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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
弐頁:属性との出会い

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54.書記、ネコと海港村へ ②


 リウの察知どおり一本道をゆっくりと進むと、絹をふんだんに使った白生地の外套を着ている小柄な女性と、近衛騎士らしき男が二人ほど立っていた。


 どうやら(くちばし)の鋭い鳥人族に囲まれているようだ。


 男たちは淡い色の帷子(ホーバーク)を着込み、アイアンの盾を装備している。国の紋様は見えないが、恐らくどこかの国から来ている連中のはず。


 回復士を守る騎士――なわけはないか。とにかく様子を見ながら、魔物の気を引いてみるしかないな。気取られないように近づくと話し声が聞こえて来る。


「人に見えるが鳥人族といったところか。何故我らを狙う?」

「ギャ、ギャ……人間にキョーミ無い。耳、首、付いているモノを寄こせ!」

「ふ、やはりそうか。獣もそうだが、飛ぶモノどもは光るものが好きらしいからな。だがこの方が身に付けているモノはそう易々とくれてやるわけにはいかぬな」

「ギャギャギャ、なら奪う!!」


 女性の耳や手首、首回り。ふんだんに散りばめられた宝石が光り輝いている。宝石を身に付けている女性を守っているということは、姫か王女といったところだろうか。

 

「ぐあっ――! ちぃっ、魔法を使うのか……!?」

「く、風圧で盾を持ってられない! どうすればいいんだ」


 魔法で何とかしなくても良さそうだなんて思っていたら、二人の騎士は鳥人族が起こした風で苦戦。見た感じ鳥の翼だけで起こした風に見えるが、魔力の流れを感じ取れた。


 そうなると、あれは風魔法として圧を与えているはず。それが分かれば魔法で何とか出来そう。


「きゃぁぁぁぁぁっ!?」


 などど呑気に思っていたら、風圧によって女性が飛ばされていた。上空にはそれを狙っていたかのように、複数の鳥人族が待ち構えている。


 これはまずい。騎士の方は耐えてもらうとして、女性の方を何とかしないと。


「ギャッ!? な、何ダ?」

「フゥーー! エンジさまの邪魔はさせないにぁ!!」


 いつ出て来るかと思っていたリウが、空にいる鳥人族らを次々と地上に落としまくっている。リウの素早い攻撃で敵の翼には鋭い爪痕がつけられ、空に浮く力を削がれたのか力無く地面に落ちて行く。


 俺はその隙にゲンマで使った風魔法の応用で飛ばされた女性を浮かしたまま、ゆっくりと降ろした。女性はどうやら気を失っているみたいなので、とりあえずこのまま様子を見ることにした。


 上空からの風圧に耐えながら手も足も出すことが出来なかった騎士たちも、真空の衝撃でしばらく立ち上がれないようなので、彼らが回復するまで大人しくしておく。


 しばらくしてリウが俺の所に戻って来た所で、女性は目を覚ました。


「――ど、どなたです?」


 抱えた感じでは小柄な女性と思っていた。だが声を聞く限り少女のようだ。


「ど、どうも。俺は通りすがりの書記です」

「書記……? そ、そこにいる獣は……」

「獣じゃないにぁ! リウはリウなのにぁ!!」

「き、騎士たちはどこ?」

「騎士ならそこで寝てますよ」


 やはりどこかのお姫様かな。


「……あなたがやったのですか?」

「いえ、俺は風であなたを」

「は、はな、放しなさい!!」

「痛っ!? いたた……」


 もしや誤解されてる?

 腕で彼女を支えているのに、その腕をつねりながら暴れ出した。


 人の話を聞かないのか、腕の上でバタバタと無理やり足を下ろそうとしている。


「むぅ~エンジさまに抱きかかえられている分際で、生意気なのにぁ!」

「仕方ないよ。鳥の姿を見ることなく飛ばされているし、鳥も逃げてしまったしね」

「でもでも、リウならエンジさまにずっと抱きかかえられていたいのに~」

「とにかくリウのおかげで敵を追い払えたし、騎士の回復を待ってから海港村に行こうか」

「あい!」


 ひとまず彼女を何とかしないと。


「ど、どこへ連れて行くというのですか! 無礼な真似は許さない! 放しなさい……放せ、放せーー!」


 何やら素の部分が出て来たようなので、彼女をすぐに立たせた。


「すぐ近くの海港村に行きます。俺とこの(リウ)は、そこに行きたいだけなので。これ以上の迷惑はかけませんのでそこまでお付き合い頂けますか?」


「お前が? ボクをどうするつもりか分からないけど、こ、これでもくらえー!」


「わぷっ!?」


【レムレース 幻惑魔法 対象に幻を見せ、一時的に動きを封じる 持続時間は短い】


 立たせた彼女が出して来たのは煙のようなもの。どうやら一応魔法のようだ。目くらまし程度かと思っていたら、コピーした限りでは何かに使えそうな気がしないでもない。


「魔法が使えるんだね。キミはどこかの姫? それとも……」

「き、効いてないのか? 何だよー書記って嘘なのかー!」

「嘘じゃないんだけどな」

「ボ、ボクの外套を見ても分からないなんて……、お前、外に出ない書記なんだな?」

「外套?」


 じっくり見ていなかった外套だったけど、じっと見てみても俺には分からないものだった。魚の形に見える紋様が縫われているだけで、珍しいようには見えない。


「うーん?」

「何で分からないんだよ。ボクはシャル! アルシャール・ミーゴナ! 国で二番目に偉いんだぞ」


 ミーゴナってこれから行く海港村の名前?


「リウ。ミーゴナ海港村……というか、ミーゴナって国だったりする?」

「ふにぁ? リウ、分からないにぅ……おさかなを届けに行っていただけなのにぁ」


 小さな村のお使いだとばかり思っていたのに。幻惑魔法をコピー出来たのはいいとして、何だか面倒なことになりそうな気が。

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