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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
壱頁:コピー・アプレンティス

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40.書記、荒れ果てのログナを属国にする 後編


 俺をギルドから追い出したのは勇者で間違いない。

 間違って古代書を転写したことの言い分は通らず、勇者の言っていたことが正しいと誰もが思っていた。


 今でも主張は譲らなく、俺への謝罪を得られることは無かった。


 そもそも勇者の態度や行動に異変を感じ始めたのは、とあるダンジョンで魔物に守られていた古代書を持ち帰った時から始まっていた。


「な、何と……! では、エンジが……というよりも、全てはそこからの話では無いか!」


 レシスが持つ光の杖の石は落ちていただけで奪ったわけではない。そのことから、彼女自身は影響を受けていないことも判明。


 執拗に奪おうとし、返して貰おうとする勇者の態度。それらは見えない存在からの罪業によるものだった。


 正しいと思って行動して来た勇者が良心の呵責にさいなまれ、闇にのまれた。


「以前はあんな勇者では無かった。そういうことですか?」

「性格は以前からあんな感じだが、あそこまででは無かったと言っておく。書記を追放したことは、今でも正しいと俺らは思っている」

「そんなのっておかしいですっ!! どうしてそんなこと!」

「いや、いいんだ。レシスはその場にいなかったし、間違いとはいえ転写したのは事実だからね」


 レシスだけは俺が追放された現場にいなかったから無理も無いけど。


「でも追いやるなんて、そんなの……!」

「そのおかげでって言ったらおかしいけど、今があるからね。俺はギルドに戻るつもりも無いし、仕方無いよ」

「……エンジさん」


 今さら謝られたところでという話だし、今では自分の領地と仲間が増えつつあるし。

 問題はラフナンがログナにもたらした災いだ。


 かいつまんでいえば、罪なき国民を巻き込んでログナの兵力を削り、国王に責任を押し付けたところだろう。他国が侵略したわけでもない。


 それなのに勇者の連続した不可解な行動は、国力を落とすに至った。

 王も国を追われ、平和だったログナの生活に陰りが見えた。それが今の現状を現わしている。


「そ、それでは、この国は今やあるじ無き地と同義では無いか!」

「仕方が無いことだ。ギルドだけでどうにか出来るものでもない」


 ギルドが勇者に依頼しなければ荒れることも無かったログナ。そして今は、閉鎖をして外に出ないようにしているだけのこと。


 原因を作った勇者はどこかに飛ばしたからそれはいい。

 しかし、いずれこの国に戻って来る可能性を否定出来ないのが困ったところ。

 

 俺もログナに戻るつもりは無いとはいえ、ここが故郷であることに変わりはない。

 そうなると思いつくのは――


「エンジよ。国を守り、救って認められるのもいいのではないのか?」

「うん、そう思っていたところ」

「え? ええ? ど、どういうことですか?」

「我が国には愛しき獣がいる。しかしそれだけでは領地を拡げられるものではない。本来ならば、人を多く集めねばならぬのだが……」


 獣好きの部分はスルーしとこう。


「つまりアルクスが国として認められ大きくする為には、他国を属国にするしかないってことなんだ」

「ええええ!? ロ、ログナを吸収するんですか?」

「ふ、そういうことになるだろうな」


 愛しき獣の国と言い切られても困るけど。

 フェアリーであるザーリンは、人間の味方は必要無いと言っていた。

 

 確かにルオやドールが守っている以上は、そうしていくのが正しいのかもしれない。


「ギルドマスター、そして勇者の仲間のあなたたちには酷かもですが俺がこの国を守りますよ」

「書記のお前がか!? バカな、いくら賢者を味方にしているといっても言い過ぎだ!」


 誰もが信じられないといった顔を見せている。

 信じてもらうよりも見せるしかないけど、とりあえずコピーオークでも数体置いておこう。


 通りの荒れた道や、崩れた外壁は後で何とかしてもらうとして。

 機巧ドールをログナに連れて来るのも手か。


「――というわけで、よろしく頼むよ」

「ヒト遣いがオカシイ! フェンダーはワタシたちをこき使うナ!!」

「と、とにかく、君なら数日で修復出来るよね? 頼むよ、ピエサ」

「し、仕方ナイ。フェンダーの為じゃないんだからネ? 勘違いシナイデよネ!」

「あ、うん……」


 俺の意思伝達によって、いくつかのドールたちがログナに到着。

 名を付けたピエサはより人間に近くなっていて、顔を赤らめるといったことまで出来るようになっていた。


「――あんな機械人形まで……お前、普通の書記じゃなかったのか?」

「書記ですよ。そしてあなたもギルドマスターです。これからギルドをもっと盛り上げてくれないと、国は強くなれないので人を集めてください」

「……そうさせてもらう」


 和解するつもりもなければ謝ってもらうつもりもない。

 その代わり国の為に動いてもらう。それしかギルドの存在意義は残されていない。


「エンジ。学院に残っていた者たちはどうする?」

「そのまま残ってもらうよ。特に召喚士たちのオリジナルには興味があるから」

「オリジナル……? よく分からぬが、まぁいい。では書類上の王は、エンジで確立しておくぞ」

「よろしく頼むね」

「うむ」


 勇者によってすでにログナの王は空位。

 国まとめの人間を立てる者もいなかったことで、俺がとりあえずの王となった。


 もちろんログナに住むわけじゃないので、属国の王として名を置くだけだ。

 それはともかく、


「くそ、何でこんなこと……」「全くだぜ」などと、ぶつくさ言っていた二人と握手をした。


 レシスの頼みだからしょうがない。


【ロデット・デッド 戦士 クラスE 物理攻撃C 魔法耐性F あらゆる武器を扱える】

【レヴィンソン・コイル ハンター 主にネコ族を捕まえる ダンジョンサーチA】


 戦士のロデットはヒゲを長く生やし風貌だけ見れば、凄腕に見える。

 しかし強さはどうにも出来ないので武器扱いスキルだけをコピーしといた。


 ハンターのレヴィンソンはリウにとって天敵。一緒に行動するのは避けておく。

 ダンジョンサーチをコピー出来たので、後は知識だけを何とか聞き出せればいい。


「エンジさん、お話があるんですけど……いいですか?」

「うん? 何かな?」

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