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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
弐頁:属性との出会い

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51.書記、即席属性石を作って手土産にする


 落とし穴トラップにまんまと引っ掛かり俺はかすり傷を負った。だがザーリンのおかげで回復し、リウに癒し効果付きの回復魔法が共有された。


 そのまま落ちた穴から進み、上り坂になったところでルールイと合流を果たすことが出来た。


「アルジさま~! お怪我はございませんか?」

「うん、それならリ――」

「ふんふんふん~リウが治してあげたにぅ。コウモリには出来っこないことにぁ~!」


 得意げなリウが珍しく前に出て、自己主張を始めた。


「そ、それくらいわたくしにだって出来ますわ! ネコごときに遅れを取ることなど……」

「そうにぁんだ? 次もリウが治すにぁ~」

「ム、ムカつくネコですわ」


 ルールイは俺に駆け寄り抱きしめて来る勢いだったのに、リウに止められ悔しそうにしている。リウも回復とモフモフな癒しが出来るようになったことで自信をつけたみたいだ。


 といっても、リウは前を任せる方が安心出来る。特に絶対防御を無くした今は、自分で防ぐことを考えなければ。


 そんなことを思いながら出口に向かって歩き続けていると、


「フェンダー、ここの石」


 トラップは自分のせいじゃないと言っていたザーリンが、似たような壁を指差し触るように促して来た。


「え? またトラップに引っかかってしまうんじゃないの?」

「それはもう無い。起こそうとする災いを預かった。だからもう起こらない」


 ザーリンは意味不明なことを言いながら壁や床に散らばる色とりどりの宝石を指し示す。さっきまでの壁と違い、城壁に近い造りの壁だ。宝石は壁じゅうに整った状態ではめ込まれている。


 さっきはそんな余裕が無かったが、床にも宝石が点在していて拾い放題だ。


「どれでもいいの?」

「違う。属性に適した色を拾う。見れば分かるはず」


 ザーリンはそう言うけど……。

 赤は炎で分かりやすいとして、青緑黒。色によって適さない魔法があるような。


 と言いつつ、気づけば夢中になって宝石を拾いまくっていた。


「赤青黒……こ、これで何個目?」

「それくらいでいい。あとはそれよりも威力を弱めた属性を石に込める。それならきっと平気」

「威力を? そうなると水が出て来るだけの石になるんだけど……」

「つべこべ言わない。それを作れば街に侵入しても襲われない」

「じゃあ作るけど……」


 属性石にするには、属性に当てはまる宝石に魔法を込める必要がある。赤色の宝石には水魔法は込められ無かった。


「そう、それをコピーと似たようにイメージで込める」


【ガーネットにファイアストームをコピー 強さを編集 強さE 即時発動可能】


「こ、これでいいのかな?」

「それはこの都市の人間用に。威力が強いのはあの賢者に」

「え、俺のは?」

「フェンダーに属性石は必要じゃない。無意味」

「無意味って……でも持っておけば便利なんじゃ?」


 自分用かと思ったら全て手土産用とか、拾った苦労はどうすれば。


「魔法スキルは属性石を作ったことで成長出来た。だから必要ない」


 相変わらずスパルタだな。ザーリンが奪った……いや預かった絶対防御の石。これは光属性が強力かつ光でありながら、危険なことを起こさせる隠れ特性があると言っていた。


 レシスが装備している杖は更に強力なもので、絶対防御で守られるのと引き換えに敵を惹きつける厄介な石ということらしい。


 つまり絶対防御を固有スキルにしていた俺は敵としては分かりやすい的だった。勇者はレシスにこだわっていたが、俺にもこだわっていた。


 そのことを考えれば何となく納得出来る言葉だった。


「エンジさま~お外! 眩しいにぁ」

「そろそろ出口かな?」


 尻尾を勢いよくフリフリしながらリウが真っ先に外の光に向かって出て行こうとしている。負けじとルールイも、翼を広げて外へ羽ばたいて行った。


 外というか街の中のような気が……。勝手に行かせて平気なんだろうか。

 そう思っていると、


「ぎにぁぁぁ!?」

「な、何をされますの!?」


 予想通りの声が聞こえて来た。二人の声と同時に、ザーリンは少女の姿からフェアリーの姿に戻り俺の外套の中に隠れてしまった。


「エンジさま助けてにぁ!!」

「アルジさま~アルジさまぁぁぁ!」


 喧嘩ばかりするけど意外にいいコンビなのか?

 

「リウ、ルールイ、どうし――」


 とにかく急いで向かうと、二人はものの見事に取り囲まれていた。堅そうな防具を装備した攻城兵が数十人くらいだろうか。


「貴様たち、ゲンマ鉱山から出て来たな? 我が国の宝石を奪いに来たか!?」


 否定出来ないことだけど抵抗したら駄目な気が。

 

 そういえば手土産用の属性石が使えるのか? 

 もしかしてザーリンはこの為に属性石を作らせた?


 こうなったらリウたちも知らないことを見せつけて、この都市の人たちを信じさせてみるか。


「いいえ、俺……私は旅の魔法士です。外から感じた可能性を信じ、ゲンマの民の力となるべく属性石を作って参りました」


「――何っ!? 属性石を? それはお前が鉱山で作ったというのか?」

「ほ、本当なのか?」

「属性石なんて作れるのか……」


 などと、何やらざわめき始めた。嘘と疑わずにいるということはそういう人を探していたことになるけど。それなら勢いそのままに話を進めよう。


「作れます! 鉱山で眠る数々の宝石に手をかざし、属性石を作り出したのです」


 やはりこの答え方で間違いない。


「証拠を見せよ。ここには我ら攻城兵、そして民がいる。属性石を使って魔法を示せ!!」


 これがザーリンの狙いだとしたら、一体どこまで先のことが見えている妖精なのだろうか。とにかく大量に作り過ぎた属性石を使って、賢者のように見せるしかない。

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