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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
参頁:駆け出し魔法士の目覚め

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70.駆け出し魔法士、騎士をフェルゼンに置く 前編


 オークを解除 ステータスをフェルゼンのドールにコピー 編集完了


「あれ? オークは置かないのです?」

「あぁ、うん。ここにはルオもいるし、ドールたち……それにコウモリ族も多いからね。”守りの番人”としての役目は終えたといっても過言じゃないんだ」

「そうなんですね~仏頂面で、心も入っていなかったですけど、守ってくれて嬉しかったですよ?」

「レシスは”フェルゼン”に、きちんとした守りの者を置くべきだと思う?」

「うーん? ここはログナと違って、ほとんど獣だらけですよね。もちろん、魔物相手にならそれで充分だと思うんですけど、他国はもちろん、ログナから訪れた人たちには誰が対応出来るのかなって思っちゃうんです」


 俺の国フェルゼンには、人間が住んでいない。

 レシスは最近戻って来たばかりだし、俺は旅を続けているという事情もある。


 賢者アースキンにいたっては、ここよりもログナを見回ってもらいたいというのが本音だ。

 レシスのいうとおり、フェルゼンに一人も人間がいないのは少しばかり心配なところがある。


 当初は人間を嫌うザーリンに従っていたが、彼女はここを守っているわけじゃなく、俺の魔法成長を願っているフェアリーに過ぎない。


 黒い杖を光に戻したのがレシスと知ったザーリンは、レシスを追い出すことを言わなくなった。


 フェアリーは妖精姿の時に、人間やオークに狩られていたことが関係していたらしく、出会った当初は俺以外の人間をここに近づけさせることも嫌がっていたが――


「……フェンダーが認めた人間なら、少しだけ置いていい」

「それって、危険なことには及ばせないって意味だよね?」

「そう。獣たちが受け入れなければ、ここに人間が住むことなどあり得ないこと。あの賢者のように、獣に好かれる人間なら問題ない」


 ザーリンが言うにはアースキン並の変態……ではなく、獣が心を許せる人間に限り、フェルゼンに住まわせてもいいということだった。


 そして俺が思いついたのは、あの騎士だ。


「――というわけだから、レシスとリウは今からミーゴナに行くよ」

「にぁっ! お兄さんに会えるのにぁ?」

「え、えーと、どうしてわたしなんですか?」

「まずリウはクライスのさを知っている。リウが認めているということを彼に伝えたい」

「ふんふん」

「そしてレシス。君は回復士だ。それに悪しきモノを弾く……というより、追い出す力がある。その力を見込んで、ミーゴナにいる人を救ってもらいたい」

「ほええ! か、回復士としてお役に立てる時が来るなんて、エンジさんに求められて本当に良かった~~!!」


 何やら大げさに感動しまくるレシスと、嬉しそうにしているリウに寄り、移動魔法を発動させた。


 これまでの移動魔法は全て外の森から飛ぶことが多かったが、それは場所の記憶をコピーする為に過ぎず、一度でも飛べばフェルゼンからはいつでも移動することが出来る。


 ルオが森の主となっていることも関係していて、彼女がここを起点としてくれたからこそ、恩恵にあずかれているというものだった。


「ほえほえほえ~~!? い、一瞬にして他国に来られるなんて、エンジさん凄い!!」

「一度来ているからね。そこの森を記憶していれば、いつでも来られるってだけだよ」

「う、海が見えます! 広いんですね~~!!」

「レシスはこれまで、海のある所に立ち寄ったことは無かった?」

「はいぃ……ラフナンさんを捜し歩いていた時も、何だか水のある所を避けるような道ばかりだったんですよ。一緒に来てくれた人たちは、道中の険しい山地とか原野とかではぐれちゃいまして」


 そうか、だからレシス一人だけになっていたのか。

 水を避けたのは光の杖がその選択をしていたに違いないが、魔法兵の思惑通りに進んでいたともいえる。


 ミーゴナに移動して来た俺たちは、真っ先に騎士クライスの家の庭に着いた。


 海上から襲って来た魔物の群れを追い払い出してから、しばらく経ったが、辺りはすっかり落ち着きを取り戻している様に見える。


 一面に広がる海の手前にそびえる城には、シャル姫と王がいて、多数の騎士がミーゴナを守護している。


 魔法にこそ耐性が乏しいようだったが、騎士の物理攻撃と耐性は魅力的だと思った。


 リウはすぐに彼の所へ向かうと言い出し、城に向かい出した。

 ここでの活躍は騎士たちも見ているし、リウが追い出されることは無いだろう。


 しばらくして――


「エンジさま~~! おにいさんを連れて来たのにぁ!」

「む? 何事かと来てみれば、お主はエンジか? 知らせも無くリウちゃんが来たからもしやと思っていたが、何用か?」

「姫にご挨拶を……いえ、その前に奥さんの調子はいかがですか?」

「あぁ、お主たちのおかげで良くなった。だが昔のように、共に外を出歩くほど回復はしておらぬ」


 光の属性石では怪我の回復や、症状の改善とまでは行かなかったようだ。


「そのことで朗報がありまして」

「ほぅ?」

「騎士クライス……あなたを我が国にスカウトしたく、ここに来ました」

「な、なにっ!? 俺がお主の国にか? 何故だ?」

「幼きリウをあなたと奥さんが助け、優しくしてくれたことです。獣……ネコ族も例外では無く、人間は獣を同じように扱うことが少なくありません。それでも、クライスは扱ってくれた。そして今のリウがあるんです」

「む、むぅ……そのことがお主の国に行くこととどう繋がる?」


 疑問を持たれるのは当然のことで、しかもフェルゼンにとなると、騎士国の自尊心が葛藤を起こしてしまうはず。


「リウが懐いた人は俺以外に、あなたと奥さんしかいません。信用のおけるあなたになら、国を守って頂けると思ったからです。どうか俺の国で騎士としてお守り頂けませんか?」


 ほぼ獣の国といっても間違いじゃない国に誘うのもためらうが、人が住める所も開放していくには、先人者が必要だ。


 リウと同様に、獣たちもこのクライスになら安心を覚えると踏んだのが、理由でもある。


「しかしあいつの具合が悪い以上、ここを離れるわけには行かぬ」

「では、もし奥さんの具合が快復すれば、来ていただけますか?」

「長らく患っている病をか? 光の属性石ですら、その気配を見ることは叶わなかったのだぞ?」

「完治とまでは分かりませんが、ここにいる回復士のレシスなら治せます。それを条件として、どうですか?」

「回復士か。手にしているのは、光の属性石がはめ込まれた杖というわけだな。回復士というだけでも、アレの体は幾分楽になるだろうが、完治となると難しいだろうな」


 ここでの狙いはレシスの回復ではなく、光の杖の効果でもない。

 彼女が持つ”絶対防御”だ。


 レシスのでたらめなスキルは、黒い杖を鎮めたどころか、杖を封じていた魔法でさえも全て弾き飛ばしたところだ。


 レシスならば、奥さんの病ごとはじいてくれると信じている。


「ほへっ? わ、わたしがですか!?」

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