47.書記、属性神獣に好かれて守護を得る
まさか編集することを拒まれるなんて。純粋な魔法じゃないからだろうか?
サランの雷魔法は罪裁きの意味を持ち、ダメージこそ無いものの見えない力で裁きが下される。つまりコピースキルに、何らかの枷がかけられた……。
もっとも、仕掛けたサランとそれを指示したラフナンは俺を消し去ることだけに夢中になっているだけで、魔法にどんな効果があるのかまでは気にしていなかったように思える。
「へっ! ざまーねえな!! 所詮落ちこぼれ……。何だぁ? 何でこんなとこにガキがいやがる」
「勇者様。書記の足掻き……幻に決まっていますわ。このまま毒に耐え封じられの間を耐え凌げば、幻も書記も完全に消えることでしょう」
「そうか、幻か! 早く消えやがれ! 毒も拘束魔法もウザすぎるし無駄なことだ。こんな程度で許してもらおうとしていたんだろうが、そんな簡単に事を済ませ――うっ!?」
ラフナンとサランの声こそ聞こえて来ているものの、サランの魔法はダメージ魔法では無く行動不能魔法。罪裁きこそされないとはいえ、このままではラフナンたちの方が先に回復してしまう。
それよりも村にいた小さな女の子が近くに来ている? こんな危ない所にいられてもどうすればいいのか。
「……怖いかお、ひと、ひと。悪い人、人間……ふたり、裁く」
女の子の声がはっきりと聞こえて来た。
すると、
「よ、止せ、やめろ!!」
「勇者様っ……! お逃げくださ――」
ラフナンとサランの叫び声が聞こえて来た。そうかと思ったらすがる声が響いてきた。
「お、俺が悪かったから、だから、だからやめてください、どうか、どうか――」
「勇者さまぁぁぁ――!!」
彼らの懇願をかき消すように、ピシャーン、とした轟音が辺り一帯に落ちた。
劈きの音で雑音は全く聞こえなくなり、目の前が全く見えなくなった。同時に、村に近づく前に感じていた痺れを全身に帯びたような感覚がある。
彼らの状態は不明ながらも、俺にかけられていた枷が取れたようで、途端にイメージが自然と浮かんで来た。
【レビン 属性神獣 雷ランクB ジャッジスパークを相殺 認めた者の成長を促進させる】
魔法とかじゃなくて守護魔法?
コピーは出来た……でも、攻撃的な魔法として使えるものじゃないような。
「うーん……」
「おきて、起きて。男の子」
「ううーん? え、男の子?」
コピーをした直後、俺はいつの間にか意識を落としていたらしい。女の子の起こす声によって目を覚ました。地面に横になったままの俺の目に映っているのは、村で声をかけて来た小さな女の子だ。
「レビンの山を守った。悪い雷を代わりに受けた……レビンは男の子、護る、護る」
「え、あ……」
おそらく目の前に見えている女の子は雷属性の守護神獣。そしてこの子が空から落としたのが、本当の雷魔法に違いなく、一帯の人間に何らかの力を注いだ――と見るべきか。
ラフナンとサランの姿が消えているのが何よりの証拠。消滅させたというわけでは無さそうだが、あのラフナンに弱音を吐かせるくらいの雷を浴びせていたし間違いない。
「レビン……キミは守護神獣?」
「山と村、大地を護る。男の子も護る」
「それって、俺のこと?」
レビンと名乗る見た目が明らかに小さな女の子は静かに頷いた。どうやら俺は守護神獣に気に入られてしまったらしい。
これではっきりしたことは、今の自分の状態は防御的な成長段階にあることだ。
「男の子、まだ、まだ覚える。またグロムに来るといい」
「そうするよ。ところで、あの二人はどこに行ったのかな?」
「また戻る……戻るまで、眠る」
「どこかで眠っているのかな……」
魔法兵のサランは分からないがラフナンの弱い面が表れたのは、いい傾向なのかも。
「ところでレビンは俺の仲間に――あれ? いない……」
属性の守護神獣から得られた魔法は今後の成長を促す類。攻撃魔法として編集することは出来なかった。他にも属性神獣がいるとしたら、助けとなるような魔法をコピー出来るのか……悩みは尽きそうに無い。
俺の目的は魔法を使って自分が強くなることだ。だが、敵であってもむやみに傷つけることじゃない。コピーをしまくれば強くなるのは何となく分かるし、怖れを抱かれる存在となる可能性も否定出来ない。
しかしそんな気持ちを持っていれば、全てを極めることなど出来ないはず。
とはいえ、今回はひとまず守護を得ることが出来た。今後もサランやラフナンのように悪心を持つ連中が増えないとも限らないことを考えれば、ザーリンの言葉を信じて次のスキルアップを図るように進むしかなさそう。




