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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
参頁:駆け出し魔法士の目覚め

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71.駆け出し魔法士、騎士をフェルゼンに置く 後編


◇◇


「――して、あの失礼な魔法士が何用で来ているのです?」

「はっ! クライスを誘いに来た様子。アルシャール様、いかが取り計らいますか?」

「ふん……ミーゴナを救った男に付いて行くなら、好きにすればいいんだ!! ボクには騎士が沢山いるんだからな!」

「アルシャール様……では、奴にもそのようにお伝えいたします」

「ふんっだ!」

「なんにぁ? 妬いているのかにぁ?」

「ネ、ネコが何のようなの?」

「ふんふんふん~リウは、エンジさまから頼まれてここにいるのにぁ!」


 ◇


 ミーゴナの王と姫に仕える騎士を自分の国に誘うというのは、無謀かもしれない。


 それでも確信があった。

 人間にはあまり懐かないネコ族のリウが、クライスという騎士にだけは、俺とはまた違った顔を見せたことだ。


 フェルゼンの守りは、魔法攻撃と矢や石つぶてといった簡易的な遠隔攻撃には対応出来るが、多勢の人間による襲撃を受ければ、的確な指示なくして戦いを鎮めることは、厳しいと見ている。


 そこにクライスほどの騎士が一人いれば、それだけで強固な壁となってくれるはず。


「話は分かったが、エンジよ。そこの回復士のお嬢さんが、あいつの病を治せるというのか?」

「そうです。レシスならば完治させられますよ」

「完治か……。それならば、お前の国を守りながら畑でも耕せそうではあるが……」

「納得をしてくれましたか?」

「ふむ。大げさに言って俺をぬか喜びさせられてもそれはそれで困るのだが、今よりも良くなったのならば、お前の国とやらの騎士となり、我が妻と国の繁栄を手伝わせてもらう!」

「それはもう! 願っても無いことですよ! それじゃあ、レシス。君の出番だ!」

「ほへぇっ!?」


 どうやら何で呼ばれたのか分かっていないままに、レシスは俺とクライスの話をほうけながら聞いていたようだ。


 ラフナンの扱いとは雲泥の差とまでは行かないまでも、恐らくレシスはこれまで直に人に頼られたり、頼まれたりすることが少なかったのだろう。


 そのせいかビクッとさせながら、素っ頓狂な声を上げてしまったらしい。


「エ、エンジさん、わたしが何をどうするんですか~?」

「あぁ、うん、難しいことじゃないんだ。クライス……ここにいる騎士の奥さんに触れてくれるだけでいいんだ。そうすればきっと――」

「ひぁい!? ふ、触れるだけで怪我とか病気とか治せる治癒魔法は、覚えていませんよ?」

「いいから、いいから。中に入ろうか」

「は、はぁ……まぁ。エンジさんがそう言うなら」


 自分自身ですら疑うようにして、レシスはクライスの家の中に入って来た。


 騎士クライスの奥さんは、ミーゴナ周辺をうろつく魔物により軽傷を負い、その傷があざとなって残り、ずっと体調を崩しているらしい。


 騎士クライスとアルガス、そしておてんば姫のシャルとで光の属性石を手に入れて来たが、その石はよこしまなる狙いで作られた石だった。


 光の獣の破片で作られた光の属性石のことも気になるが、今はレシスに全てを託そう。


 部屋の隅でクライスの奥さんは、静かな寝息を立てながら眠っている。

 しかし時折、息苦しそうにさせているのを見てしまえば、一刻も早く何とかしてあげたい所だ。


「エンジさんっ! ど、どどど、どうすればよろしいのですか?」

「気合を入れて、君の手を奥さんに当ててくれればいいから!」

「き、気合ですか? わ、分かりました~」

「お、おい、エンジ……平気なのか?」

「まぁ、見ててくださいよ」


 最初はレシス本人では無く、手にしていた光の杖の力がレシスを助けていると思っていた。

 しかしラフナンとの戦いで見られたのは、明らかにレシス自身の力だ。


 ここは彼女が持つ能力”回復の絶対防御”に期待するしかない。


「こ、こうかな?」

「はぁ……はぁ、はぁ……スースースー……」

「あれれ?」

「こ、こらこら、そっと触れただけじゃ、完治とまではいかないんじゃないかな?」

「ええ!? で、でも、気合入れてって……わたしのような者が、あの――」

「ん? あ、ああ、回復士のそなたを見込んでのことだ。どうせなら、彼女が目をバッチリと覚ます強さでやってくれて構わない」

「そ、そうなのですか。で、では失礼ながら……」


 なるほど、クライスがいる手前からなのか、そっと優しく触れただけなのか。


 いくら何でも手加減はするだろうが、レシスの力を発揮する強さで触れてもらわねば。


『ごくっ……と、とぉぉぉりゃああああああ!!』


「なっ――!?」

「何と!」


 まさかの手加減無しな強さで、レシスは奥さんの体を思いきり叩いてしまった。

 彼女の天然ぶりは期待する以上のことになると思っていたが、まさかクライスが見ている前でそこまでやるとは。


「ゼーハーゼーハー……ど、どうでしょう?」


 そしてレシスは何故か膝に手をついて、息を切らせている。


「な、何でそこまで息が上がっているんだ? そ、それで奥さんは?」

「はふぅ~きっと回復したかと!」


 もしかして、目に見えない回復スキルでも消費しているのか。


「あれ……クライス? 私、どうして――」

「おぉ!! ユラ! 目が覚めたのだな!! あぁっ、良かった……」


 思った通り、いや以上にレシスの能力は本領を発揮してくれたようだ。

 それにしても、レシスは声に出してリアクションしないと、スキルが使えないとかじゃないよな?


 出会った頃はこんな子には見えなくて、気の優しい回復士だとばかり思っていたのに、こんなに動きを見せる回復士は出会ったことが無い。


「ど、どうかしましたか? ははーん! エンジさんはわたしに惚れたのですね? 分かりますよ!」

「そうじゃないんだけど、今回は惚れたかな。動きのある回復士に」

「おほぉ~~!! 新居はフェルゼンに建てるんですね? いいでしょう! ドールたちにお任せして、それから~それから~」


 天然と妄想を兼ね備えた回復士の彼女なら、リウと同様に同行させてもいいかな。


「エンジよ、此度のことは感謝しか浮かばぬ。お前の国に是非、行かせてもらおうぞ! そして、ユラと共に国を守り、盛り上げて見せよう!」

「え? 奥さんと?」

「はい。わたくし、ユラはクライス同様に騎士なのです。夫一人だけに任せきりだったのですが、これでわたくしも戦えます。本当にありがとうございました」

「そ、そうなんですね。二人の騎士でフェルゼンをお守り頂けるのなら、とても頼もしいです」


 これで心置きなく旅に出られそうだ。

 

 リウとレシスは固定だとして、誰を連れて行くべきか。

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