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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
参頁:駆け出し魔法士の目覚め

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77.駆け出し魔法士、未知なる召喚魔物に遭遇する 後編


 魔法をかき消す召喚……いや、魔法を自分にかける相手は初めて見る。召喚士そのものが強いのか、それとも?


【サーチ 魔物から広範囲 反応なし】


 魔物以外に生命反応は無い、か。召喚士じゃなくて意思を持つ魔物?

 そうだとすれば、敵自身がかける魔法は召喚じゃないからコピーは出来る。

 とりあえずレシスを自由にして、それから彼女に動いてもらう。


 レシス自身は気付いていないが、動けないのは魔物による封じられではなく単なる思い込みによるものだ。

 

「あぅぅぅ……エンジさんのお役に立てずに、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

「いや、レシスはちっとも悪くないからね? ここは俺だけで何とかするしかないっぽいし、リウたちの所に行ってヒールを頼むよ」

「で、ででで、でもでもでも、動けなくてですね……ふがぁぁぁ!! このこのこの~!」


 音による攻撃で動けずにいるのは、リウとレッテ、それにルールイに絞られている。

 レシスが動けないのは音による妨害ではなく、畏怖による硬直によるもの。

 レシス本人は全く自覚が無く、無意識によるものらしいが絶対防御は反則級の固有スキル。

 

 魔法どころか、あらゆる攻撃を無効化することに気付いていない。

 少なくとも防御だけなら、彼女は俺の力を遥かに上回っている。


「それならすでに動けるはずだけど」

「ほえっ?」

「そうやって地団駄を踏みまくっているのが、何よりの証拠だと思うんだけどね」

「ほへぇぇっ!? あれっ……不思議です~! エンジさんに言われたら手足が自由に! エンジさんは魔法使いですね!!」


 レシスは確認するように何度も手をバタつかせたり、足を揺らす。


「まぁ、魔法を使うからね」

「ではではではっ! リウちゃんたちを癒して来ますっ!! エンジさんも気を付けて~」


 大いなる天然回復士のボケはレシスの固有スキル。

 そう言っても間違いじゃないかも。


 ここで集中すべきは目の前の魔物だ。もちろん倒せない相手でもないものの、召喚者がいない状態での魔物という時点で、未知の敵と思うべきだろう。


 魔物は今のところリウたちを妨害の音で動けなくしているものの、こちらに対しては攻撃魔法を使用して来ない。


 それに加えて俺のことを古代な者と呟いている相手だ。属性として考えられるのは、ドールたちのような存在と思っていいかもしれない。


 魔法が効かないというなら、まずはレシスのスキルを使って敵を調べてみる。


「消去……消去――古代種……抹殺対象」

「おっと、消されるわけには行かない」


【スキル ソーディッカを使用 ターゲット 魔物】

【セイレーン 属性風 静寂の声を発し敵を封じる 古代種の鳥人族 召喚獣 弱点???】


 どこかで聞いた名だ。自分も古代種なのに俺を消そうとしているのか?

 弱点は不明、属性魔法や弱体魔法ではかき消されてしまう。

 それなら効果があるのは多分……。


「攻撃対象、フェンダー……対象、物理強化、耐性……デバフ発動……」

「――うっ!?」

「失敗……失敗――効果無」


 今のは俺への弱体魔法、それともスキル?

 効果が無かったということは消されていないか。 


 もっとも俺には物理強化も耐性もほとんど無いようなものだ。物理はともかく、魔法耐性を弱体させられるのは避けなければならない。


「セイレーン……意思を持つ敵か。お前に恨みは無いが、封じさせてもらう! 召喚魔法ティアマト!」

「不可……不――」


 召喚魔法に限定すれば通常の魔法攻撃や防御が通用しない。これに関しては、ティアマトを召喚していた召喚士から話を聞いていたので間違いないはず。


しばらくして―― 

召喚には召喚を。手段としてぶつけるのが正解だったようで。


 ドラゴンブレスに含まれた毒成分には対象の敵を腐食する効果がある。まともに浴びたセイレーンは身動きが取れないままで動作を停止した。


 動きを封じたところでイグザミンを使用し、セイレーンそのものをコピーすることが出来た。


「ふぅ……」


 思わずため息が漏れてしまったが、召喚士がいないまま意思を持って動く敵は初めてだった。他の魔法と異なる方法とはいえ、コピーするのも一苦労だ。俺だけでは無く、味方である彼女たちを全員封じて来たのは今後において注意すべきところ。


「エンジさま~!!」

「――っと、リウ! もう大丈夫かな?」

「はいにぁ! リウ、なんにも出来なかったにぁ……ふにぅ」

「今回は特殊だったからね。リウだけじゃないし、そう落ち込まないでいいよ」


 そう言いつつも真っ先に飛び込んで来たリウの耳は、すっかりとへたっている。


「はにぁぁぁ……」

「これでどうかな」

「元気が出たにぁ!! エンジさま、大好き!!」

「良かった!」

「リウ、早速仕事するにぁ」


 レシスの回復と回復速度が早かったのか、リウは意識を戻した賊たちに向かって威嚇。ルールイとレッテはまだ立ち上がれないようだ。


 


「――で、お前たちは誰に指図を受けてここに来た?」

「知らねーよ!」

「けっ、誰が……あ、あぁぁ……」


「フゥーー!!」


 リウの威嚇は相当なもので、リーダー格の男以外は全員身を縮めて震えている。


「……報酬を出すからって頼まれてやっただけだ……」

「誰にだ?」

「女だ。顔はよく見えなかったが、タルブックに戻って行ったから湖上都市の人間に違いねえ。さっきの魔物もその女が用意しただけで俺らは何もしてねえよ」

 

 タルブックの女というとサランしか思い浮かばない。

 ラーウス魔所に向かわせようとしていないのか、それともまたしても俺を陥れようとしていたのか。


 賊たちは俺たちを足止めしか出来なかったようだし、逃がしてもよさそう。


「エンジさん、この人たちはどうするんですか?」

「ううーん……言われたことをしただけだろうし、俺には被害が無いからね。レシスはどうするべきだと思う?」

「じゃ、じゃあ! 森を直してもらいましょう!」

「へ?」


 実際に森の木々を崩したのはレッテたちだったが、セイレーンを使って彼女たちを封じたのは確か。ということで、リウたち監視の元で賊たちには整地し直すところから始めてもらった。

 

 これならここの獣道も元通りになるに違いない。

 それにしてもサランか。

 ラフナンを操り、未知の魔物をも使って来るなんて一体何者なんだ。

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