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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
弐頁:属性との出会い

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63.黒い光を手にした勇者


「それじゃあ、俺は学院に向かいます。アースキンも気を付けて!」

「あぁ、待て。エンジよ、これを持って行け」

「……それは属性石?」

「うむ。ザーリン……妖精である彼女から属性石を受け取ったのだが、今必要なのはエンジの方だろう? それを使うことで、威力を倍に出来るのではないか?」

「しかしそれは賢者向けに作ったものなので……」

「それも聞いたが、とにかく持って行け。それと、光の属性石もだ。これも妖精の彼女が言っていたが、エンジは光の力を持っていないのだろう?」

「――! それはそうですが、それもザーリンが?」

「ああ。ログナに妙な結界魔法が張られているらしくてな、仕方ないがエンジに持たせてもいいと言っていたぞ」


 ゲンマにいた時、絶対防御のスキルを奪い、光の力を奪ったザーリンだったが、これも何かの狙いでアースキンに託したのか。


 光の属性石には、アースキン向けということで絶対防御ではなく、守りの光といった弱い魔法しか入れていなかった。


 これが何か役に立つということなら、持って行くしかなさそうだ。


「気を付けろよ! それと、毎度のことながらすまんな」

「昔は昔。今は俺の仲間なんですから」

「そうだな」


 それにしても大概にして欲しい。

 ログナにどれだけの、いや、俺に対しての憎しみというしつこさはもはや、勇者と呼べないくらいだ。


 山奥のアルクスはまだ正式な国興しをしていないが、ログナはすでに属国にし、俺の国でもある。

 

 それを知ってか知らずかは分からないが、痛めつけられたはずのラフナンと魔法兵サランのしぶとさは、魔物の襲撃よりもタチが悪い。


 これも光の獣が倒されたことによる影響があるのだとすれば、レシスの杖にも何らかの弱体化がなされている可能性がある。


 ログナの義務学院はログナの城のようなもので、中枢に建物がひしめき合っている。

 今でも冒険者を育成するために、相当数の人が学院に留まっていると思われるが――


『くらえっ!!』


 ――!?

 街の通りには人の気配が無く、すんなりと学院に近づけた……そう思っていたが、待ち伏せがあったようだ。


『本意じゃないが、エンジを弱らせるのが俺たちの役目だ!!』

『一斉発動! エクスプロジオン!!』


 おいおい、街中で爆発魔法を発動とか正気なのか。

 範囲系の炎魔法なだけあって、一人では発動が出来ないらしく4、5人で魔力を集めて向けて来た。


 爆発魔法は想像以上に、俺のいる周辺を巻き込んで爆発した。

 

 仮にもここに住んでいる連中なら、いくら人がいないといっても威力を抑えてもいいはずなのに、ラフナンの脅威の方が勝るのか、遠慮なしに放たれた。


『や、やった……これで、ラフナンさんにいい報告が……』

「「「おおおー!!」」」


 エクスプロジオン 属性炎 対象から範囲数メートルを巻き込んで爆発させる 威力B


 魔力消費S 連続使用不可 術者スキルに依存 コピー完了


 なるほど、一人で発動出来るけど魔力消費力がすごいのか。


 コピーすると同時に周辺を巻き込んだ爆発を無かったことにしたが、連中はまだ気付いていない。

 ログナの街並みは気に入っているし、俺だけでなく周りを巻き込むのは見過ごすわけには行かないな。


 そうはいっても、ラフナンに取り入れようとしている連中に反撃するのは違う。

 ここは素直に眠ってもらうことにする。


「残念だけど、俺に魔法は通じない。爆発魔法で街を破壊しようとしたのも許せるものじゃない」


『ひ、ひぃぃぃ!! ば、化け物だぁぁぁーー!』


「このまま学院に戻らせるつもりは無いので、惑わされながら大人しく眠っててもらいますよ」


『うああああ!? め、目が回る……く、来るなぁぁぁ!!』

『コ、コウモリの大群だとぉぉぉ!? や、やめろ、やめろぉぉぉぉぉ!!』


 ルールイから得た音波に加え、オベライ海上で出遭った魔物からコピーした幻惑魔法を組み合わせて、連中に発動。

 実際の所、どういう幻惑を見ているのかは俺には分からない。


 単に眠らせる前段階で幻惑魔法を放ったが、思った以上に現実悪夢に惑わされているようだ。


 最終的には精神がまいって、疲労と共に気を失うと思われたので、連中を通り過ぎて学院の中に進むことにした。


 アースキンの話では、ギルドにいた手練れの連中と召喚士、ラフナンに心酔する連中ごと一緒にいると聞いていたのだが――


『よぉ……落ちこぼれの書記』


 痛めつけても反省するどころか、何度でも俺に挑んで来る姿勢だけは、不屈の勇者と呼んで違いないのか。


 まるで魔王の玉座にでも座るかのように、ラフナンは学院長の椅子に座りながら、俺を出迎えた。

 それも、予想していた通り、レシスが手にしていた光の杖を片手にしながらだ。


 レシスの姿が見えないが、どこかに閉じ込められているのか。

 周りを見回していると、わざとらしい仕草を見せ、卑しい笑い声をあげた。


『ハーハッハハハ!! 書記の分際で、誰か探してるのかな?』


 ラフナンの笑い声は、耳障りな高笑いを俺に向けている。

 口調は今の時点で、俺を嘲笑った時と同じ静けさを保たせているようだ。


「その杖はレシスが手にしていた杖だ。お前のものじゃない」


 光の杖を手にしている時点で、レシスを守るものが無いことを意味している。

 レシスは傷を負っているのだろうか。


『何を言いだすかと思えば、見当違いなことを言いだす。盗人の書記は知らないだろうけど、この杖は元々は勇者である僕のものなんだけど、誰のものだって?』


 とんだ戯れ言を――と思ったが、光の杖はレシスが手にしていた頃の輝きを、失っているように見える。


 光は光でも、その光はまるで黒い光そのものだった――

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