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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
参頁:駆け出し魔法士の目覚め

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72.駆け出し魔法士、決意する


「そろそろ出発するけど、みんなは準備出来た?」


「リウはいつでも行けるにぁ!」

「レッテも同じでーす」

「わたくしのご心配は無用ですのよ? 準備というのはむしろ、触れ合う時間と捉えてもよろしいのでは?」


 リウとレッテ、そしてルールイを旅の同行に決め、後は彼女だけを待つのみとなった。


 導きのフェアリーであるザーリン。

 彼女は俺の魔法士としてのランクが上がったのを聞き、

「もうついていなくても大丈夫だから問題無い」と言い出した。


 今後は俺と一緒について歩く彼女たちも強くする必要があるらしく、人選を決めて出発する運びとなった。


「シェラが来てないにぁ~」


 レシス・シェラ……連れて行く仲間としては一番心配な女性なわけだが。


「そうなんだよ。どこかで見かけなかったかい?」

「リウは見てないにぅ」

「レッテはログナから来たばかりですよ~」

「存じませんわね」


 レシスにはいち早くパーティに入れることを伝えていた。すると、「それならわたしも準備しなければ!」と言ってどこかに走っていなくなってしまった。


 何の準備かを聞く間もないほど、彼女の動きは素早すぎた。

 明るく振る舞っていたが、もしかしたらラフナンのことで落ち込んでいたのかもしれない。

 そうだとすると、連れて行くのをためらってしまいそうになる。


「ハーフーハーフゥゥ……お、お待たせしました~」


 一瞬不安がよぎったが、彼女は息を切らせながら現れた。


「何かあった?」

「そ、それがですね~……」


 レシスにしては珍しく手を擦り体もくねらせながら、モジモジし始めた。

 やはり何か思うことでもあるのか。


「ルールイ以外でくねらせる子がいるとは驚きだけど、何か問題でも?」

「わ、わたくしはいつもいつもくねってませんわ!」

「ご、ごめん」

「うふふ、ですがそれがお好きなのでしたら、いつでもくねらせますわ!」

「ま、また今度ね」


 レシスは言いづらそうにしていて話が進みそうにない。


「エンジさん~、すぐに出発しちゃうんですか~?」

「急ぎではないけど、何で?」

「お見せしたいものがありまして~」

「あぁ、そういうことならいいよ」

「ほっ……本当ですか!?」


 もしかして怒られるとでも思われたのか。


「もちろん」

「ほへへへ~」


 何やら個性的な笑みを浮かべたレシスは俺の腕を掴む。

 そのまま有無を言わせずに、どこかに向かって走り出した。


「にぁっ? エンジさま、どこに行くのにぁ?」

「すぐに戻るから、リウはみんなとそこで待ってて」

「はいにぁ」


 フェルゼンは自分の国。

 とはいえ、広大な山に森が広がっているうえ、砦窟部分にはドールたちが至る所にいて砦を常にいじっている光景が見られる。


 これも全て俺の成長によるものだとすると、もっと頑張る必要がありそう。

 そうこうしていると、どうやら目的地についたらしい。


「むふふふ……! お約束通りのものが出来上がりましてぇ~」

「うん?」

「こう見えてわたしは、記憶力が高いんですよ~」


 話が見えてこないが。目の前にあるのは出来上がったばかりの家にも見える。


「出来たのです!!」

「その家が?」


 どう見ても新居に見えるがまさか――

 

「約束って?」

「忘れたんですか~? エンジさんと一緒になるお話ですよ~」

「はっ? え、いつ?」

「迎えに来たって、そういう意味での言葉でしたよ」


 天然どころか思い込みと妄想を合成したのかってくらいに、ぶっ飛んでいるじゃないか。

 ザーリンがレシスを危険と言っていたが、まさかこういう意味?


「レシス。一緒にっていうのは、冒険の……ってことだからね? 一緒に暮らすことじゃないんだよ」

「ほへっ!?」

「嬉しいのは分かるけど、みんなで君を待っているんだ。だから――」

「はうあうあ~」


 天然か純粋かは置いといても、ラフナンの時も言葉に囚われての行動だったのかもしれない。 


「ひぃええぇ~! わ、わたし、どうやら勘違いを~」

「ま、間違いは誰にでもあるから」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


 ものすごい勢いで顔を真っ赤にしたレシスは、とてつもない速さで頭を下げまくっている。

 うーん……これはどうすればいいのか。


「エンジさま~まだ行かないのにぁ?」

「リウ? 丁度いいところに」

「にぅ?」


 リウはこれでいて理解力がある。レシスのことを軽く説明してみた。


「ふんふんふん?」

「どうしたものなのかなと思ってね」

「むふふ。リウはすでに一緒に寝て暮らしていたのに、人間のレシスはそんなことで悩む~?」


 言われてみればその通り。リウと同じところで寝たし、守っていた。もっともレシスの場合は別の意味でのことかもしれないが。


「エンジさまは先に向かってくださいにぁ」

「どうするのかな?」

「任せてにぅ!」


 詳しく聞けそうにないが、リウに任せればレシスも元通りになりそうだ。彼女たちを連れて冒険の旅に出るし、レシスのようになってしまうと後々大変になる。


 レシスには理解してもらうとして俺は決めなければ。

 全ての魔法を極める。

 その為にも進まなければならないことを――。

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