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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
参頁:駆け出し魔法士の目覚め

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74.駆け出し魔法士とスキンシップな時間


 国を興しログナとフェルゼン、それぞれに守護者を置いた。これでようやく魔法コピーの旅に出られる。


 騎士クライスの話によると、タルブック湖上都市は都市そのものを外界と隔離しているらしい。その一方で、周辺にある森や山には立ち入りが禁じられているのだとか。


 それこそがタルブックが隠したい部分。おそらく魔所へ行かせようとしない企みだろう。魔法兵が狙っていたレシスの杖といい、勇者ラフナンを手駒にしようとしたのも何らかの関係があるのかもしれない。


「難しい顔をしていますわね。何か不安事がありますの?」

「……ん? ルールイか。い、いやぁ、大所帯ってほどでもないけど、みんな一緒に冒険に出ることになるなんて、最初の頃は考えもしないことだったからね」

「ネコに妬けますわね」

「リウとはずっと一緒にいるからね。彼女の力はまだまだ未知数だし、いてもらいたいと思っている。もちろん君も必要なんだ。空を飛べるのは君だけだからね」

「あぁぁぁっ!!」


 俺の言葉を聞いた直後、ルールイは全身を大きく震わせ始める。


「ど、どうした?」

「この身、翼がもげてしまうほどに悶えてしまいそうなお言葉ですわ!」

「……」


 ルールイは俺を夫にするつもりでさらった。だが普段は理性を保っている。それが徐々に我慢出来なくなって来たのか、態度も言葉も大胆になって来たようだ。


 それはともかく、ルールイは戦力的には申し分ない。空からしか行けない場所にも飛んで行けるからだ。


 それにリウとレシス、レッテも初めこそ口喧嘩ばかりしていたが、今では仲良くなった。


 俺自身は彼女たちに守られる必要は無い。そんな彼女たちもそれぞれで危険を察知して動く能力があるので、その辺は他の冒険者とは行動力が違うことがいえる。


「エンジさん、エンジさん!」


 とはいえ、彼女たちの中で一番心配なのはレシスか。


「何かな?」

「そ、そのぉ……魔所ってところは遠いのですか?」

「草も木も生えていない場所らしいからね。風景が変わればたどり着くんじゃないかな?」

「ほ、ほぇぇ……だ、大丈夫でしょうか?」


 ちょっと変わってるけど、レシスはれっきとした人間。見たことも無いところに行くだけで不安を抱えるのは無理も無い。


「レシスは心配?」

「いえいえ、お任せ下さいっ! 回復士は弱く見られますが、わたしはこう見えて頑丈で体力が有り余ってるんですよ~! 心配なのはエンジさんの方ですっ!!」

「お、俺?」


 何とも純粋な瞳で俺をじっとり見つめて来るレシス。一見すると誤解を招きそうだが、どこか抜けている彼女は好意の眼差しよりも、看護的な目で俺を観察しているのは気のせいだろうか。


「足良し、手良し……体は問題なし! 異常なーし!!」

「……何をしているか聞いてもいいかな?」

「魔力は目に見えないのが悲しいところですぅ……え?」

「俺をそんなに観察したって、面白いことにはならないと思うんだけど……」

「エンジさんの健康診断ですっ! ふふふふ、回復士だってやる時はやりますよ」


 天然で間の抜けたレシスばかり見ていたせいで忘れていたけど、彼女は回復士だった。行為と行動と言動には疑問を持つが、杖をも上回るスキルは目を見張るものがある。


 俺への好意はどうやら気のせい。本人も忘れているようで何より。


「シェラの健康診断は人間だけなのかにぁ?」

「そんなことないよ~! リウちゃんも見て欲しい?」

「んむむむ……リウ、エンジさまに触れて欲しいにぅ」

「俺は回復士じゃないよ?」

「ここにぁ、ここにエンジさまの手で、触れて欲しいにぁ……ダメかにぁ?」


 甘えん坊のリウは、寂しくなったのかつぶらな瞳で俺を見つめながら耳を差し出して来る。これが獣耳の魅力……こんなことではアースキンと同類扱いじゃないか。


「うっ……」

「指先でもいいにぁ」

「じゃ、じゃあ、ちょっとだけなら……」

「にぁう」


 指と指の間でリウの耳に触れると、ビクンとさせながらゴロゴロとしている。


「ふにぁ~……みなぎるにぅ」

「な、何だか気持ちよさそうですね。エンジさん、わたしの耳も是非!!」

「うん、無理」

「えええ~!?」


 ネコ耳は良くて人の耳は駄目というわけじゃないが、レシスはやはりどこかおかしい。


「何やってんですかー! ネコはともかく、同じ人間同士でそんなことしているのは見たことないですー! ヌシさまは変態賢者とは違うって信じていたのにー!!」

「ご、ごめん!! レッテは狼族だし、見るのもされるのも嫌いなんだよね?」

「嫌いなのは変態賢者だけでーす! ヌ、ヌシさまにならこの身は、いつだってどこだって――」


 リウは近しいネコ、レシスは天然、ルールイは自然に悶えるコウモリ。しかし狼族のレッテは、フェンリルのルオと同様に自分を持っていて、誇りある種族だ。


 レッテなら天然レシスがいても、カバーしてくれると思って連れて来たが……。

 実は甘えたかった?


「し、尻尾でいいなら」

「じゃあ遠慮なく……」


 狼族は耳よりも尻尾派なのか。モフる率はリウよりも少ないが、尻尾はこれはこれで中々いい。


「ヌシさまのお気持ちはよく分かっていますよー!」

「うん?」

「誰か一人にだけではなく平等に! ですよねー?」

「言っている意味が分からないけど、多分そうかな?」

「了解でーす! それなら人間もネコも、コウモリ……は何かが違うのでいいとして、嫉むのはやめまーす!」


 ルールイだけは別格と思っているようだ。レッテはリウと仲が悪いし一応気を付けておこう。特に危険の無い森林道を歩いて進みながら、獣道に差し掛かる。


 すると、


「ヌシさま、危ないっ!!」

「――っ!? 魔法の攻撃?」

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