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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
参頁:駆け出し魔法士の目覚め

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73.駆け出し魔法士、ラーウス魔所を目指す


「はぁぅぅぅ……わたしったら、何てことぉぉぉ」

「リウも同じにぁ。エンジさまのお傍にいたら誰でもそうにぁ! 気にしたら駄目なのにぁ」

「うぅっ……リウちゃん!!」


 リウはレシスに一体何を教えたのだろうかと気にはなるが、話が長くなりそうなのでやめとく。

 そろそろ出発しなければ。


「それで、アルジさま。どこに向かうおつもりですの?」

「レッテはどこでもいーでーす! ヌシさまにお呼ばれされて、こんなに嬉しいことは無いのでーす!」

「そんなに? レッテは、アースキンの傍にいたくなかったの?」

「アレは手遅れですよ。賢者か何かなんて狼族には関係ないでーす。無意識に耳や尻尾を撫でまわして来るのは、人としておかしいでーす!!」


 彼なりの愛情表現のはずが、まさかの敵対行動になってるとは。


「……まぁ、それが彼の良さだからね……」

「ルオさまにも同じことをしたら、賢者はイチコロですよー」


 くれぐれもフェンリルの逆鱗に触れないように祈っておこう。


「エンジ!」


 この声はクライスかな。騎士クライスは奥さんと暮らす家を、ここフェルゼンに建てている最中だ。彼らは今まで海に囲まれた国にいた。今度は森に囲まれたいということで、ルオの森の中に家を作っている。


 俺の移動魔法で森移動をして来たこともきっかけになったのだとか。


「ここにいるということは、森から森へと移動するのは確かなわけだな」

「俺の移動魔法は万能では無くて、一度触れた植物の森に移動するだけなんで」

「十分なことだと思うが。しかし森、いや植物が存在しない地にはどうやって行く?」

「歩いて向かうことになるのかなと。もちろん、行ったことのある場所からですよ」

「……ふむ、そうか。お前の力はミーゴナで見ただけだが、見知らぬ魔法を覚えたいんだったか?」


 何か心当たりがありそうな表情で、クライスは首を傾げている。


「何かいい所がありますか?」

「これは俺が例のゲレイド新国に行った時のことだが……」


 光の獣を討伐したと聞く国。

 魔法兵サランは、そこからの差し金とも聞いている危険な場所だ。


「エンジさん! お、お待たせしましたっ!! 自分を取り戻しましたので、いつでも行けますよ~」


 自分を取り戻したって何だろうか……。


「それじゃあ、レシスとリウもレッテたちの所で待っててくれるかな?」

「はいっ!」

「ふにぁ? エンジさま、元気が無いのにぁ?」

「そんなことはないよ。でもありがとうね、リウ」

「あい!」


 彼女たちには今の段階から、危険な国のことを話すわけには行かない。


「――というルートで辿れば、"ラーウス魔所"に着く。体力勝負にはなるが、獣の彼女たちがいれば問題ないだろう」

「魔法が取り放題!?」

「うむ。魔法もそうだがそこは――行けば分かる」


 クライスがしばらく表情を曇らせたのは、魔所(マジックハウス)なる場所のことを俺に教えるかどうか迷っていたらしい。


「そこに行くまでに食糧だとか、狩りで得るとかは問題なく?」

「あぁ。村が点在しているからそれは問題ない。しかし、道を知るのは俺かアルガスなのでな。すまん」

「それも冒険じゃないですか。俺は元々書記でしたから、知らない道は自分で覚えて行きますよ」

「書記? 魔法士ではなかったのか……」


 クライスたち騎士に出会った時は書記としてミーゴナに辿り着いたわけでは無く、魔法士として救援した。無理も無い話かも。


「それじゃ、俺はそろそろ……」

「同行するのは彼女たちだけなのか?」


 クライスは彼女たちを見ながら表情を曇らせている。


「リウも相当強いですし、人数は妥当かと」

「あの機械人形たちでは駄目なのか?」

「ドールですか? 彼女たちにはここを守る役目がありまして。もちろん、クライスも頼りにしていますよ」

「ふむ」


 人選に問題があるとは思えない。機巧ドールのピエサも候補にしてはいたものの、話しやすさで決めてしまった。ドールがいれば機械仕掛けのダンジョンなんかでは頼れそうだけど。


「それならいいが、ラーウス魔所では何が必要になるのか読めないのでな」

「食べ物は村とかで調達しますよ! じゃあ、行って来ます。フェルゼンをよろしく!」


 騎士クライスに聞いた通り、まずはラーウス魔所を目指して移動することに。


 


「騎士クライス。何故マジックハウスなどと嘘を?」

「うおっ!? あ、あなたはザーリンさんだったか?」

「ザーリンでいい。どうして?」


 クライスたちが出発した後を見計らい、ザーリンが姿を見せた。


「……聞いていたのか。あながち嘘ではないのでな。ラーウス魔所はその名の通り、魔物が棲む町でもあるが魔法を多く得られる所でもある。エンジならば問題ないと判断をしたまでだ」

「それでドールを薦めた?」

「人間と獣、それとコウモリ族。エンジだけでも強いだろうが、機械仕掛けとなればどうかと思っただけだ。他意は無い」

「……そうなった時は、あなたに頼むから」


 


 クライスから聞いた近道。出来ればあまり近付きたくなかった。ここでの出来事であの魔法兵の執拗な攻撃が始まってしまったわけだが、今は気にしても始まらない。


 湖上都市に行くわけではないし、まずはしばらく周辺を歩くしか無さそうだ。


「エンジさん、どちらへ行かれるんですか?」

「結構歩くことになるんだけど、ラーウス魔所ってとこかな」

「魔所ですか? な、何だか怖そうな場所に行くんですね」

「え、そうかな?」


 冷静に聞けば確かにそう思えて来た。

 でも魔法取り放題の場所に行く機会なんて滅多に無いし、ここは気にしないことにしよう。

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