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8.書記、パラメータを身につける


「……ケモノ」

「違うにぁ!! リウ!」

「……ネコ」

「ち、違わないけど、むむ……」


 リウは素早い動きでオークの集団を掻き乱した。

 そのリウが妖精のザーリンと話をしているようだが……。


 話が合いそうにない雰囲気のようだ。


「そういえば翅に傷があったはずだけど、怪我の具合は?」

「それは大変にぁ!」

「……何ともない」

「え? 俺の見間違い? でも、確かに傷を負って……」


 妖精といえど、痛みは感じているはず。

 そうなるとまだ警戒されていて、信用されていないということだろうか。


「エンジさま! リウが代わりに見てあげ――」

「すでに回復した。平気」

「な、なんにぁ! まだ何も言ってないのにぁ」


 フェアリーの能力に自然治癒……。あるかもしれない。

 治癒力が備わっているならコピーしてみたいし、救えることに使える気がする。


「古代使いのエンジ。翅に触れれば出来る……」

「え、い、いいの?」


 心の中を読まれた――?


「そうすることが古代使いの役目。それをしないと、あなたは長く生きられない」

「ハッキリ言うなぁ……じゃあ、触れるよ」

「みゅ? エンジさまに触れられるのにぁ?」


 リウは色々なことに興味があるようだ。

 俺がザーリンに触れようとしていることに対し、耳をピンと立てて嬉しそうにしている。


 フェアリーの部分である翅を手で触れる。すると、すぐにイメージが浮かんで来た。俺自身の成長がそうさせているのか、あるいはザーリンが認めてくれたからなのか。


 その辺ははっきりしないが――


【ザーリン フェアリー 自然治癒力 からかい上手 いたずら好き】 


「……ってあれ? これだけ?」

「あなたが求めているモノ。それらを備えているとは限らない」

「火とか、魔法は?」

「攻撃は獣の役目」

「そ、そうか。自然治癒が使えるというより、身に付くだけでも凄いことかな」


 考えてみればフェアリーが攻撃魔法を使えていたら、オークには捕まっていない。

 

(スキルの他に見える性格みたいなものをコピーしたらどうなるのか)


 それはともかく、ザーリンのパラメータの一部をコピー出来た。

 今はこれで良しとしよう。


「あなたの力は不完全。大して古代の力を使えていないのに、都合よく出来ると思ってはいけない」

「た、確かにその通りなんだけど……」


 リウの潜在的な能力も見えなかったし、コピーのイメージも浮かばなかった。

 俺の力不足ということなのか。


「にぁ?」

「何でもないよ、リウ」


 覚えていた古代書文字の一部を羊皮紙に書き、眠ったら綺麗に消えてコピー出来るようになった。

 他のページに書かれていた文字も覚えていたら、今と違っていたのだろうか。


「関係ない」

「気になっていたけど、もしかして考えていることが分かる?」

「……フェアリーとしての能力。あなたには使えない」


 妖精としての能力なら仕方ない。

 人間には感じられない小さな仕草も見えるのだろう。


「リウの時もそうだったけど、それって種族の固有スキルだからってことだよね?」

「学習? あなたは何故攻撃を得ようとしている?」

「それが無いと、守るだけじゃ厳しいから……かな」

「古代の力を得ただけでも、すでに(ことわり)から外れている。何の為に欲しているのか、考えるべき」


 リウが元から使っていたスキルよりもコピー後は、数倍強化されている。それを考えれば、確かに攻撃スキルや魔法を得るのは危険なのだろう。


 でも上手く使って行けば、人を殺めずに救うことの方が多く出来そうだ。


 俺を騙してバカにして攻撃まで仕掛けて来た勇者たち。彼らにも上手く使えば懲らしめることが出来るだろうし、書記でも冒険に役立つことを見せつけられる。


「ザーリンはこのままついて来てくれるんだよね?」

「コピーをさせた。古代の力をどこまで正しく使うのか、見届ける」


 助けられた時からそういうつもりだったのだろう。

 そうじゃなければ、人間を簡単に信じてついて来ない。


「そっか。ありがとう」

「……仲間に加えたいなら、同種族同士は避けた方がいい」

「それって、俺と同じ人間が駄目ってこと?」

「性別が異なっても人間は欲深い。全てを受け入れるとも限らない」


 人間同士では上手く行かない……そういう意味か。勇者の仲間の扱いを見ると確かにそう思えてしまう。


「そうなると必然的に獣ばかりに……」

「あなたが信じられる者を加えればいい。そして古代の力が使えることも言うべきじゃない」


 心を読めるフェアリーだからこその警告――といったところか。


 考えてみればコピー出来さえすれば、仲間に加える必要は無くなる。それこそ無理に人間の仲間を増やすことはしなくていい。


 それでも何となく彼女のことが気になる。

 勇者パーティーの一員にいながら、あまりいいことを言われず行動も別にされていた。


 書記のことを知っていたし、ギルドから追放された時も親切にしてくれた回復士の彼女。

 どこにいるのか分からないけど会えるなら会いたい。


 コピーしてもしなくても、一緒に冒険が出来れば楽しくなりそうな気がする。

 とりあえず再会するまでに、まだ触れていない花から出来るものはコピー。


 それを始めてから冒険を開始だ。


「エンジさま~! もうすぐ行くにぅ?」

「そうだね。準備出来るものは万全にして行くよ!」

「あ~い!」

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