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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
弐頁:属性との出会い

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46.書記と悪心の執念者たち


 リウやザーリンたちと別行動、自分だけで動くことになった時点で何となく予感があった。そもそもかの者を追い込んだのは間違いなく俺。悪い流れを作ってしまったのだと思っていた。


 その為にレシスを行かせたはずなのに、


「何故なんだ……?」


 勇者と言っていいのか分からないほど、ラフナンは変わり果てた姿で俺の前に現れた。しかも一緒に行動をしている者とともに。


 そんな彼らに対し、疑問の言葉しか浮かばなかった。


「何故かって? 落ちこぼれ書記が生意気にも魔法を学び、使うようになったのは誰のおかげだ?」

「もちろん、ここにいるラフナン様のおかげでしょうね」


 一緒にいる女性は確かタルブックの……。

 俺の気付きに対し、


「我が湖上国家をおびやかし、護られていた数々の魔法をも奪った害悪の書記めが!! 随分と戯れ言をほざくものだ……」

「書記が過ちを犯すこと自体、ギルドで出会った時から確信していた! だからこそ追放してやったんだ! まがい物の魔法使いは奪わなければ強いと感じることが出来ないのだろう? なぁ……? 書記のエンジごときが!!」


 アースキンが言っていた。かつての勇者は異常なことを言う者では無く、正義感溢れる優しき青年だったと。


 それが本当なのかと疑うしかないくらいに、悪心に満ちた言葉を放っている。勇者の悪心を増幅させるかのように彼につき従うタルブック魔法兵のサラン。


 彼女は俺を睨みながら、ラフナンに何かの言葉を囁き続けている。だがたとえ多勢だろうと、強力魔法であろうともラフナンたちに負けることは無い。それなのに何か嫌な空気が全身にまとわりつく。


 ラフナンは魔法を使えず、今までは援軍の魔法士や召喚士たちを使って襲って来ていた。しかし新たに手を組んだのは、タルブックの魔法兵であるサランだった。


 二人に共通しているのは、魔法耐性が低く物理耐性に強いこと。それなら俺の魔法で彼らをここから追い出し、反省をしてもらうしか無いわけだが。


 しかし村を襲って来ているという時点で、その程度の攻撃では済まされない。


「くく、ははははっ! 俺様を追放したつもりだろうが俺様は認められた勇者! 書記のまがい物魔法程度でいなくなると思ったら大間違いなんだよ!!」


 性格も態度もだいぶ違うな。


「悪いが、俺は追放したつもりは無い。そこまで憎まれることをしてないはずなのに、何があんたを変えたっていうんだ? レシスのことだって――」


 何を言っても通じそうに無いが、レシスのことには反応するはず。


「憎い……だって? はーはははは! レシスは俺が拾った役立たずの回復士だ。レシスを勝手に奪っておいて憎まれないとでも思ったのか? 憎いというよりも、書記ごときがログナにいたことこそが俺を憤らせた! ただそれだけに過ぎない!!」

「フフフ……そう、その通りです……勇者さま」


 かつて組んでいた賢者が知る正しき勇者の姿はすでに消えている。今はただ、憎しみの連鎖を繰り返すだけの者に過ぎないようだ。


 こういう相手にどうするべきか。


 今までにコピーと編集を繰り返して来た魔法を使ったとしても、成長途中のせいか致命傷を負わせる感覚は得られていない。召喚士本体からコピー出来たスキルも、まだティアマトだけにとどまっている。


 ザーリンが言うには召喚を意のままに放つには数をこなすことらしい。そうだとしても、召喚は特殊魔法なだけに使い勝手が良くないのが現状だ。


 出来れば敵を殺めずに懲らしめて、そのうえで変える強さを自分でコントロールしたい。


「――どこを見ていやがる!! エンジィィィィィィ!!」


 気づけばラフナンから攻撃を受けていた。もちろんダメージは感じられないが、サランが何かを支援したのかラフナンの剣から焦熱の気配を感じる。


「無様に熔けろよ、書記ィィ……!!」


 剣に魔法を宿した魔法剣?

 ――かと思ったが、向かって来るラフナンは魔法のたぐいを使いこなすスキルは有していない。


 しかし剣から感じられる熱は魔法兵による禁呪魔法を帯びたとしか考えられず、おびただしい畏怖を感じる。何故か嫌な感じがついて離れない。


「サランーー!! さっさと下せ!」

「仰せのままに……フフフ」


 空に手を掲げたサランは曇天を呼び、不自然なまでの雷を起こしている。その狙いは俺では無く、無関係な村であるグロムに向けようとしていた。


 だが、俺はすかさずラフナンの全身に毒魔法を発動。


「ぐああああ!? エ、エンジィィ……がぁぁあ――」


 ラフナンの動きを封じると同時だった。村に狙いを定めていたサランの雷を俺に向けさせ、彼女の全身に強力なホールドをかけた。


「ざまあみやがれ、雑魚書記がーー!! てめえなんぞが村を守ろうとするから、そんな目に遭うんだよクソがぁーー!! いい気味だ……ぐあぅっ、くそが……」

「ラフナン様っっ!!」


【タルブック禁呪魔法 ジャッジスパーク 属性雷 罪を感じる者を裁く効果】


 なるほど。俺のせいで村に何かあったとしたら罪悪感が生まれてしまう。だから狙ったのか。あまり効果的な魔法になりそうにないことだし、編集をするしかないな。


【編集 ジャッジスパーク 不可】


 あれ? 編集出来ない?

 ラフナンとサランの動きを封じながら、雷を浴びている最中こそがチャンスなのに……。

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