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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
弐頁:属性との出会い

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53.書記、ネコと海港村へ ①


 ログナに戻るため森に向かおうとすると、珍しくリウが何かを言いたそうにしながらモジモジしている。リウはどこに行くにしても素早くて俺に何かを言うことは今まで無かったが……。


 一体何だろうか。


「リウ? 何かな」

「エンジさま……リウ、行きたい所がありますですにぁ」

「改まってどうしたの? いいよ、かしこまらなくても。どこに行きたい?」

「ミーゴナ海港村に行きたいにぅ……」

「海港村? そこに何があるの?」


 決まった場所に行きたいだなんて何かあるのかな?


「にぅ……リウ、そこにかよっていたのにぁ」

「かよって……? そっか。じゃあそこに行こうか」

「で、でもでもログナに戻らないと駄目なのにぁ……」


 ログナでは賢者アースキンが上手くやってくれているはずで、俺としては、手土産を渡すついでに様子を見るだけでいいと思っていた。


 俺がいなくても賢者の実力はそれなりで、守りに関しては問題も心配無い。そう考えれば、滅多にわがままを言わないリウのお願いを優先すべきだ。


「リウが行きたそうにしてるなんて珍しいからね。行くよ」

「にぁぅ~……ありがとにぁぁ~! エンジさま大好き!!」

「――っとと、俺もだよ」


 よほど嬉しかったのかな。


 リウはパタパタと尻尾を振りながら、俺の胸元に飛び込んで来た。ピンと立ったり垂れたりを繰り返す耳と激しく揺らす尻尾は、もふもふとしていて最高の触り心地だ。


「フェンダー。属性石を!」

「ザーリンに?」


 リウの喜ぶ姿の脇で、冷静なザーリンが俺に手を差し出した。属性石を渡せということらしい。


「あなたが持ち続けていると、調子に乗って使いかねない」

「たとえ危ないことが起きても属性石を使ってどうこうは~……」

「とにかく渡す!」


 行く先でそんな場面に遭遇することが分かっているのか?

 ザーリンの口調がこんなに厳しいなんて。


「アルジさま、わたくしはネコに付いて行くことを拒否しますわ!」

「ええ? な、何で?」

「み、水は苦手なのですわ……何度も言いますけれど、濡れますのよ?」


 海に入るわけでも無ければ海辺に近づくとも限らないけど、コウモリが水を苦手とするのを無理やり連れて行くとなると正直厳しいかもしれない。


「ザーリンには来て欲しいんだけど、もしよかったらルールイと一緒にいてくれないかな?」

「……ん。属性石を受け取った。フェンダーには、リウと行く先で覚えて来てもらう。分かった?」

「は、はは……そ、そういうことか。じゃあ頼むよ」


 属性石を素直に渡したのが良かったのか、ザーリンの機嫌は良さそうに見える。


「アルジさまのお帰りをお待ちしておりますわ!」

「戻らなくても迎えに行くから待ってて」

「――はぁんっ! そ、そのお言葉、お約束とさせて頂きますわ!」


 身悶えるルールイを気にせず、ザーリンはさっさとこの場からいなくなった。

 その辺は相変わらずだ。


 ザーリンは俺とリウだけの行動を信用している――とはいえ、感情ではっきり出さない。

 それも妖精の彼女らしいといえばらしいけど。


「エンジさまと二人だけにぁん!」

「うん、よろしく」

「……何だかんだで、ザーリンは優しいにぁ」

「本当だね。リウのことを頼っているんだろうね」

「ふんふんふん~」


 味方が増えつつある中で、ザーリンが最初に出会ったのはリウだ。そんなリウには揺るぎのない信頼を置いているのかもしれない。


「ところで、そのミーゴナって村は遠いの?」

「歩いて行ける距離ですにぁ! コウモリが嫌がるほど水は多くないのにぁ」

「ん? でも海港村ってことは人間が多いよね? リウはそこにいたのかい?」

「おさかなを届けに通っていたのにぁ。そこにいる人間たちに悪い感じは受けなかったにぅ」

「……なるほどね。それほど規模の大きい海港村では無いってことなのかな」


 リウが行きたい場所ならそんなに危険なことは無いかも。リウに付いて行くのはもちろん、自分でもサーチして確かめておこう。


(この辺りがゲンマの森で、何だ……意外と近くに海があったんだ)


「リウ、おさかなを届けに行っていた人たちにお礼を言いたいのにぁ」

「そっか、それは会いに行きたいよね。俺に出会う前に優しくしてくれた人間たちがいたことが分かったのは嬉しいことだよ」

「にぅ」


 リウは俺と初めて会った時もそこまで人間嫌いを出していたわけじゃなかった。きっと人間に対して、いい思い出があっての出会いだったということなのかも。


「むむっ……エンジさま、感じていますかにぁ?」

「うん?」

「この先で沢山気配を感じますにぁ」


 サーチで範囲を確かめた後、基本的に先を歩くリウに任せながら進んでいる。危険な気配に関してはリウが教えてくれることが多い。


 俺も一応察知スキルは覚えているが……。

 やはり、リウの狩人スキルの方が頼りになる。


「魔物と人間が数人……交戦中か」

「エンジさま、助けますかにぁ?」

「一本道の先に海港村があるんなら、見過ごすわけにはいかないかな。様子を見ながら近付こう」

「あい」


 物理攻撃と素早さはリウに任せ、俺は魔法展開。二人だけで行動している時の最適な行動だ。


「リウは魔物の背後に回りますにぁ。エンジさまは人間たちの近くに!」

「そうするよ。それじゃ、行こう」

「にぁ!」


 出会ったことが無い魔物か、あるいは襲われているのは村の人たちなのか。俺は気付かれないように、ゆっくりと近づいた。

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