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6.書記、共有と固有スキルを手に入れる!


「……よし、これで岩窟内のほとんどはコピー出来たかな」


 出来れば火を怖がるリウが眠っている間に、どこかで本物の火をコピーしたかった。松明(たいまつ)をコピーしても、攻撃に転じるほどの火力を得るのは簡単じゃない。


 しかし眠ったリウを置いて行くのは心配すぎる。急にいなくなっては悲しませてしまうだけだ。

 それはともかく、リウは今まで人間が襲って来たのをどうやって察知していたのだろうか。


「ふみゅ? エンジさま?」

「あ、起こしちゃったかな」

「んんん~……そろそろ襲って来る時間なのにぁ」


 やはりそうだ。この子は時間も見ずに察知している。


「リウはどうして分かるのかな? 時計も無いし、正確な時間は分からないよね?」

「気配を感じるにぁ! リウは見習い。でも狩人が必要なものは初めから持っているにぁ。これはネコ族だけの特別な預かりものなのにぅ」


(狩人の固有スキルってことか)


 勇者たちが来た時、リウの頭を撫でても何もコピーすることが出来なかった。

 

 その代わり勇者の変なスキルをコピーしたが……。

 魔法も編集出来る今なら、リウの固有スキルもコピー出来るかもしれない。


 コピースキルがどこまで成長して可能性を広げられるのか。

 でも、もう一度試してみるのはありだろう。


「リウ、もう一度頭を撫でてもいいかな?」

「エンジさまなら、いつでも大歓迎ですにぁ! 撫でられるの大好き~!」


 俺を慕うリウは耳をへたらせて、なでなでに備えている。


「ふにぁぁぁぁ……」

「な、何だか癖になりそう」


【狩人 危険察知S 索敵範囲A 甘えん坊】 


(なるほど。敵がどこから来るのかサーチ出来るのか。察知スキルも高い。甘えん坊はいいとして、サーチとスキャンをコピー……と)


「にぁ? もういいのかにぁ?」

「うん、ありがとね」


 コピーをしたところで共有というイメージが浮かぶ。リウの固有スキルが俺の固有スキルとして共有されたようだ。


 コピーすることで元の持ち主以上のスキルアップを果たせる。

 これがスキルの共有に違いない。


「リウ、周辺に気配はあるかな?」

「むむぅ……感じられないにぅ」


 リウの索敵の後に俺も続けてサーチをかけてみた。

 すると、頭の中で外の状況が見えだした。


「……ログナから敵意を感じさせるような人間は出て来ていない……みたいだね」

「にぁにぁにぁ!? エンジさま、リウより凄い!!」

「リウのスキルを一部だけ借りたんだよ。さすが狩人だね」

「そ、それほどでもないにぁ……にぅぅ」


 自分でも驚くくらいスキルが上がった。


 まさかサーチ範囲がログナの町入り口にまで広がりを見せるなんて。これもコピースキルの覚醒によるものなのだろうか。


 まずはサーチスキルを覚えられた。これによって、岩窟に留まる必要は無くなったはず。


(このままログナにこっそり戻ってみるか?)


 しかしあの勇者が留まっているのは間違いない。それよりは、岩窟の奥をさらに進んでみるのがいいかもしれない。


「リウ、おいで。花畑の先に何があるのか調べに行くよ」

「もう襲って来ないかにぁ?」

「それなら大丈夫だよ。昨日、勇者を追い返したからね」

「ふんふん」

「目立つ人間だから、また来たらすぐに分かるはずだよ」


 昨日の今日ですぐ来れるとは思えない。何より、仲間が回復しないことには。


 実際取られて困るものは寝場所だけ。それに勇者だっていつまでもここにこだわる必要は無いだろう。


 ――岩窟内の花畑。


 リウからコピーしたスキルでは、花畑の奥まで見ることが出来なかった。


 足を踏み入れたことが無い所はサーチ出来ず、ぼんやりとしか見られない。

 ここで出て来る可能性は、国外に繋がっていること。これは期待していいかもしれない。


 全身に松明の明かりを灯しながら進み、真っ青な空が見える花畑に着いた。

 すると、延々に広がる花畑の向こう側から風が吹き込んでいる。


 やはりそうだ。


「エンジさま、お先に行くにぁ」

「気を付けてね」

「あい」


 ネコ族であり狩人のリウの方が、俺よりも危険を察知することに長けている。

 自然の中を進むのは苦労しないはず。


 ここに至るまで、色々コピーをした。しかし身体的に強くなるところには至っていない。 

 

 手始めに使いたいのは火だ。だが近場に魔法士がいるわけでもなければ、敵意をむき出しにしている獣も感じられない。


 焚き火を起こし、火に触れれば編集が可能になるかもしれない……とはいえ、案外難しいのが現実だ。


 しばらくマイペースで進んでいると、水の流れる音が聞こえて来た。


「にぁにぁん! お水、お水にぁ!!」


 それほど大きくは無いが、川が流れている。


「うん。水が流れているね。ここは下流なのかな?」

「上に登ればどこかに行けるのかにぁ?」

「ここまで来たし行ってみようか。岩窟に代わる寝床が見つかるかもしれないよ」

「エンジさまに助けられたリウは、どこにでもついて行くにぁ!」


 ログナの山奥の拠点で長く生活。

 それをしながら、自分のスキルを調べられればいいと思っていた。


 そこに勇者ラフナンの襲来。

 彼らが岩窟に来てしまった以上、そんな余裕は生まれずいたちごっこになりかねない。


 しかも次は間違いなく攻撃性の高い魔法士と回復士を連れて来る。

 持久戦となるのは避けられない。しかも今の時点で攻撃力に乏しい。


 今のままの俺では、絶対的に不利になるのは目に見えている。


「エンジさま、人間の気配がするにぁ!」

「ん? 本当だ……数は十数人? 上流に街道があるみたいだ。行こう、リウ!」

「あい!」


 


 古代書を間違いで転写。そして勇者に騙されて追放。


 転写スキルの覚醒か何かでコピーから編集が可能になり、魔法を放てるようになった。とはいえ、ログナに帰れるわけじゃない。


 岩窟で出会ったリウと一緒に生き抜くためには自分の成長が必要だ。

 まずは外に出ることを優先させるべきだろう。


 ラフナンの言っていた回復士の女の子が気になるが、今は冒険者として踏み出すのが先だ。

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