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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
弐頁:属性との出会い

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45.書記、神の恵みと悪意の光に出遭う


 痺れを微妙に感じながら村へと足を踏み入れた。ルールイが言っていたような不穏な空気は感じられず、村人たちに変わった様子は見られないが……。


 一部の村人たちの表情が気になる。

 何となく見つめていると、


「お前さん、旅の冒険者か?」


 などと、さすがに気付かれた。声をかけて来たのは身なりが整っている上、どことなく風格を漂わせた初老の男性だ。


 初老の男性以外に男性を見ないから村長かな?

 それ以外に周りを見回すと、農作業中の女性や近くで手伝いをしている小さな子供の姿が見える。


「そ、そうです! すみません、手を止めさせてしまって」

「そうかい、それじゃあ天に気を付けなされ」

「天?」


 空を見上げ視線を地面に戻すと、地面の所々に何かが起きた跡が残っている。たまたま俺が立っている近くがそうなのか、穴だらけだ。


 村長らしき人にもう一度話しかけようとした時。

 空が急に暗くなり曇天となり、時を経ることなく上空から激しい音とともに眩い光が。


 まさか落雷が?

 慌てかける俺に対し、他の村人たちはこぞって上空を目がけて両手を合わせ始めた。


「な、何をしているんです?」

「神からのお恵みが参られる……旅のお方も共に祈りを!」

「か、神!?」


 ――うわっ!?


 祈りをと言われてすぐに行動を起こせなかった。かと思っていると、目の前に眩い光が降り注いだ。思わず目を閉じしばらく経ってから目を開けると、地面が焼けたようにえぐれていた。


「あ、危なかった……」


 受け止めてコピーをすれば雷魔法を得られたかも……魔法とは限らないけど。


「祈り続けることで、村には雷が招来するようになりましてな」

「え、それは良くないことなんじゃ?」

「何を申されるか! ここは導雷針……神が参られるようになってから、豊穣を賜り続けている村なのですぞ!」

「豊穣?」


 周りの畑をよく見れば稲ばかりが植えられている。稲の結実時期に雷が多いと文献で見たことがあるけど、そういうことなのかも。


 それにしたって雷を神格化なんて。俺はともかく当たったら大変なことになるはずなのに。


「……さて、旅の者に尋ねられる前にこの村の長であるテオルが、知りたいことについてお教えしましょうぞ!」

「あ、俺はえーと、書記のエンジと言いまして」

「書記? ふむ……なれば、我が村"グロム"のことを記しなされ。神もお喜びになる」

「そ、そうですね。その神に当たった人は今まで?」

「……神の光を浴びればそれだけで恵みが――」


 これ以上聞くのはやめとこう。おそらく他の男たちは雷によって命を――


「わし以外の男たちは恵みの光におそれをなしましてな。女子供を置いて逃げてしまったのです」

「へ? 雷に当たったんじゃなくて、逃げた?」

「神に限って我らに当てるなどと、ある筈が無い!」


 どれだけ信じているのか知らないけど、少なくとも小さな女の子たちは怖がって動けずにいる。農作業中の女性たちも村長に仕方なく従っている様に見えなくもない。


「ちなみに雷は魔法によるものですか?」

「初めは天からの恵みと思えたのだが、最近は家の屋根に当たるようになりましてな……」


 神の仕業だとすれば、魔法ではなく召喚の獣のようにコピーの出来ない雷のはず。家の屋根に向けるようになったとすれば、意図的な魔法と思えなくも……。


「…………」

「うん? どうかしたの?」


 雷に怖がっていた女の子が俺に駆け寄って来た。か細い声で何かを伝えようとしているみたいだ。


「ひと、ひと……こわい顔、ふたり」

「怖い顔の人を見たのかな?」

「……うん」


 女の子はそう言うと、そのまま自分の家らしき中に入って行く。


 村長さんは神と疑わないみたいだけど、もしかしてこの村に何かが来ているのか? 神かどうかは置いといて、自然の雷でえぐれた地面からは小さな芽が見えている。


 しかし村の人の家に落ちたらしき雷は屋根に焦げをつけただけ。明らかにおかしい。俺一人だけでこの村に起きていることを突き止めて、確かなものにするしかないかも。


 魔法による襲撃ならコピーするまでだ。そうではなく自然の恵みだとしても、真意は確かめたい。

 そう思っていると、遠くの方でドンッ、とした音が響いた。


「あっああああぁぁ……!!」

「えっ? ど、どうしました?」

「や、山に光が落ちた……れ、連続で落ちるなんて、まさかこれは……」


 あの雷と音は間違いなく魔法によるもの。だとすれば村を襲う賊の仕業か。


「俺が様子を見に行ってきます。テオルさんたちは家の中に避難を!」

「あ、あぁ」

 

 少し走ればすぐに山のふもとへ向かえる距離のようなので、そのまま光り続けている場所へ近づくと――


「おやおや、誰が来たかと思えば書記……だったか?」

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