表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
壱頁:コピー・アプレンティス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/180

41.書記、レシスに自由を与える


 レシスはログナに戻って来る前から落ち着かない様子を見せていた。

 彼女は色々おかしな面があるが、仲間想いの純粋な回復士。


 そう考えると、何を言われるか想像はついた。


「……ダメ、ですか?」

「いや……」


 自分には優しかった勇者、しかし俺や山に酷いことをした事実。

 そのことを信じられずにいたレシスはずっと悩んでいた。


 ログナで見た光景と仲間たちの話。それらを聞いて密かに決意を固めていたらしい。


「君は信じていたいんだね?」

「はい、あの……勝手なことをしてごめんなさいです。でも……」

「レシスはもう俺の仲間だし迎えに行くよ。だから無理はしないようにね」

「む、迎えに? そ、それって、お嫁――」


 何でそういう答えになるんだか。


「もちろん違うけど、君がどこにいても俺は分かるから」

「あ、ありがとうございます」


 俺がログナに心残りを置いていたように、レシスも勇者に心を置いている。

 自分で彼を説得をしたい――そういうことみたいだ。


 肝心の勇者がどこに飛んだかまでは分からないけど。

 レシスなら多分探せそうな気もする。


「じゃあ、また」

「はい、エンジさん」


 仲間たちとともにレシスはログナを後にした。


「エンジ。いいのか?」

「彼女は元々勇者についていたからね。説得出来るならしたいってことだと思う」

「ふむ……あの杖を手にしている限りレシスには何事も起きぬだろうが、お主のことだ。二人の男たちに何かの印でもつけてあるのだろう?」

「印じゃないけど、分かるようにはなっているよ」

「ならば問題無いな。ログナのことは私が何とかしておく。エンジはアルクスに戻るがよいぞ」


 レシスはトレースで跡を追うことが可能だ。

 とりあえずログナのことはアースキンに任せ、俺だけがアルクスに戻ることになった。


 ◇◇


「――というわけなんだ」


 上手く説得出来る――そう思っていたのに、


「だから言った。人間、あの女はそうなるって」

「え? ザーリンにはすでに見えていたってこと?」

「賢者はここに戻る。でもあの女は居着くことを望まない」

「冒険者だからかな? 気が済むまで探しに行ってもらおうと思っただけで、また戻って来ると思うんだけど……」

「どっちでもいい。あの光の石は、フェンダーの力と離れたがっている」


 やっぱり厳しかった。まさしく予想通りの反応だ。

 ザーリンはそもそもレシスを仲間にすることに反対していた。


 レシスのことよりも、さっさと魔法を覚えて来てと言われてたし無理もないけど。

 

「エンジさまにぁぁ!! おかえりなさいませにぅ!」


 リウは真っ先に俺を見つけ、パタパタと尻尾を振りながら勢いよく抱きついて来た。

 モフっとした毛触り、嬉しそうにしている耳と頭……撫でるだけで何とも心地のいい気分に。


「にぁうん~にぁうん!! エンジさま~」


 ふんふんと顔を擦り付け、甘えて来るリウ。

 間近で感じる彼女に触れると、何となく体の成長を果たしているようにも見える。


「うんうん、早速だけどリウ。今からまた外に出かけるよ」

「はいにぁ! すぐに行けるのにぁ」

「ところで、リウ。もしかして大きくなった?」

「にぅ! ネコ族は成長するのにぁ! ムフフ~エンジさまにもっともっとお傍に置いてもらえるような大人なネコになるのにぁ」


 大人なリウか。どんな色気を出して来るのだろう。


「……フェンダー、早く出発する!」

「はいはい! い、行くから」


 レシスが抜け、とりあえずログナは賢者任せ。

 アルクスはルオたちに守ってもらうことにして、俺たちは移動魔法で機巧都市があった所に。


 飛んだ先で勇者の気配を感じることがあるかも?

 ――などと思っていたものの、そう都合よくいるはずも無かった。


「いたとしてもすでにどこかに行っている。人間の何を気にする? 絶対防御もある。どうして怯む必要が?」

「ついつい反射的というか、分かっていてもそうなるのは仕方ないよ」

「フェンダーは古代の力を得ているのに、変」

「ご、ごめん」


 相変わらずザーリンは厳しい。それに引き換え、リウは嬉しそうに甘えて来る。

 アメとムチみたいなもんか。


「エンジさま、近くで何かが戦っているのにぁ! 行くです~?」

「えっ? あ――本当だ」


 リウと一緒の時、範囲サーチは彼女優先。

 加えてネコ族の聴覚は鋭いことから、人間である俺よりは反応が早い。


 こういう時の彼女の反応はすごく頼りになる。

 リウの言う通り森を抜けた先の林道では、複数の勢力同士が戦いを繰り広げていた。


 ザーリンはこういう時は姿をどこかに隠し言葉もくれない。戦いに関しては基本的に関わりたく無い。ということを徹底している。


「俺も関わりたくは無いんだけど、それが魔法によるものなら見てみたいんだよなぁ」

「行くのにぁ?」

「近くまで行って様子を見ようか」

「あい!」


 レシスがまた戻って来るまでに味方は多ければ多いほどいい。

 それまでに魔法の種類も増やしておかなければ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ