ええ、バッチリですよ! アースキンに来てもらえて助かりましたよ」

「ほう? それならこのまま俺を――」


 さすがに一緒に連れて行くわけにはいかないしな。


「いえいえいえ! もう大丈夫なんで、戻っても大丈夫ですよ」

「ぬ? 何だつまらぬな。ではピエサとやら、戻るとするか」

「ピエサ、この先まで付いて行く。賢者はココで待つ」

「何? ここで待機していろだと?」

「ソウ」

「むむむ……」


 ピエサはどことなくザーリンに似ているが、意思の伝達でもしているのだろうか。

 アースキンを手玉に取っているのも彼女らしいがとにかくこれで先に進めるようになった。


 向こう側から戻ることも試してみたいし、アースキンにはもう少しいてもらうことにしよう。


「――というわけで、頼むよ」

「そういうことならば、俺はここでピエサを待っていれば良いのだな?」

「心配なら防御魔法を……あ! それはまだ覚えてなかった。とにかくここで待っててもらえると」

「いいだろう。もし魔物が来るようなら、俺も魔法の威力を高める機会を得られるというものだ!」

「よろしく」


 ドールのピエサにはラーウス魔所まで来てもらうことにした。

 そして俺たちは、ようやく先へ進める。


「待ちくたびれたにぁ」

「全くですよー!」

「ごめんごめん、こっち側からの魔封も解いてから進もう!」

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